
監修弁護士 長田 弘樹弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長 弁護士
交通事故により受傷し、治療終了後も痛みや可動域制限等が残ってしまった場合、自賠責保険会社に対して、後遺障害等級認定の申請を行うことが一般的です。
もっとも、後遺障害等級認定の申請を行ったとしても、後遺障害が認定されずに「非該当」という結果になることがあります。
今回の記事では、後遺障害等級が認定されない理由や、非該当となった場合の手続等について、詳しく説明していきたいと思います。
目次
後遺障害等級が認定されない理由
後遺障害等級が認定されない理由としては、以下に述べるようなものが考えられます。
ただし、後遺障害等級は様々な事情を考慮して決定され、非該当通知に記載される理由も定型文であることがほとんどであるため、後遺障害等級が認定されない理由を特定することは難しいことも多いです。
以下、理由ごとに説明していきます。
後遺障害診断書の記載が不十分
後遺障害等級認定は、主に後遺障害診断書に記載された自覚症状・他覚的所見に基づき行われるため、後遺障害診断書の記載が不十分である場合には、実際の症状に応じた後遺障害等級認定が受けられない可能性があります。
たとえば、「頚部が常時痛い」という自覚症状があるにもかかわらず、「頚部の違和感」などの記載になっているなど、自覚症状に関する記載が不十分である場合などが具体例としてあげられます。
症状を裏付ける他覚的所見・検査が不足している
痛み等の自覚症状や可動域制限を裏付ける他覚的所見・検査が不足している場合にも、非該当の原因となっている可能性があります。
後遺障害申請に際しては、
1.神経学的検査の異常所見
2.レントゲン・CT・MRI等の画像所見
3.その他自覚症状や可動域制限を裏付ける他覚的所見
を過不足なく記載してもらうことが重要ということができます。
通院期間・通院日数が足りていない
①通院期間が短すぎる場合、②通院日数が通院期間と比較して少なすぎる場合にも後遺障害が非該当となる可能性が高いです。
むちうち等の骨折がない案件においては、画像所見のみでは後遺障害の存在を判断できないことも多いため、通院期間・通院日数が十分であるかも重要な考慮要素となります。
通院期間・日数について、具体的な基準は公表されていませんが、むちうち等の骨折がない案件においては、6ヶ月以上の通院期間・月に10日以上の通院日数が一つの目安といえるでしょう。
症状に連続性・一貫性がない
自覚症状に連続性・一貫性がない場合にも、後遺障害が非該当となる可能性があります。
たとえば、
- 事故当初は痛みを訴えていないのに数ヶ月してから痛みを訴えている場合
- 事故当初は痛みを訴えていたがその後痛みの訴えがない場合
- 診断書やカルテの記載と、後遺障害診断書の自覚症状が一致しない場合
などがあげられます。
後に、自覚症状の連続性・一貫性を否定されないために、主治医に対して、細かな痛みなども含め、自覚症状を詳細に伝えておくことが重要となります。
交通事故の規模が小さい
被害車両の損傷状況が軽微であるなど、交通事故の規模が小さい場合には、交通事故によって受けた衝撃が小さいと判断され、後遺障害が非該当となることがあります。
たとえば、①ミラー同士の接触である、②逆突事故である、③修理費用が低額である、④車両の損傷状況が軽微であるなどが具体例としてあげられます。
交通事故で最も多い「むちうち」の後遺障害認定は特に厳しい
交通事故でむちうち(頚椎捻挫)のお怪我を負われる方は非常に多いです。
むちうちは骨折がなく画像所見が乏しいため、後遺障害等級の認定を受けるための他覚的所見が不足することが多いです。
そのため、むちうちで後遺障害が認定される可能性はあまり高くありません。
むちうちで後遺障害等級の認定を受けられる可能性を高くするためには、①十分な通院期間・日数を確保すること、②リハビリ・投薬など自覚症状に応じた適切な治療を受けること、③事故当初から自覚症状を主治医にきちんと伝えることなどが重要といえるでしょう。
後遺障害が認定されなかった場合は慰謝料をもらえない?
後遺障害が認定されなかったとしても、慰謝料が一切もらえなくなるわけではありません。
慰謝料には、交通事故により入通院を余儀なくされたことに対しての「入通院慰謝料」、交通事故により後遺障害を負ってしまったことに対しての「後遺障害慰謝料」がありますが、後遺障害が非該当となってしまった場合でも、「入通院慰謝料」を受け取ることは可能です。
ただし、後遺障害が認定されなかった場合、「後遺障害慰謝料」を受け取ることはできません。
後遺障害等級認定で「非該当」と通知されたときの対処法
異議申立てを行う
後遺障害が「非該当」となり、その結果に不服がある場合、まずは自賠責保険会社に対して、異議申立てを行うことが一般的です。
異議申立てを行う場合、非該当という結果を覆すための新たな資料を提出することが重要です。提出する資料は事案によって異なりますが、自覚症状の一貫性、他覚所見の存在、適切な治療を受けていることを裏付ける資料として、病院からカルテの開示を受けた上で異議申立書とあわせて提出することが多いものと思われます。
ただし、一度「非該当」という結果が出ているため、異議申立てによって結果が覆る可能性はそれほど高くないのが実情です。
異議申立てには時効がある?
