セクシャルハラスメント対応について解説

公開日:2020年9月3日
  • ハラスメント対応

セクシャルハラスメントという言葉が一般的になってから久しいところですが、未だセクシャルハラスメントは少なからず生じています。近年は、LGBTという言葉に代表されるように、性自認についても「男女」の二択では語ることができないこともよく知られるようになっています。いうまでもなく、性にかかわる問題は個人のアイデンティティに直結する問題であり、これを揶揄するなどといった行動は許されません。企業内においてセクシャルハラスメントが生じた場合、企業活動に影響を与えることもありますので、以下ではセクシャルハラスメントに対する対応について論じます。

セクシャルハラスメント(セクハラ)が企業にもたらす損失

セクシャルハラスメントが生じた際、企業としては、①被害者に対する使用者責任または労働契約上の安全配慮義務違反に基づく損害賠償、②加害者に対する懲戒処分等の対応、③取引先や企業イメージの低下に対する対応等が必要となり、本業ではない部分に費用や労力を割かざるを得ない事態となってしまいます。 特に、昨今はSNSの発展により、ある企業内におけるセクシャルハラスメントが世界中に知れ渡る可能性すらもあることに留意すべきです。

男女雇用機会均等法による「セクハラ」の定義

男女雇用機会均等法11条では、「職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されること」に対して事業主に一定の対応を求めています。 条文上は、①職場内の性的言動によって労働条件に不利益を与える行為(=対価型セクシャルハラスメント)、②職場内の性的言動により就業環境を害する行為(=環境型セクシャルハラスメント)の二つの類型を定めています。 令和2年厚生労働省告示第6 号(平成18年厚生労働省告示第615号の一部を改正)によると、ここにいう性的な言動とは、性的な内容の発言及び性的な行動を指し、この「性的な内容の発言」には、性的な事実関係を尋ねること、性的な内容の情報を意図的に流布すること等が、「性的な行動」には、性的な関係を強要すること、必要なく身体に触ること、わいせつな図画を配布すること等が、それぞれ含まれるとされています。

職場のセクハラ発生時に取るべき対応とは

職場におけるセクハラ発生時には、企業としても適切な対応をしなければなりません。過去には、企業がセクハラの発生を知りながらも適切な対応をしなかったことを理由として、損害賠償責任が認められた事例もあります。 セクハラの放置は、職場内の士気にも関わりますので、被害者と加害者の隔離を行った上で、事実関係を調査し、セクハラの事実が認められる場合には、加害者への処分と被害者へのフォローを検討する必要があります。

被害者と加害者の隔離

被害者からセクハラの申告があった場合、企業側としては、まず被害者と加害者を隔離することを検討すべきです。 申告されたセクハラの内容が悪質なものであるにもかかわらず、隔離等を行わずに同一の職場で勤務させていた場合、環境調整義務に反して企業も損害賠償責任を負うこととなりかねません。過去には、加害者から性的暴行を受けた被害者が、使用者に対して加害者の人事異動等を望んでいたにもかかわらず、使用者側が適切に対応をしなかったという事案で、使用者側の被害者に対する責任が認められているものもあります。 少なくとも、被害者から申告されたセクハラの内容が、外形的には性的な言動を含んでいることが明らかであって、当事者間の関係等に照らすと、合意の上での言動とは容易に認められないような場合には、被害者と加害者を隔離し、その上で対応を検討していくべきと考えられます。

ヒアリングなどによる事実調査

被害者が申告したセクハラの内容について、事業主としては事実調査を行なう必要があります。 令和2年厚生労働省告示第6 号においても、事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認することが求められています。同告示においては、セクハラが他の事業主や他の事業主が雇用する労働者による場合には、当該事業主に対して、必要に応じて事実関係の確認への協力を求めることも定められています。 被害者、加害者からのヒアリングはもちろんのこと、双方の主張が食い違っている場合には、第三者へのヒアリングも必要となります。なお、双方の主張が食い違っているからといって、被害者に対して不適切なヒアリングをすることは二次被害を生じさせかねませんので、被害者の心身に配慮する必要があることは言うまでもありません。 事実確認が困難な場合は、男女雇用機会均等法18条に基づく調停の申立て等を検討することも一つです。

