監修弁護士 長田 弘樹弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長 弁護士
保険会社から1日8600円の慰謝料の支払いを提示されたら、示談するのを少し待って弁護士に相談してみて下さい。1日当たり8600円の提示が行われている場合には、本来支払うべき金額より低い額の提示が行われている可能性が高いです。このまま示談に応じると、後で低すぎる額であったことに気づいても追加の支払いを求めることはできなくなります。保険会社の担当者がどんなに丁寧に対応してくれていても、支払う額が正しいかどうかはしっかり確かめてから示談しましょう。
目次
慰謝料が1日8600円(旧8400円)になるのはなぜ?
慰謝料が1日当たり8600円で提示される理由は何なのでしょうか。自賠責保険の基準では、傷害による慰謝料は、慰謝料の対象となる日数×4300円で算定される額とされています。そして、「慰謝料の対象となる日数」は、実治療日数×2で計算されることが多いため、自賠責保険の慰謝料は、実治療日数1日につき8600円となります。
ただし、治療期間の日数がそのまま「慰謝料の対象となる日数」として認められる訳ではないため、殆ど通院していない状況であれば通院期間が延びたとしても慰謝料が増えるとは限りません。
通院回数を増やした分だけ慰謝料がもらえるわけではない
通院回数と慰謝料の額が関係しているのであれば極力多く通院した方が良いのではないかとお考えになるかもしれません。しかし、結論から申し上げますと、医師の指示に従って適切な頻度で通院して頂くべきです。極端に高い頻度で通院していると逆に損をすることもあります。具体的には、自賠責保険から回収可能な額(120万円)を超えるような治療費がかかると、任意保険会社が治療費の内払に応じなくなる可能性が高まります。このような事情により、高頻度で通院し過ぎると、通院の期間が短くなってしまう恐れがあります。
適切な通院頻度はどれくらい?
通院頻度は、医師が症状に応じて医学的観点から決めるべき事柄です。当然ながら医師の指示に従って下さい。
その上で、慰謝料を増やす観点から、適切な通院頻度がどの程度であるかということを敢えて考えると、1週間に2~3回程度の通院であれば問題ないと思われます。ただし、骨折していて自宅安静が必要な場合には無理をして通院をする必要はないのでご安心ください。
自賠責には120万円の限度額がある
自賠責保険には傷害に関して120万円という限度額があります。120万円の枠内で支払われる内容としては、慰謝料以外にも、治療費、休業損害等が含まれます。したがって、仮に休業損害が多額になる場合には、慰謝料を支払う余地が少なくなってしまいます。
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
弁護士基準なら自賠責基準の入通院慰謝料を上回る可能性大
弁護士が代理人に就任した場合には、殆どのケースで自賠責基準よりも高い慰謝料が認められています。これは、裁判所で認められる慰謝料は、自賠責基準の慰謝料の額よりも高いのですが、弁護士が代理人として就任することで裁判基準に近い額が認められることになるためです。
ただし、過失割合が大きい場合には、自賠責基準の方が裁判所で認められる額よりも高くなるため、最終的に自賠責基準より高い額が認められないこともあります。
1日8600円の慰謝料が貰えるのは治癒・症状固定までの「治療期間」のみ
自賠責基準の慰謝料の対象となる日数は、治療期間の範囲内であるとされています。症状が完治して通院する必要がなくなった場合には、それ以上の期間にわたって通院しても慰謝料は認められません。また、症状が完治していない場合でも、治療をしてもこれ以上改善の余地がないと判断された場合には(症状固定)、それ以上の治療期間に対応する慰謝料は認められません。
ただし、本来は医師が症状の改善の余地があるか否かを決めるべきですし、法的には裁判官が治療終了時期(症状固定時期)を決めるべきですので、保険会社が症状固定時期を決めることはできないことに注意が必要です。仮に保険会社の担当者が何らかの理由で治療期間は終了すると述べてきたとしても、まずは医師や弁護士と相談してみて下さい。
後遺障害が残った場合は後遺障害慰謝料が請求できる
後遺障害が認定された場合には、自賠責保険でも120万円の傷害部分に加えて後遺障害に対応する慰謝料や逸失利益が認められます。もちろん裁判基準でも逸失利益や後遺障害慰謝料が認められるため、後遺障害が認定されると損害賠償額は大幅に増額されます。
交通事故の後遺障害逸失利益について 後遺障害等級認定申請と異議申立ての方法慰謝料が1日8600円から増額した事例
実通院日数が47日であり、頸椎捻挫により14級9号の後遺障害が認定されていた事案において、保険会社は実通院日数1日当たり8600円の自賠責基準を根拠として404、200円の慰謝料を提示していました。弊所の弁護士が代理人に就任して交渉したところ、入通院慰謝料は728、000円に増額されました。また、全体の賠償額も当初の提示額と比較して約149万円も増額されました。
保険会社から「1日8600円」と提示されたら、弁護士へご相談ください
1日8600円の慰謝料が提示された場合には、弁護士を介入させるだけで慰謝料が増額できる可能性があります。また、一度示談してしまうと、後から不足していることに気づいても、増額することはできません。賠償額が適切かどうかを専門家の弁護士に確認して貰ってから示談しても遅くはありません。1日8600円の慰謝料が提示された場合には、弁護士に相談してみて下さい。
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保有資格弁護士(大阪弁護士会所属・登録番号:40084)