交通事故慰謝料の増額・減額事由

交通事故慰謝料の増額・減額事由

慰謝料が増額される場合

慰謝料は精神的な損害に対する賠償ですから、通常被害者の精神がより大きな損害を被ると考えられる事情が認められた場合には、増額されることがあります。

たとえば、加害者側が事故を起こしたのが、故意だった場合、無免許やひき逃げや酒酔い等、重大な注意義務違反が認められる場合、または、自分の刑事責任を軽減させるために同乗者ないし被害者の責任が重くなるように不合理な弁解を繰り返すなどの不誠実な態度が著しい場合には、慰謝料が増額された裁判例が多く認められます。

また、被害者側の事情としても、事故態様が著しく悲惨であったり事故後の遺族の精神状態が不安定になったりしていた場合には、慰謝料の増額が認められた裁判例があります。

傷害の部位・程度を理由として慰謝料が増額されるケース

傷害の部位及び程度によっては、入通院慰謝料が増額される場合があります。

抽象的に申し上げると、生死の境をさまようような状況が続いたとき、麻酔なしでの手術を受けた等極度の苦痛を伴う治療を必要としたとき、手術が繰り返されたときなどには、入通院期間の長短によらず別途慰謝料が増額されて認定される場合があります。

裁判例で入通院慰謝料(傷害慰謝料)の増額が認められたケースの中には、9歳女児が顔面に縫合手術を受けていた場合、脳挫傷・外傷性くも膜下出血・頭がい骨骨折・尿道損傷・左鎖骨骨折・骨盤骨折等全身に重度の受傷があり、治療経過が深刻で厳しいものとなった場合などがあげられます。

慰謝料の増額に関するQ&A

Q.とても大事にしていたバイクが交通事故で傷ついてしまい、精神的にとても辛いのですが、バイクの傷について慰謝料を請求することはできますか?

A.物損についての慰謝料は、認められないのが原則です。財産の破損は、財産的被害の回復と同時に精神的被害も回復されると考えられているからです。

交通事故ということで、大事にしていた愛車が破損してしまうこともあるでしょうが、裁判例では、「被害者の愛情利益や精神的平穏を強く害するような特段の事情」が認められないとして、愛車である高級車が破損したことについての物損慰謝料が否定された例があります。

Q.愛犬を車に乗せて遠出する最中に交通事故に遭い、事故がもとで愛犬が亡くなってしまいました。息子と思いかわいがっていた愛犬なので、とても辛いのですが、息子が亡くなった場合のように相手方に慰謝料を請求することができますか。

A.ペットの死亡や傷害は、物損として扱われます。

物損慰謝料は認められないのが原則ですが、ペットは少々事情が違います。ペットは通常、家族の一員として家族と交流し、家族にとってかけがえのない存在になっています。そのため、交通事故によるペットの死亡や重大な傷害は、飼い主の慰謝料として請求できることがあります。

ただし、飼い主の特殊な感情が基準となるのではなく、一般人の常識が基準にならざるを得ませんので、息子のようにかわいがっていた愛犬が亡くなったからといって、息子さんご本人が亡くなられたと同じ程度の金額が認められるとは限りません。

裁判例では、事故で愛犬が後肢麻痺、自力での排尿等ができない等の傷害を負った件で、飼い主夫婦に子がおらず、愛犬をわが子と思って愛情を注いでいたことを指摘し、夫婦各自に20万円ずつの慰謝料が発生すると認めました。そのうえで、愛犬に犬用シートベルトをさせていなかったことから夫婦側に1割の過失相殺を行い、結局夫婦の各自に対して18万円ずつの慰謝料を支払うよう判決しました。

慰謝料が減額される場合

慰謝料が減額される事情としては、たとえば、近親者慰謝料が発生する場合について、「被害者の父、母、配偶者及び子」等、民法711条の「近親者」に該当するときであっても、被害者と疎遠であると認定された場合には、慰謝料が減額される場合があります。
また、被害者が好意同乗者の場合や、高齢者の場合にも、慰謝料が低く算定される場合があります。

また、被害者側の事情としても、事故態様が著しく悲惨であったり事故後の遺族の精神状態が不安定になったりしていた場合には、慰謝料の増額が認められた裁判例があります。

長期かつ不規則な通院

通院慰謝料は、治癒もしくは症状の固定までに要した通院の期間を基準として算定されるのが原則です。しかし、最初の通院から症状固定時までの通院期間は数か月、あるいは数年にわたるなど長期間であるが、通院の実態を見ると、2、3か月に一度程度しか通院していなくて実通院日数が数日程度であるというような場合には、期間の全部について通院慰謝料を算定するというのとは異なる方法で通院慰謝料が算定されます。

具体的には、実通院日数に3.5を掛けた日数と、通院期間全部の日数とを比較して、より低い日数について通院慰謝料が算定されます。

被害者側の特殊事情

入院慰謝料は、治癒もしくは症状の固定までに要した入院の期間を基準として算定されるのが原則です。しかし、医学的にみて入院の必要性がないけれども、患者の希望・都合で入院期間が延びたという場合には、入院慰謝料が減額される可能性があります。

一方、介護や仕事や子どもの世話などのために、医学的にはまだ入院の必要があるのに退院したような場合には、増額される可能性があります。

長期間入院したからといって、より早く退院した場合と比較して、必ずしも入通院慰謝料が高額になるとは限らないのです。

重症の場合

傷害の程度が「重傷」あるいはこれに準じるようなものであるとき、入通院慰謝料が基準額より増額して認められる場合があります。

ここでいう「重傷」とは、重度の意識障害が相当期間続いた場合や、骨折や臓器損傷の程度が重大・多発している場合など、負傷の程度が著しいことを言います。

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この記事の監修

大阪法律事務所 所長 弁護士 長田 弘樹
弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長弁護士 長田 弘樹
大阪弁護士会所属。弁護士法人ALGでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。
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