ダイバーシティ・LGBTに関する問題

公開日:2020年10月12日
  • ハラスメント対応

現代社会においては、多様性が許容されるべきであり、国籍、人種、性別、年齢、性的指向や性自認のあり方も多様なものが許容されています。
しかしながら、性的指向(恋愛感情又は性的感情の対象となる性別についての指向)や性自認(自己の性別についての認識)等については、価値観の違いからか理解されないことが多く、ハラスメントの標的とされやすいところがあり、企業側がダイバーシティ・LGBTについての対応を求められる時代となっています。

企業がダイバーシティを推進する必要性

仕事は、人の人生と密接にかかわっているものであり、職場での性自認・性的思考による差別偏見は当事者の働き方だけでなく、当事者の人生そのものを否定することになりかねず、当事者を肉体的身体的に追い込むことになることも少なくありません。
また、企業の福利厚生制度の中には,従業員だけでなくその配偶者も範囲内のものがあります。同性のパートナーはそれらの制度を利用できないという不利益を被る可能性があります。 そのため、企業がダイバーシティを推進し、性指向や性自認についての多様性を許容することで性的マイノリティ等で悩んでいる人たちの人権を保護する必要があります。

LGBTはセクシャルハラスメントの対象

セクハラというと「男性が女性に対してするもの」という固定観念があります。しかし、セクハラはこれだけに限らず、「女性が男性に対してするセクハラ」もあります。また、LGBTの少数派の性的指向を考えれば「男性が男性に対してするセクハラ」「女性が女性に対してするセクハラ」もあり得ます。

職場におけるLGBTハラスメントの例

職場において、LGBTに対して「異常」「気持ち悪い」などと発言したり、「異性が好きじゃないのはおかしい」と決めつける発言を行うことなどがハラスメントの例としてあげられます。
また、LGBTに対し、本来の性に合わない仕草、服装等は変だから治すようにと指示する行為、や「ホモっぽい」などと馬鹿にする行為、「男は○○」「女は○○」などと性別による決めつけなども、ハラスメントに該当し得る行為です。

LGBT問題に対する企業の法的責任

LGBT問題について、企業は男女雇用機会均等法上も、LGBTに対するセクハラについて防止すべき雇用管理上の措置を講じる義務を負っています。男女雇用機会均等法11条1項において、企業は、職場でセクハラが起こらないよう必要な雇用管理上の措置を講じなければならない旨定められています。
そして、同条2項に基づいて制定された「事業主が職場における性的言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針(平成18年厚生労働省告示第615号、いわゆる「セクハラ指針」といいます。)が、企業がセクハラ防止のために講ずべき必要な雇用管理上の措置について具体的に定めています。

男女雇用機会均等法が定めるセクハラ防止措置義務

男女雇用機会均等法が定めるセクハラ防止措置義務の具体的な内容は、

  • ①企業の(セクハラに関する)方針等を明確にし、従業員に周知・啓発すること
  • ②セクハラに関する相談に適切に対応するために必要な体制を整備すること
  • ③セクハラが起こった場合、事実関係を迅速かつ正確に確認し、適正な措置をとること
  • ④セクハラに関する相談者・行為者等のプライバシーを保護するための必要な措置をとること
  • ⑤セクハラの相談をしたことや事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益な取扱いをしない旨を定め、従業員に周知・啓発すること

が挙げられます。
また、平成29年1月1日に施行されたセクハラ指針の改正において、セクハラの被害者の性的指向または性自認にかかわらず、当該被害者に対するセクハラもセクハラ指針の対象となることが明記され、企業はLGBTに対するセクハラについても防止すべき雇用管理上の措置を講ずる義務を負うこととなりました。

企業がLGBT施策を行うことのメリット

労働力需給がひっ迫している現在の状況において、人材の確保および育成は企業にとって死活問題となります。
LGBT当事者にも非当事者と等しく優秀な人材が含まれていますから、LGBT当事者・非当事者かを問わず人材を広く求め、平等にチャンスが与えられ、LGBT当事者が当事者であることのストレスを感じない職場を実現することは企業の競争力の向上に大きく貢献します。
そしていずれはどの企業もそのようになるでしょうから、過渡期と言える今こそ、企業の意識レベルによって人材確保に大きな差がつく可能性があります。

LGBT施策として企業が取るべき措置

企業としてやらなければならないことは、LGBTに対するハラスメントを、セクハラやパワハラとならぶ重大な人権侵害として、これを防止する方策を講じ、社員に対する教育・研修を行うことです。他には、社内相談窓口等を設置し、LGBTハラスメントを受けている社員を救済する制度を創設することなどが考えられます。

