ハラスメント対応

「上司がパワハラで訴えると言われた」
「女性従業員にセクハラで訴えられた」
「飲み会へ誘った従業員にパワハラと言われた」

今日、パワハラ、セクハラ、アカハラ、マタハラ等、職場におけるハラスメントが大きく取り上げられるようになりました。

一般的に「ハラスメント」と呼ばれている行為は、集団内において優位な立場にある者が劣位な立場にある者に対して精神的又は身体的苦痛を与える行為をいいます。

ハラスメント問題による企業リスク

企業内でパワハラやセクハラ等のハラスメントが行われた場合、企業が使用者責任や債務不履行責任を問われるリスクがあるだけでなく、現在はインターネットの普及により、たちまちその噂が世間に広まり、企業イメージや評判の低下を招きかねません。また、それだけでなく、職場環境の悪化により、業務効率や生産性自体も低下してしまいます。

逆に、従業員からパワハラやセクハラ等と声高に主張されることを恐れて、企業側が過度に畏縮してしまうケースも少なくありません。

適切な業務分担や円滑な人間関係の構築のためには、どのようなことがハラスメントに該当するのかを認識・理解した上で、ハラスメントに対する予防策を講じることが重要となってきます。

企業で問題となりうる代表的なハラスメント

パワーハラスメント(パワハラ)

職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいいます。

殴る・蹴る・突き飛ばすなどの身体的侵害や、脅迫や名誉毀損、侮辱、酷い暴言などの精神的侵害だけでなく、人間関係からの切り離しや、業務上明らかに達成不可能なノルマを課したり(過大な要求)、単調な作業を延々とさせたりすること(過小な要求)や、プライベートな内容に過剰に踏み入る行為(個の侵害)も、相手に精神的苦痛を与えたり職場環境を害することがあればパワハラといえるでしょう。

セクシャルハラスメント(セクハラ)

本人が意図する、しないにかかわらず、相手が不快に思い、相手が自身の尊厳を傷つけられたと感じるような性的発言・行動をいいます。

職場におけるセクシャルハラスメントには、労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応(拒否や抵抗)により、その労働者が労働契約上の不利益を受ける対価型セクシャルハラスメント、意に反する性的な言動により労働者の就業環境が不快なものとなったため、その労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じる環境型セクシャルハラスメントがあります。

男女雇用機会均等法11条は、職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置等を事業主に義務付けているので、特に注意が必要です。

マタニティハラスメント(マタハラ)

女性が妊娠、出産、子育てなどをきっかけとして嫌がらせや不利益な扱いを受けることです。

男女雇用機会均等法9条第3項では、女性労働者の妊娠・出産等厚生労働省令で定める事由を理由とする解雇その他不利益取扱いを禁止しており、また、育児・介護休業法10条は、労働者が育児休業の申出をし、又は育児休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないとしています。

そして、平成29年1月1日からは、上司・同僚からのマタニティハラスメントの防止措置についても事業主に義務付けられるようになりました(男女雇用機会均等法11条の2、育児・介護休業法25条)。

その他問題となるハラスメント

その他にも、飲酒に関連した嫌がらせや迷惑行為(飲酒強要等)のアルコールハラスメント(アルハラ)、男性労働者が育児のための休暇制度等を希望するのに対して、制度を取らせないようにしたり、嫌がらせをしたりするというパタニティハラスメント(パタハラ)、モラル(道徳)による精神的な暴力、嫌がらせをいうモラルハラスメント(モラハラ)、性に関する固定観念や差別意識に基づく嫌がらせであるジェンダーハラスメント(ジェンハラ)等のハラスメントがあります。

