脊髄の障害で認定される可能性のある後遺障害等級

交通事故

脊髄の障害で認定される可能性のある後遺障害等級

大阪法律事務所 所長 弁護士 長田 弘樹

監修弁護士 長田 弘樹弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長 弁護士

脊髄の障害

交通事故を原因とする外傷等により脊髄が傷つくことがあります。脊髄は脳から体幹を貫いて伸びる神経線維の長い棒状の束ですから、脊椎が傷つくと、対麻痺(上肢又は下肢の左右対称性の麻痺)や四股麻痺が生じることがあります。この場合には、広範囲にわたる感覚障害や尿路機能障害または腸管機能障害(神経因性膀胱障害又は神経因性直腸障害)などが生じることがあり、後遺障害等級認定にあたっては、脊髄損傷に含めて運用されています。

また、脊髄が損傷を受けるときには、脊柱に外力が加わっていることも多く、脊柱の変形が生じたり、運動障害が生じたりすることもあります。

これらは、脊髄損傷にともなう脊髄障害として認定され、認定にあたっては、麻痺に注目し、麻痺の範囲及びその程度により障害等級を認定する運用がなされています(ただし、脊髄損傷に伴う胸腹部臓器、脊柱の障害による等級が麻痺により判断される等級よりも重いときには、それらの障害の総合評価により等級認定が行われます)。

もっとも、神経に起因する傷害は他覚症状に乏しいものも多く、認定には困難も伴ってきました。この点については、近時のMRIやCTなどの画像診断法の進歩を背景に、原則として、麻痺の範囲や程度についてはこれらの画像所見による裏付けを必要とされるようになっています。

 

脊髄の障害による後遺障害等級は以下の通りです。

障害の程度 等級 保険限度額 労働能力喪失率
脊髄症状のために、生命維持に必要な身の回り処理の動作について、常に他人の介護を要するもの
①高度の四肢麻痺 1級1号 3000万円 100%
②高度の対麻痺
③中等度の四肢麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要する場合
④中等度の対麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要する場合
脊髄症状のため、生命維持に必要な身の回りの処理の動作について随時介護を要するもの
①中等度の四肢麻痺 2級2号 2590万円 100%
②軽度の四肢麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要する場合
③中等度の対麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要する場合
生命維持に必要な身の回り処理の動作は可能であるが、脊髄症状のために労務に服することができないもの
①軽度の四肢麻痺(2級の2に該当しないもの) 3級3号 2219万円 100%
②中等度の対麻痺(1級の1、2級の2に該当しないもの)
脊髄症状のため、極めて軽易な労務の他に服することができないもの
①軽度の対麻痺 5級2号 1574万円 100%
②1下肢の高度の単麻痺
脊髄症状のため、軽易な労務以外には服することができないもの
①1下肢の中等度の単麻痺 7級4号 1051万円 100%
通常の労務に服することはできるが、脊髄症状のため、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの
①1下肢の軽度の単麻痺 9級10号 616万円 100%
通常の労務に服することはできるが、脊髄症状のために多少の障害をのこすもの
①運動性、支持性、巧緻性及び速度についての支障がほとんど認められない程度の軽微な麻痺を残す場合 12級13号 224万円 100%
②運動障害はみとめられないものの、広範囲にわたる感覚障害が認められる場合

脊髄症状の後遺障害等級認定に際しては、症状固定時の後遺障害診断書が当然必要になりますが、脊髄症状特有の状態に関する医師による証拠が必要となります。

麻痺による四股の運動能力の低下、知覚機能の低下、異常反射、筋力低下、膀胱や直腸の障害、これらに基づく介護の必要性やその程度を認定機関に正確に理解してもらうためには、「神経学的所見の推移について」、「脳損傷又は脊髄損傷による障害の状態に関する意見書」、「脊髄症状判定用」などの資料をそろえる必要があります。

これらに加えて、冒頭で書いたMRI等の画像資料も極めて重要となります。

介護者等に「日常生活報告表」を作成してもらい、これを資料として用いることで、被害者が事故後に生活においてどのような不便を強いられているかを具体的に理解してもらうことも大切でしょう。

なお、いわゆるむち打ちの中でも、脊髄損傷に起因するものもあります。むち打ちは、一般に他覚的所見に乏しく、外傷性頚部症候群、外傷性頭頚部症候群、頚椎捻挫、外傷性頚椎捻挫、むち打ち症などの診断名がつけられることが多いです。

むち打ちの後遺障害等級認定は、一般に、「障害の存在が医学的に証明できるもの」については12級、「障害の存在が医学的に説明可能なもの」ないし「医学的には証明できなくとも自覚症状が単なる故意の誇張でないと医学的に推定されるもの」については14級として認定する運用がなされていると考えられます。ここに「医学的に証明できる」とは、他覚所見が存在することを意味しますが、その内容や程度についてはしばしば争いが生じます。

むち打ちが脊髄損傷に起因するものであり、その旨の証明ができるならば後遺障害等級の認定も脊髄損傷として行われることになりますが、その認定においても、CTやMRIなどの画像によって症状の原因が認められるかどうかは大きな意味を持ちます。

画像所見がなく、医師の神経学的検査所見もなく、自覚症状のみにとどまる場合、後遺障害認定は非該当となる可能性が高くなります。

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