パワーハラスメント対応について解説

公開日:2020年9月3日
  • ハラスメント対応

パワーハラスメント(以下、「パワハラ」といいます。)とは、「職場において行われる職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいいます。」と定義されています。 現在、様々な企業において、パワハラ被害は広がっており、企業を円滑に運営していくためにも、適切なパワハラに対応することが求められます。以下では、具体的なパワハラへの対応について解説いたします。

企業におけるパワーハラスメント対応の重要性

重大な経営リスクになりかねないパワハラ問題

企業(会社)は、社員に対し、良好な職場環境を維持し、安全に配慮する義務(以下、「安全配慮義務」といいます。)を負っています。そのため、パワハラが発生した場合、企業は、労働者に対して、安全配慮義務違反に基づく損害賠償責任を負う可能性があります。また、民法は、企業(使用者)に被用者(労働者)が第三者に損害を与えた場合の賠償義務を規定しています(民法715条1項)。そのため、被用者が行ったパワハラ行為に対して、企業も被害者に対する損害賠償義務が発生する場合もあります。それだけでなく、パワハラの発生は、企業のイメージの低下につながり、ひいては、企業の重大な経営リスクに繋がります。

労働施策総合推進法改正によるパワハラ防止対策の法制化

労働施策総合推進法(以下、「パワハラ防止法」といいます。)の改正によって、職場のパワハラ対策が法制化され、令和2年6月1日に施行されました。なお、中小企業は、事業主(企業)が講ずべきパワハラの措置義務が、令和4年3月31日までの間は努力義務となっています。

パワハラ防止法が成立した背景

パワハラに関して、これまでパワハラの定義や企業の措置義務等定めた法律はありませんでした。そこで、パワハラ防止対策の強化として、企業に対し、措置義務を課すこと、対応措置をガイドラインで明示する方法等が検討され、最終的に労働施策推進法の改正に至りました。

パワハラ防止法の施行に向けて企業はどう取り組むべきか

パワハラ防止法は、パワハラ防止に向け、企業に対し「労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。」と定め、雇用管理上必要な措置を講じる義務を課しています(労働施策総合推進法30条の2第1項)。 そのため、企業には、パワハラ防止に向け、⑴事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発、⑵相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の設備、⑶職場におけるパワハラに係る事後の迅速かつ適切な対応といった社内体制を整備する義務が生じます。そして、企業がパワハラ防止対策を推進する上では、社員が各々の立場でパワハラ防止に取り組むことを促す環境整備と意識改革が重要であり、社内でのルール作りや社内教育を進めていくことが必要となります。具体的な社内でのルール作りとしては、就業規則にパワハラ防止の関係規定を設けること、パワハラの予防・解決に向けたガイドラインを作成することが挙げられます。また、社内教育としては、パワハラに関する社内研修やセミナーの実施をすることもパワハラ防止に向けた有効な手段と考えられます。

パワーハラスメントに該当する言動例

パワハラに該当する行為は、⑴身体的な攻撃(暴行・傷害)、⑵精神的な攻撃(暴言、嫌み的な発言)、⑶人間関係からの切り離し(仲間外し等)、⑷過大要求、⑸過小要求、⑹私的なことに過度に立ち入ることといった場合があり、その行為態様は多種多様です。以下では、パワハラにあたる可能性がある言動の一例について、ご紹介します。

・教育目的という名目での体罰
・「お前なんかいつでもクビにできる」と脅かす。
・部下のミスに対し、他の社員の前で強い口調で叱責する。
・挨拶をしても無視し、会話をしない。
・飲み会に誘わない。
・物を投げつけたり、ごみ箱を蹴りつけたりする。

パワハラ発生時に企業が取るべき対応とは

ヒアリングによる事実調査

パワハラといっても、その境界線を明確に定められるわけではありません。上司の指導に熱が入りすぎた場合もあれば、部下が大げさに反応したのかもしれません。そこで、パワハラの相談や申告があれば、まずは、実態調査を行って事実関係の把握に努める必要があります。当事者である上司や部下へのヒアリングの他に、現場を目撃した従業員へのヒアリング、上司と部下のメールのやりとり等についてチェックを行うべきです。 ヒアリングや調査を実施する場合は、5W1Hで事実を確認しておくことが必要となります。また、上司と部下との言い分が食違っている場合、メール、録音等の客観的な資料の存在が重要となります。

