監修弁護士 長田 弘樹弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長 弁護士
末梢神経障害
神経系には、脳や脊髄などの中枢神経と、中枢神経から分かれて体の各部を走る末梢神経があります。末梢神経は、体の運動などをコントロールする体性神経と、自分の意思にかかわらず内臓や血液などを自動的にコントロールする自律神経系に分かれます。体性神経は、筋肉の運動にかかわる運動神経、末端器官からの熱さや冷たさ、痛さや痒さなどを伝える感覚神経にさらに分かれます。
末梢神経障害は、これらの3種類の神経が傷ついたことなどによりおこる障害です。運動神経に障害がおこると、筋力が下がったり筋肉が委縮したりします。感覚神経に障害がおこると、しびれや痛みが生じるほか、感覚が鈍くなるなどの症状が発生します。自律神経障害では、下痢や便秘、勃起不全、排尿障害などが引き起こされることがあります。
交通事故が原因で、これらの末梢神経障害が生じると、後遺障害等級の認定が問題となります。自賠責保険上の後遺障害認定は、他の後遺障害と同様、他覚的所見が存在しるかどうかが大きなポイントとなります。
他覚的症状がある場合、末梢神経にかかわる後遺障害等級の認定は、原則として、損傷を受けた神経の支配する身体各部それぞれの器官における機能障害に対応する形でおこなわれます。例えば、聴神経を損傷して難聴が残存した場合は聴力障害の等級を、視神経を損傷して視力障害が残存した場合には、視力障害の等級を適用するのです。それゆえ、腕神経叢の損傷により、上肢の関節機能障害が残った場合には、上肢の機能障害の等級が適用されることになります。
末梢神経損傷に他覚的所見があって、これが医学的に証明できるものの身体各部の器官に係る等級にあてはまるものがない場合、通常、12級13号の「局部に頑固な神経症状を残すもの」が認定されることが多いです。但し、実際に服する労務に制限があるような場合には、それ以上の等級が認められる場合もあります。
他方、他覚的所見がないが疼痛が残存している場合等で、蟻走感や感覚脱失などの異常感覚が発現した場合には、その範囲が幅広い場合などにおいて、14級9号の認定がされることがあります。
他覚的所見の証明にあたり重視されることが多いのは、MRIなどの画像診断です。しかし、末梢神経の場合、神経の損傷自体をMRI等の画像で視覚的にとらえることは困難ないし不可能です。
では、どのような診断を行えばよいのでしょうか。
末梢神経障害の他覚的な証明については、徒手筋力テスト(MMT)、感覚検査、ティネル徴候(切断された神経が再生する過程では、再生した軸索が髄鞘に覆われていないため、その部分を軽くたたくとチクチクする感じなどがすることがあります。これがティネル徴候で、ティネル徴候があると、神経の損傷があり、再生過程にあることが推測できます。)、電気生理学的検査(神経伝導検査、筋電図検査)などが用いられます。これらとともに、自律神経障害等の症状を丁寧に説明して確認してもらい、徒手筋力検査を細かく行うことで、末梢神経障害の証明を目指していくことになります。
末梢神経損傷という診断名はあるけれど、特に検査は実施されていないという事例は少なくありません。通院先病院の医師に説明して検査を依頼するとともに、お困りの方は弁護士法人ALG大阪法律事務所にご相談ください。
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
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保有資格弁護士(大阪弁護士会所属・登録番号:40084)