社内相談窓口の設置

LGBTの当事者には、セクシュアリティに関する点は最低限の範囲でしか知られたくない、という方も多く、また、十分にLGBTに関する知識がある人に対し、プライバシーを守って相談できる場があればLGBTの人たちにとって安心して働ける職場となります。
なお、後述しますが、LGBT相談窓口を設置するにあたってまずは社内の教育が必要です。なぜなら、窓口で対応する方がただ据えられるのみで知識がなければ何の意味もないからです。

LGBTに関する社内研修の実施

企業が取るべき措置として重要なことはLGBTに関する社内研修の実施です。LGBTハラスメントには、性自認・性的指向についての偏見や性的マイノリティに関する知識のなさが大きな原因となっていることが多いのです。
企業内でのLGBTハラスメントをなくしていくためには、企業主体での社員に対するLGBTの教育が不可欠となります。

就業規則等でハラスメントの禁止を明記する

男女雇用機会均等法11条2項の「セクハラ指針」の中で、就業規則の服務規律において、①セクシュアル・ハラスメントがあってはならない旨を規定すること②就業規則において、セクシュアル・ハラスメントに係る性的な言動を行った者に対する懲戒規定を定めることが定められています。
そのため、就業規則等でハラスメントの禁止を明記する必要があります。

ジェンダー・フリーな職場環境づくり

職場における様々な場面でLGBTであることを理由とした不利益取扱いを行わないことが求められます。採用については、厚生労働省は、応募者の基本的人権を尊重した公正な採用選考を実施するよう企業の協力と努力を要請していますが、公正な採用選考を行う具体例として、「LGBT等性的マイノリティ(性的指向および性自認に基づく差別)など特定の人を排除しないことが必要」であることが明記されています。 さらに、人事処遇や福利厚生などにおいて,同性パートナーを法律上の配偶者と同等に取り扱うことも重要です。
そのために、たとえば慶弔休暇や育児介護休業関係について、「配偶者」には婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む旨を定義しておく等、同性パートナーを配偶者と同等に取り扱えるように、就業規則等の規定を整備することが要請されます。

LGBT(セクシャル・マイノリティ)をめぐる裁判例

LGBTをめぐる裁判例で有名となったものとしては「府中青年の家事件」が挙げられます。

事件の概要

概要は、動くゲイとレズビアンの会(通称アカー,OCCUR)が、府中青年の家の利用を申し込んだ後、青年の家の職員に対し、アカーが同性愛者の人権を考える団体であると紹介すると、同宿の他団体から同性愛者を差別する嫌がらせが相次ぎました。その後も差別的言動が続いたため、アカーは善処を求めたのですが、青年の家職員が団体側の発言を許さない態度に出たため、アカー側は職員に抗議しました。
その後、アカーが再度の利用を青年の家に申し込んだところ、「青少年の健全な育成にとって、正しいとはいえない影響を与える」として利用を拒否され、東京都教育委員会も青年の家利用条例の「秩序を乱す恐れがあると認められる者」などとして今後の使用を認めない処分を決定しました。
そのためアカーは、正当な理由によらない差別的な取り扱いであり人権侵害にあたるとして、青年の家が利用できなかったことによる損害賠償を求め提訴したのです。

裁判所の判断(事件番号 裁判年月日・裁判所・裁判種類)

控訴審において、東京高等裁判所は、「平成二年当時は,一般国民も行政当局も、同性愛ないし同性愛者については無関心であって、正確な知識もなかったものと考えられる。
しかし、一般国民はともかくとして、都教育委員会を含む行政当局としては、その職務を行うについて、少数者である同性愛者をも視野に入れた、肌理の細かな配慮が必要であり、同性愛者の権利、利益を十分に擁護することが要請されているものというべきであって、無関心であったり知識がないということは公権力の行使に当たる者として許されないことである。」と判示し、原告が全面的に勝訴しました(平成9年9月16日/東京高等裁判所/判決/平成6年(ネ)1580号)。

ポイントと解説

東京都のLGBTである同性愛者の団体に対する取扱いが不当であったと認定し、同性愛者の権利、利益を十分に擁護することが要請されるものであると、行政側に対し、LGBTに対する適切な配慮を求めた点がポイントであり、社会的な大きな影響を与えた裁判例です。

LGBTへの理解を深めてダイバーシティを実現可能に

ダイバーシティを実現するには、企業だけでなく、社会に生きる人々がそれぞれLGBTへの理解を深め、性的マイノリティへの偏見や差別を無くしていくことが重要です。

LGBT施策や社内体制の見直しについて、労務管理の知識を有する弁護士がアドバイスさせて頂きます。

LGBTやダイバーシティについては,法律の改正などが多岐にわたり、LGBT施策や社内体制の見直しについては労務管理の専門的な知識が必要です。
弊所には労務管理の知識を有する弁護士が数多く在籍しており、昨今の法律の改正などにも対応しております。
そのためLGBT施策や社内体制の見直しについては是非弊所の弁護士へご相談ください。

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