労務

ハラスメントが企業経営に及ぼす悪影響

大阪法律事務所 所長 弁護士 長田 弘樹

監修弁護士 長田 弘樹弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長 弁護士

  • ハラスメント対応

職場でのハラスメントは、被害者自身の心身のみならず、企業経営にまで悪影響を及ぼす重大な問題です。
さらに企業のハラスメント対応が十分でない場合、企業自身が、被害者に対して法的責任を負うことになります。

そこで本稿では、ハラスメントが企業経営に及ぼす悪影響について解説いたします。

目次

ハラスメントが企業に及ぼす悪影響とは

ハラスメントが企業経営に及ぼす悪影響としては、主に、以下の3つが考えられます。

職場環境の悪化による業績悪化

職場でハラスメントが発生すると、被害者本人、被害者と同じ職場の従業員らの心身に影響が及び、職場の従業員全体の労働意欲が低下してしまいます。

そして、職場全体の労働意欲が低下すると、従業員らによる自発的な行動の抑制、作業効率の悪化等を招き、職場全体の業績を悪化させてしまいます。

人材流出のリスク

職場でのハラスメントは、被害者本人の退職のリスクを生じさせることはもちろんのこと、職場全体の労働意欲を低下させることにより、被害者本人以外の従業員らが退職するリスクも生じさせます。

さらには、従業員の連鎖的な退職、これによる人材不足等への対応に注力した管理職さえも、対応に疲れ果て、退職せざるを得ない事態を招きかねません。

企業イメージの低下

さらに、SNSが普及した現代においては、職場でのハラスメントに不満を抱える従業員や退職者により、職場への不満がSNS上で拡散され、企業イメージが低下するリスクがあります。

また、かかる情報が出回ることで、今後の求人活動にも影響が生じるのみならず、顧客からの信頼を失うことにも繋がります。

ハラスメント問題と企業への損害賠償リスク

ハラスメント問題が生じた場合、企業自身には、どのような法的責任が生じうるのでしょうか。

企業が負う法的責任とは

職場でハラスメントが生じた場合、企業自身には、加害者の使用者としての使用者責任や、職場環境配慮義務違反による債務不履行責任・不法行為責任等の法的責任が生じるリスクがあります。

ハラスメントについて損害賠償請求された裁判例

実際に、ハラスメントによる企業の法的責任が認められた裁判例が存在します。
以下ではその一例として、職場でのパワーハラスメントに関して企業が損害賠償請求され、請求が認められた裁判例について、ご紹介いたします。

事件の概要

上司Yから「新入社員以下」「馬鹿」などの発言(以下、「本件パワハラ」といいます。)を受けた従業員Xがうつ病と診断され、休職を余儀なくされたことで精神的苦痛を被ったとして、Yに対して不法行為に基づく損害賠償請求を行うと共に、会社に対して職場環境配慮義務違反の債務不履行責任及びYの使用者責任等を追及した事案です。

裁判所の判断(事件番号・裁判年月日・裁判所・裁判種類)

東京地判平成26年7月31日 では、以下のように判断されました。

【Yの責任について】
「新入社員以下」という発言はXに対して屈辱を与え心理的負担を過度に加える行為であり、「馬鹿」という発言はXの名誉感情をいたずらに害する行為であることからすると、Y1の言動は、Xに対する指導又は指導のための言動として許容される限度を超え、相当性を欠くものであって、不法行為を構成する。

【会社の責任について】
YのXに対する上記発言は、会社の事業の執行について行われたものであり、これが不法行為を構成する以上、会社には使用者責任が成立する。
なお、会社に職場環境保持義務違反(職場環境配慮義務違反)及び不法行為を認めるに足る証拠はなく、職場環境保持義務違反及びYとの共同不法行為責任に関するXの主張は認められない。

ポイントと解説

職場でハラスメント問題が生じた場合、加害者となった従業員のみならず、その使用者である会社が、使用者責任を追及されることがあります。

上記裁判例も、被害者となった従業員が、会社に対して使用者責任を追及し、同責任が認定された事案です。
職場におけるハラスメントが、会社に損害賠償のリスクを生じさせることを改めて認識する必要があります。

企業経営におけるハラスメント対策の重要性

以上のように、ハラスメントによる悪影響は極めて深刻であることから、このような悪影響の拡大防止・予防は、企業経営維持のために極めて需要です。

ハラスメントに関するQ&A

以下では、ハラスメントによる悪影響の拡大防止・予防に関してよくあるご質問とその回答について、ご紹介いたします。

職場でハラスメントが発生した場合、企業名は公表されてしまうのでしょうか?

