交通事故の逸失利益について

交通事故の逸失利益について

交通事故における後遺障害の逸失利益とは?

慰謝料は損害賠償のうちのひとつ

後遺障害を負った被害者には、将来得られるであろうであった利益を損害として損害賠償請求することが可能です。

本来は一人ひとり個別の事情を考慮するべきですが現実には実務的な計算式が決まっています。

交通事故により、後遺障害が残存してしまった場合、当該後遺障害の内容や程度によっては、労働能力が低下・喪失し、場合によっては、収入額の減少をもたらすことになります。このように、交通事故がなければ得られたであろう収入などの利益のことを「逸失利益」と呼び、交通事故の加害者に対して、損害賠償請求を行うことができます。

後遺症による逸失利益をどのように算定するかは、以下のそれぞれの場合で異なっています。

  • 1.給与所得者の場合
  • 2.事業所得者の場合
  • 3.会社役員の場合
  • 4.家事従事者の場合
  • 5.学生・生徒・幼児の場合
  • 6.無職者の場合

それでは、後遺症による逸失利益の算定方法について具体的に説明していきたいと思います。

後遺症による逸失利益の算定方法

実務上、後遺症による逸失利益は、次の計算式によって算定されています。

(計算式)
【基礎収入】×【労働能力喪失率】×【労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数(中間利息控除)】

それでは、基礎収入、労働能力喪失率、労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数(中間利息控除)について具体的に説明していきます。

労働能力喪失期間とは

労働能力喪失期間とは、後遺障害により労働能力が低下してしまう期間をいいます。

労働能力喪失期間は、一般に、始期は後遺障害の症状固定日で、終期は稼働上限年齢(67歳)とされています。ただし、未就労者の就労時期について原則として高校卒業とし、大学生もしくは大学進学の蓋然性が認められる場合には大学卒業時とすることが多いようです。

症状固定時に67歳を超える者については、原則として簡易生命表の平均余命の2分の1を労働能力喪失期間とします。症状固定時から67歳までの年数が簡易生命表の平均余命の2分の1より短くなる者の労働能力喪失期間は、原則として平均余命の2分の1とします。

労働能力喪失期間の実務上のポイント

労働能力喪失期間は、一般に症状固定日から67歳までの年数で考え、むち打ち症の場合は、12級13号(局部に頑固な神経症状を残すもの)で10年程度、14級9号(局部に神経症状を残すもの)で5年程度に制限する裁判例が多いです。

しかし、12級13号(むち打ち症以外)が認定された場合でも、相手方保険会社の担当者が労働能力喪失期間を67歳まで認めてくることは少なく、弁護士が交渉に入った時でさえ5~10年と主張してくることが多いのです。

後遺障害逸失利益を算定する際の労働能力喪失期間を5年から20年に引き上げると、それだけで後遺障害逸失利益は約3倍に跳ね上がりますので、この点の交渉を弁護士に依頼する意義は非常に大きいものがあります。

この点については、自覚症状・それを医学上基礎づける所見・その後遺障害が容易に消失ないし軽減するとは期待できないこと・仕事への影響等を主張し、多くの賠償額を獲得しています。

中間利息の控除とは

後遺障害逸失利益の算定は、(基礎収入)×(労働能力喪失率)×(労働能力喪失期間のライプニッツ係数)によってなされます。

ここにおける「労働能力喪失期間のライプニッツ係数」というのが中間利息の控除です。

後遺障害逸失利益の請求は、将来長期間にわたって取得するはずであった利益を現在の一時金で支給するものであるため、将来における利息を中間利息としてあらかじめ差し引く作業をする必要があり、そのために「労働能力喪失期間」ではなく「労働能力喪失期間のライプニッツ係数」をかけることとなります。

中間利息控除の方式はどのようなもの?

一般に、ホフマン方式とライプニッツ方式があります。

ホフマン方式とは、被害者が元本を単利で運用することを前提とする方式であり、ライプニッツ方式とは、複利で運用することを前提とする方式です。

両者を比較すると、被害者にとってはホフマン方式の方が有利となり、30年で比べるとライプニッツ係数は15.3725となりますが、ホフマン係数は18.0293となります。

これについて、かつては、東京地裁においてはライプニッツ方式、大阪地裁及び名古屋地裁においてはホフマン方式によることが多かったですが、三丁共同提言に基づき、平成12年1月1日以後に口頭弁論を終結した訴訟事件については、原則としてライプニッツ方式によっており、現在ではライプニッツ方式で計算するのが一般的となっています。

生活費の控除はするの?