問題となりうるハラスメントの行為

ハラスメントの種類 ハラスメント行為
パワーハラスメント(パワハラ) ・身体的侵害
・精神的侵害
・人間関係の切り離し
・過少、過大要求
・プライベートな内容へ過剰に踏み入る行為
アルコールハラスメント(アルハラ) ・飲酒の強要
・イッキ飲ませ
・意図的な酔いつぶし
・飲めない人への配慮を欠くこと
・酔ったうえでの迷惑行為
セクシュアルハラスメント(セクハラ) ①性的な内容の発言
性的な事実関係を尋ねること、性的な内容の情報(噂)を流布すること、性的な冗談やからかい、食事やデートへの執拗な誘い、個人的な性的体験談を話すことなど
②性的な行動
性的な関係を強要すること、必要なく身体へ接触すること、わいせつ図画を配布・掲示すること、強制わいせつ行為、強姦など
マタニティーハラスメント(マタハラ) ①制度等を利用した「嫌がらせ型」
「育休を取得するなら辞めてもらう」などの言動で女性が制度を利用しづらい環境にすることなど
②状態への嫌がらせ型
「つわりぐらいで休むなら会社を辞めろ」などの言動で、就業環境を悪化させることなど
パタニティハラスメント(パタハラ) ①制度等を利用した「嫌がらせ型」
「育休を取得するなら辞めてもらう」などの言動で男性が制度を利用しづらい環境にすることなど
②状態への嫌がらせ型
育児による休業等で業務効率が低下したことを揶揄する言動等で、就業環境を悪化させることなど
モラルハラスメント(モラハラ) 職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性に関係なく、精神的な攻撃を与えること。
ジェンダーハラスメント(ジェンハラ) 男らしさを過度に強調し、力仕事を一方的に負わせたり、態度や仕草に力強さを求めること、女らしさを過度に強調し、社内の雑用を一方的に負わせたり、態度や仕草に柔和さを求めること

各種ハラスメント問題における企業の法的義務

各種ハラスメント問題における企業の法的義務については、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法)等に規定されています。

それぞれの法律は、労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じることや、労働者が相談を行ったこと、または相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないこと等を義務として規定しています。

パワハラ防止法の成立と企業の取り組み

令和元年5月29日、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律」の成立に伴い、同法第3条に基づき、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(「労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法))」の改正が行われたことで、職場のパワーハラスメント防止のための雇用管理措置を講じることが事業主の義務とされ、令和2年6月1日より施行されました。

※なお、中小企業においては、令和4年4月1日までの間は、事業主の義務については努力義務とされています。

企業が行うべきハラスメント防止策

ハラスメント防止策の明確化・社内周知

まず、パワハラを防止するために自社でどのような方針をとるのかを明確にし、管理監督者を含める労働者に社内報、社内ホームページなどに「パワハラを行ってはならない」と明記し、発生原因や背景、トラブル事例なども併せて紹介する、社内方針やパワハラの発生原因・背景を理解させるための研修や講習、説明会を実施する等の周知・啓発を行わなければなりません。

また、パワハラの加害者に対して厳しく対処する方針や、懲戒処分などの対処内容を就業規則や服務規定に定め、周知・啓発しなくてはなりません。

対応窓口の設置

労働者から相談があった際に適切に対処するために必要な体制の整備として、相談窓口を設けて事前に労働者へ周知することが必要です。

例えば、相談に対応する担当者を決める、相談への対応を弁護士等へ外部委託するなどの方法があげられます。企業規模が小さく窓口や担当を決める余裕がない中小企業などでは、とくに外部委託は有効な方法でしょう。

また、相談窓口の担当者が適切に対応できるよう、担当者へ対する研修の実施や人事部との連携をあらかじめ整えておくことも求められます。

関係者のプライバシー保護・不利益取り扱い禁止

パワハラ防止法では、労働者のパワハラの相談を行ったことや、事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、その労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないと規定しています。

また、職場におけるパワーハラスメントに係る相談者・行為者等の情報は当該相談者・行為者等のプライバシーに属するものですから、相談への対応や当該パワーハラスメントに係る事後の対応にあたっては、相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講ずるとともに、その旨を労働者に対して周知しなければなりません。

企業内でハラスメントが発生した場合の対応

ハラスメント防止策を十分に講じていても、残念ながら、職場におけるハラスメン卜を完全にゼロとすることはできないでしょう。それでは、ハラスメントが実際に発生してしまった場合、企業としてはどのように対応等していくべきなのでしょうか。