職場でハラスメントが発生したからといって、直ちに企業名が公表されることは多くありません。
もっとも、企業が労働基準監督署からの是正勧告に従わない場合には、公表されてしまうリスクがあります(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律33条2項 )。

ハラスメントにより会社の業績が悪化しました。ハラスメントをした従業員に対し、損害賠償を請求することは可能ですか?

ハラスメントにより業績が悪化したという関連性を立証することが難しい場合があります。
仮にハラスメントによる業績悪化が認められる場合でも、会社の被った損害について、損害の公平な分担という見地から相当な範囲に限り損害賠償が認められる可能性が高いといえます。

パワハラがあったことで職場秩序に乱れが生じています。改善するにはどのような措置が必要ですか?

就業規則に則って懲戒処分や人事処分を行うことで、ハラスメントを行った従業員(加害者)に対し、改善を促すことが必要です。
また、今後のパワハラ防止に向けて、厚生労働省が示す「パワーハラスメント防止のための指針」を参照しつつ、下記パワハラ防止措置に 取り組むべきです。

  • ハラスメントに関する企業の方針の明確化及びその周知・啓発
  • ハラスメント規程の整備
  • 相談窓口、内部通報窓口の設置、従業員らへの周知
  • ハラスメント発生後の迅速かつ適切な対応

職場のハラスメントについてSNSによる拡散を防ぐために、会社がすべきことはありますか?

SNSによる拡散を防ぐために、会社がすべき対策としては、主に、以下の2つが挙げられます。

  • 相談窓口、内部通報窓口を設置し、その存在を従業員に周知することで、ハラスメントを受けている従業員(被害者)が一人で問題を抱え込んでしまわない環境を整備すること
  • SNSの利用に関する研修を実施するなどして、軽率な投稿や不適切な方法によるストレス発散の問題性について周知すること

職場におけるハラスメント にはどのようなものがあるのでしょうか?

ハラスメントは社会生活の変化に応じて生起しますが、職場における主な類型には、以下のようなものがあります。
パワーハラスメント/セクシャルハラスメント/マタニティハラスメント/パタニティハラスメント/ケアハラスメント/LGBTハラスメント等

パワハラにより、うつ病を発症した従業員から労災請求された場合、どのような手続きが必要ですか?

会社は、下記①~④の請求手続に必要な証明に速やかに応じなければなりません。

  • ①職場でのパワハラによりうつ病を発症した従業員(被災従業員)が働いていた事業(会社)の名称、所在地、社長の氏名
  • ②負傷または発病の年月日
  • ③災害の原因や発生状況等
  • ④平均賃金や休業期間等についての事業主の証明

また、被災従業員がうつ病のために自ら保険給付の請求手続を行えない場合、会社には請求手続を手助けする義務があります(労災保険法施行規則23条1項)。

ハラスメントによる人材流失を防ぎたいため、退職の申し出を拒否することは可能ですか?

退職の申し出を拒否することで、退職を希望している従業員に精神的苦痛・身体的苦痛を与え、または職場環境を悪化させた場合、退職拒否がパワーハラスメントに該当するリスクがあります。

会社がハラスメントについて対策をしていなかった場合、賠償額の支払いを免れることは不可能でしょうか?

会社は、従業員との間で締結する雇用契約に付随して、従業員に対して、職場環境配慮義務を負っています。
そのため、会社が何らのハラスメント対策を講じていない場合には、職場環境配慮義務違反があるものとして、賠償額の支払いを免れることができないリスクが高まります。

ハラスメントは企業経営に大きな影響を及ぼします。ハラスメントの発生・拡大を防ぐためにも弁護士にご相談下さい。

以上のとおり、ハラスメントは、職場環境の悪化、生産性低下、人材流出、企業イメージの低下等、企業経営に対し、深刻な悪影響等を及ぼします。
そのため、企業経営を維持・発展させるためには、ハラスメントに対する事前予防、迅速かつ適切な事後対応が必要不可欠です。

ハラスメントの事前予防、事後対応についてお悩みの場合は、ぜひ、弊所までご相談ください。

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監修:弁護士 長田 弘樹弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長
保有資格弁護士(大阪弁護士会所属・登録番号:40084)
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