後遺障害逸失利益を算定する際には、生活費を控除する必要がありません。

なぜなら、人は死亡すれば生活を営むための費用が全く不要となるので、死亡逸失利益を算定する際は死亡後の生活費を控除する必要がありますが、後遺障害逸失利益を算定する際は実際に生活を営むための費用が必要ですので、これを控除することはありません。

基礎収入の算出方法

給与所得者の基礎収入の算定方法

給与所得者の場合、原則として交通事故前の実収入額が基礎収入となります。ただし、常に交通事故前の実収入額を基礎収入として、逸失利益の算定を行うことにすると、就労期間が比較的短く収入がそれほど高くない人にとっては、気の毒な結果となってしまいます。

そこで、おおむね30歳未満の若年者については、交通事故前の実収入額が賃金センサスの学歴計・全年齢の平均賃金より低額であっても年齢・職業・職歴・実収入額と年齢別平均賃金とのかい離の程度やそのかい離の原因などを総合的に判断して、将来的に学歴計・全年齢の平均賃金を得られる蓋然性が認められる場合には、学歴計・全年齢の平均賃金を基礎収入として、逸失利益の算定を行うものとされています(大卒者の場合には、大学卒・全年齢の平均賃金を基礎収入とすることもあります。)。

相手方保険会社によっては、若年者の場合でも、実収入を基礎収入として逸失利益を算定するべきだと主張してくることがありますが、そのような場合は弁護士にご相談下さい。

事業所得者の基礎収入の算定方法

事業所得者の場合、原則として交通事故前の申告所得額が基礎収入となります。ただし、事業所得者の場合、節税対策等から、申告所得額が実収入額を反映していないことがあります。そのため、実収入額が申告所得額を上回っていることを証明できれば、実収入額を基礎収入として算定することがあります。

事業所得者の場合、実収入額を示す資料が乏しい場合があり、実務上、基礎収入額が争いになることが比較的多いです。

弁護士法人ALG大阪法律事務所では、収入を裏付ける様々な資料の収集を行った上で、適切な主張を行っています。

会社役員の基礎収入の算定方法

会社役員の収入、つまり、役員報酬は、必ずしも労務提供の対価部分のみで構成されるものではなく、利益配当部分を含む場合もあるので、そのような場合、労務提供の対価部分のみが基礎収入となります。

中小企業の会社役員などの場合、役員報酬の全額が労務提供の対価部分と考えられることもありますが、その場合には、役員報酬の全額を基礎収入として計算するべきであると主張していくことになります。

弁護士法人ALG大阪法律事務所では、企業の規模等に応じて、適切な主張を行っています。

家事従事者の基礎収入の算定方法

家事従事者の場合、賃金センサスの女性労働者の学歴計・全年齢の平均賃金が基礎収入となります。ただし、交通事故の被害者が高齢の場合など、上記平均賃金に相当する労働を行い得る蓋然性が認められない場合には、女性労働者の学歴計・年齢別の平均賃金を参考にして、基礎収入額を算定するものとされています。

なお、働きながら家事労働に従事している場合(兼業主婦)、交通事故前の実収入額が、女性の学歴計・全年齢の平均賃金を上回っているときは、実収入額を基礎収入として、下回っているときは、上記の家事従事者の場合と同様に、女性の学歴計・全年齢の平均賃金を基礎収入として算定を行います。

学生・生徒・幼児の基礎収入の算定方法

学生・生徒・幼児の場合、原則として、賃金センサスの男女別・学歴計・全年齢の平均賃金が基礎収入となります。ただし、大学生や大学への進学の蓋然性が認められる場合には、大学卒・全年齢の平均賃金が基礎収入となることもあります。

なお、年少女子については、男女計・学歴計・全年齢の平均賃金を基礎収入として逸失利益の算定を行う裁判例が比較的多いです。

無職者の基礎収入の算定方法

無職者の場合、被害者の年齢やこれまでの職歴、就労能力、就労意欲などを考慮し、就労の蓋然性が認められれば、年齢別の平均賃金や失業前の実収入額等を参考に、基礎収入額を算定する傾向にあります。

弁護士法人ALG大阪法律事務所では、過去の勤務先の源泉徴収票・就職活動の状況等に関する資料を収集した上で、適切な主張を行っています。

交通事故が18歳未満の未就労者の場合

計算は「基礎収入額×労働能力喪失率×(67歳までのライプニッツ係数-18歳に達するまでのライプニッツ係数)」で行います。

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この記事の監修

大阪法律事務所 所長 弁護士 長田 弘樹
弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長弁護士 長田 弘樹
大阪弁護士会所属。弁護士法人ALGでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。
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