就業規則の規定に基づく判断

懲戒処分の法的な根拠は、就業規則にあり、懲戒処分を課す場合、就業規則の手続きどおりに実施しなければなりません。就業規則に手続きについて規定がなかったとしても、懲戒解雇などの重い処分を行う場合、加害者の言い分を聞き、弁明の機会を与えるなどの手続保障が必要と考えられます。たとえ、重い処分ではなかったとしても、企業運営の観点から、当事者の言い分を聞いた上でわだかまりが生じないように処分を下すことが必要となります。

パワハラの加害者に対する処分について

事実調査によって、パワハラが認められた場合であり、かつパワハラが悪質である場合にある場合には、パワハラを行った社員に対しては懲戒処分を検討すべきです。しかし、注意しなければならないのは、企業が社員に対して、直ちに懲戒解雇を行うということはできないということです。なぜなら、後になって、懲戒解雇された社員から「解雇権の濫用」等を理由に不当解雇だとして、訴訟等を提起された場合、裁判所からはパワハラを防ぐ措置を怠っていたと判断され、懲戒解雇が無効とされる可能性があるからです。パワハラの内容にもよりますが、まずは、譴責、出勤停止等の軽い処分等を過去の処分事例を考慮しつつ、就業規則に基づいて行うべきです。

パワハラの事実を確認できなかったときの対応

パワハラが事実調査・証拠収集等により、事実が明らかになれば、当該加害者に対して処分を講じることができます。一方で、事実調査を行ってもパワハラの事実が明らかにならないケースも多数存在し、その場合には、企業が加害者に対して処分を行うことは困難です。しかし、社員がパワハラ被害を訴えている以上、当該社員が企業内で、何らかの働きにくさを感じていることに間違いありません。そのため、企業としても、当該社員からしっかりと事情を確認し、今後の働き方の希望を聴取する等の職場環境の改善に努め、当該社員が抱える不満、不安等を解消しておくことが必要となります。

パワーハラスメントに関する裁判例

事件の概要

上司が接客訓練中に、社員の接客時の表情が不十分であるとして、ポスターを丸めた紙筒様の物で頭部を強く約30回殴打し、さらに、クリップボードで約20回頭部を殴打したという事案です。

裁判所の判断(事件番号 裁判年月日・裁判所・裁判種類)

本件の暴行の程度(強さ、回数)等を考慮すると、教育目的であったとしても違法性がないとは認められないとして、加害者に慰謝料として20万円の支払いを命じました(東京高判平成18年3月8日 労判910号90頁)。

ポイントと解説

上司が部下等に対して、「教育目的」であることやミスをしたことに対する叱責として、殴る、蹴る等の暴行を振るうことがしばしばみられます。しかし、このような生命、身体に対する暴行それ自体で違法とされます。上記裁判例においても、上司が部下に対する接客訓練中に殴打したというものであり、たとえ教育目的であったとしても許されるものではないとしました。

プライバシーの保護・不利益取扱いに関する留意点

法律上、事業主は、労働者が職場におけるパワハラについての相談を行ったことや雇用管理上の措置に協力して事実を述べたことを理由とする解雇、その他不利益的な取り扱いをすることを禁じています(労働施策総合推進法30条の2第2項)。そのため、企業としても、パワハラに関して相談をした労働者のプライバシーを保護し、不利益に扱わないように注意しなければなりません。

パワーハラスメントの予防に向け、企業はどう取り組むべきか?

上述したとおり、法改正によって企業には、パワハラの相談窓口の設置、パワハラ発生後の再発防止策の策定、社員がパワハラをした場合の処分内容の就業規則への明記、相談者のプライバシー保護の徹底などが義務付けられています。

パワーハラスメントが発生した場合の対処法は、労働問題を専門的に扱う弁護士にお任せください。

昨今の社会情勢の変化や法律制定に伴い、企業が組織運営していく上で、社員からのパワハラの相談に乗り、適切に対応することは、企業の責務となっています。しかしながら、多くの企業は、パワハラ等の法的問題への対応体制の整っていないのが現状です。そこで、パワハラ等の法的問題に対応するための方法として、パワハラが発生した場合に、弁護士にすぐに相談できる体制を整えておくことも一つです。弁護士に相談することで、より迅速に適切な解決が期待できます。 今後のパワハラ対応等について、不安がある場合には、労務問題に精通し、多くの労務問題を扱う当事務所にいつでもご相談ください。

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