異議申立ての時効自体には、法律上の定めはありません。
ただし、自賠責保険会社に対する後遺障害等級認定の申請(被害者請求)は、「症状固定日から3年」で消滅時効にかかるため、異議申立てについても「症状固定日から3年以内」に行うべきでしょう。
消滅時効が迫っている場合や異議申立ての準備に時間がかかりそうな場合には、自賠責保険会社に対し、「時効更新申請書」を提出することをおすすめします。
自賠責保険会社の承認が必要ではありますが、実務上はほとんどのケースで自賠責保険会社が時効更新に応じてくれます。
紛争処理制度を利用する
異議申立てを行ったにもかかわらず、非該当の結果が覆られなかった場合、紛争処理制度を利用することもあります。
紛争処理制度とは、自賠責保険・共済紛争処理機構に対し、後遺障害等級認定の結果について、再度の審査を申し立てる制度です。
なお、紛争処理制度は一度しか利用できないこと、審査期間がかなりの長期間になること(半年以上になることも多いです)というデメリットがあります。
紛争処理申請の流れ
紛争処理の流れは、次のとおりです。
1.紛争処理申請書等の提出
紛争処理申請書・同意書などの必要書類を自賠責保険・共済紛争処理機構に提出します。
2.受理判断
自賠責保険・共済紛争処理機構が、自賠責保険会社・共済組合等から一件書類を取り付けた上で、受理の可否判断を行います。受理が可能と判断された場合、申請者に対して、受理通知が送付されます。
3.紛争処理委員会の審査
受理通知送付後、紛争処理委員会で申請書及び自賠責保険会社・共済組合等から取り寄せた一件資料に基づき、審査が行われます。
4.紛争処理委員会からの結果通知
紛争処理委員会の審査結果が書面により、申請者に通知されます。
紛争処理申請の必要書類
紛争処理制度の必要書類には以下のようなものがあります。
1.紛争処理申請書
2.別紙
3.同意書
4.交通事故証明書
5.自賠責保険会社・共済組合からの通知書(回答書)
6.自賠責保険会社・共済組合から返却された画像資料
7.委任状・委任者の印鑑証明書(弁護士に依頼する場合)
裁判を提起する
異議申立て・紛争処理制度によっても、後遺障害等級「非該当」の結果が覆らない場合には、裁判の提起を検討することになります。
裁判所は、自賠責調査事務所の判断に拘束されずに、当事者の主張・提出された証拠に基づき、後遺障害等級の有無を判断することができます。
したがって、自賠責において後遺障害等級「非該当」という判断がなされている場合であっても、裁判においては後遺障害が認定される可能性があります。
もっとも、実務上、裁判所も自賠責の判断を尊重する傾向にあるため、自賠責において後遺障害等級「非該当」という判断がなされている場合、裁判においても自賠責の判断が覆ることは多くありません。
裁判所は、裁判で提出された証拠に基づき判断を行うため、後遺障害の存在を裏付ける有利な証拠を収集・提出した上で、後遺障害が存在していることを説得的に主張することが重要となります。
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
後遺障害が非該当となった場合に弁護士に依頼するメリット
これまで説明してきたとおり、後遺障害が非該当となった場合、自賠責の判断を覆すためには、後遺障害の存在を裏付ける適切な資料を収集することが極めて重要になります。
また、異議申立書等において、後遺障害が存在することを説得的に主張する必要もあります。
交通事故案件を多数取り扱う弁護士であれば、自賠責の判断を覆すために、どのような資料が重要であるかを理解しているため、適切な資料を収集した上で、異議申立書等において説得的な主張を行うことが可能となります。
また、弁護士に依頼した場合、「自賠責基準」や「任意保険会社基準」よりも高額な「弁護士基準」での示談交渉が可能となるため、異議申立て等の結果、後遺障害等級が認定された場合、より高額の損害賠償金を得られる可能性があります。
後遺障害等級認定の異議申立ての結果、等級が認定された事例
当事務所で過去に取り扱った案件で異議申立てが認められた事例は多数あります。
今回は、当事務所の取り扱い案件のうち、後遺障害非該当という結果に対して異議申立てを行ったところ、後遺障害等級14級が認められて損害賠償額が大幅に増額した案件をご紹介いたします。
【事案の概要】
依頼者は、交通事故によりむちうちとなり、約7ヶ月通院をしたものの、後遺障害等級は非該当という結果でした。
そのため、当事務所において異議申立てを行った結果、後遺障害等級14級が認められました。
【解決結果】
その後、相手方保険会社との間で示談交渉を行った結果、自賠責保険会社から後遺障害保険金として支払われた75万円を含めて約400万円で示談が成立しました。
後遺障害が非該当であった場合、通院慰謝料として97万円程度が上限となることから、異議申立てにより約300万円の大幅な増額となりました。
後遺障害認定されない・非該当の場合はご相談ください。弁護士が等級獲得に向けてサポートいたします。
このように後遺障害が非該当となった場合、結果を覆すためには異議申立て等の手続をとる必要があります。
もっとも、これまで説明してきたとおり、後遺障害等級非該当という結果が一度出ている以上、適切な資料の収集や説得的な主張を行わない限り、その判断を覆すことは困難といえるでしょう。
交通事故案件に精通した弁護士であれば、適切な資料の収集・説得的な主張・その後の示談交渉に関して、お力添えが可能です。
残念ながら後遺障害非該当という結果になってしまい、その結果にご不満がある方、お困りの方は、是非とも弁護士へのご相談を・ご依頼をご検討ください。
当事務所においては、依頼者の方の症状に応じた適切な後遺障害等級の認定が得られるように、できる限りお力添えさせていただきます。
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保有資格弁護士(大阪弁護士会所属・登録番号:40084)