企業は、ハラスメントが実際に発生した場合、以下でそれぞれ述べるとおり、事実関係を確認し、確認された事実関係がハラスメントに該当するかを判断し、被害者へフォローアップを行いつつ、加害者に適正な処分を行うことになります。

事実関係の確認

相談窓口の担当者は、相談にやってきた被害者に寄り添うことが重要ですが、それだけでなく中立の立場で話を聞くことも重要です。そのうえで、加害者とされる従業員からも同じように中立の立場で話を聞き、目撃者等の第三者からも話を聞いてみると、ハラスメントの実態が明らかになるということもあります。

関係者からの聞き取り調査は、なるべく他の従業員に知られないように進めた方がよいでしょう。聞き取り調査をしているという事実が広まるだけで騒ぎになり、相談者が職場に居づらくなってしまう可能性もあるからです。

ハラスメントの判断基準

パワーハラスメント(パワハラ)は、①:職場において行われる優越的な関係を背景とした言動、②:業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの、③:労働者の就業環境が害されるもの、の3要件を充足するものとされています(労働施策総合推進法30条の2)。

セクシャルハラスメント(セクハラ)については、①:性的な言動であること、②:①が相手の意に反するものであること、③:①が「職場」におけるものであること、④:①を受けた女性労働者の対応によりその労働条件につき不利益を与えること(対価型)、または、①によって女性労働者の就業環境が害されること(環境型)、という要件があげられます(男女雇用機会均等法11条参照)。

マタニティハラスメント(マタハラ)については、①:女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、産前・産後休業を請求したこと、産前・産後の休業をしたこと、その他の妊娠又は出産に関する事由であって厚生労働省令で定めるものに関する言動があったこと、②:①が「職場」におけるものであること、③:①によって女性労働者の就業環境が害されること、という要件があげられます(男女雇用機会均等法11条の3参照)。

加害者・被害者への対応

被害者へのフォローアップ

被害者の現在の状態、特に心身の状況を把握し、対応方法を考えます。被害者が精神的にかなり不安定になっている場合は、医療機関を紹介することも必要ですし、当事者を引き離す必要があると認められる場合は、一時的に配置転換や自宅待機を可能にするなど、柔軟かつ迅速な対応が求められます。被害者の意向を確認し、会社が選択肢を用意して相談者に選択してもらうのがよいでしょう。

加害者への処分

問題となった行為内容や加害者の役職などに応じ、加害者に対し懲戒処分を行うこともありますが、その場合はあらかじめ懲戒の事由、種類、程度を就業規則に明示しておかなければなりません。

また、処分内容についても、その妥当性(行為の程度等と比較して軽微すぎる、あるいは過酷すぎる)が問われます。企業として公平に判断しなければなりません。

処分としては、加害者本人への警告・注意(口頭・文書)、始末書提出、減給・出勤停止、休職、降格、諭旨解雇、懲戒解雇等をあげることができます。

弁護士へハラスメント問題を依頼するメリット

個々人によって、行為に対する評価は異なるので、ハラスメントに該当するかどうかの判断は、極めて難しい問題といえます。近年ハラスメントに関する裁判例が、構築されてきており、裁判例の動向や法的な知識を正確に備えることは予防策を講じる上で非常に有益です。

ハラスメント対策は、現在多くの企業において取り組まなければならない問題として注力されている分野の1つであると思います。労働環境の向上は、企業イメージの向上や評判の向上にも繋がります。

当事務所では、ハラスメントに関する企業向けのセミナーも多数行っており、訴えを起こされた場合の交渉や訴訟手続はもちろんのこと、ハラスメント防止規定の策定、ハラスメントを未然に防止するための適切なアドバイス等も致します。お気軽にご相談下さい。

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この記事の監修

大阪法律事務所 所長 弁護士 長田 弘樹
弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長弁護士 長田 弘樹
大阪弁護士会所属。弁護士法人ALGでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。
大阪弁護士会所属。弁護士法人ALGでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。

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