加害者に対する処分の検討

加害者によるセクハラが確認できた場合には、すみやかに被害者に対する配慮のために適切な措置をとる必要があります。 具体的には、事案に応じて、被害者と加害者を引き離すための配置転換、加害者から被害者への謝罪、就業規則等に照らした懲戒処分の検討などが考えられます。 少なくとも、セクハラが確認できたにもかかわらず、企業が何らの措置も講じずに従前どおりに加害者の勤務を継続させていた場合には、企業側が、適切な対応をとっていないことを理由として被害者に対して慰謝料等を支払わなければならない可能性が生じますので、セクハラ問題の解決に向けた対応は真摯にとるべきです。

被害者へのフォロー

セクハラを受けた被害者は、心身ともに傷ついており、被害者へのフォローは必須の対応です。 具体的には、被害者と加害者を引き離すことや、加害者から被害者への謝罪はもちろんのこと、対価型セクハラの場合には被害者の労働条件上の不利益の回復、被害者のメンタルヘルス不調への対応等をとるべきでしょう。

再発防止のための措置

セクハラに関しては、セクハラの事実関係が確認できたかどうかにかかわらず、セクハラの再発防止に向けた措置を講じなければなりません。 具体的には、セクハラを行ってはならない旨の方針及びセクハラに係る性的な言動を行った者については厳正に対処する旨の方針を、社内報、パンフレット、社内ホームページ等で広く知らせることや、セクハラに関する研修や講習の実施が考えられます。 なお、セクハラが他の事業主または他の事業主が雇用する労働者によるものである場合には、必要に応じて、他の事業主に再発防止に向けた措置を取るよう求めることも必要とされています。

セクハラの相談者・行為者等に対するプライバシー保護

セクハラの相談者や加害者(行為者)等の情報は、各人のプライバシーに関わる内容であるため、各人のプライバシーを保護することも必要です。 あらかじめ、プライバシー保護に関するマニュアル等を作成し、セクハラの相談を担当する者に対して配布しておくとともに、プライバシー保護のための研修も必要に応じて実施するといった対応が考えられます。 不用意にセクハラの相談内容を口外した場合には、そのこと自体が事業主の法的責任を生じさせかねませんので、相談者、加害者(行為者)のプライバシーは適切に保護される必要があります。

セクシャルハラスメントに関する裁判例

セクハラを理由とした加害者への懲戒処分の有効性が争われた事例として、最判平成27年2月26日が例として挙げられます。

事件の概要

本件の事案は、男性従業員2名が、それぞれ複数の女性従業員に対して性的な発言等をしたため、事業主が当該男性従業員らを出勤停止の懲戒処分としたというものです。男性従業員ら側は、懲戒処分の有効性を争いました。

裁判所の判断(事件番号 裁判年月日・裁判所・裁判種類)

最高裁判所平成27年2月26日判決(平成26年(受)1310号懲戒処分無効確認等請求事件)
【事実関係】
会社の管理職である男性従業員2名が、同一部署内に勤務する女性従業員らに対して行った性的な内容の発言等について、会社がそのこと理由として当該男性従業員2名に対して行った懲戒処分の有効性が争われました。懲戒処分の内容は出勤停止処分でした。 認定された性的な内容の発言は、うち1名が自らの不貞相手に関する性的な事柄や自らの性器や性欲等について、極めて露骨で卑猥な内容の発言をした、他の1名が当該部署に異動した当初に上司から女性従業員に対する言動に気を付けるよう注意されていたにもかかわらず、女性従業員の年齢や未婚であることを侮辱する等の発言をしたというものでした。これらの発言内容のほかに、男性従業員の職場における立場、職場におけるセクシャルハラスメントに対する対策、セクシャルハラスメントを受けた女性従業員が会社を辞めることとなった、といった事情がありました。

【裁判所の判断】
原審は、女性従業員から明確な拒否の姿勢が示されておらず、男性従業員も言動が許容されていると誤信していたことや、男性従業員らが会社側のセクハラに対する懲戒に関する具体的な方針を認識する機会がなかったなどといった事情の下では、懲戒解雇の次に重い出勤停止の処分は処分として重すぎると判断していました。 しかし、最高裁は、男性従業員らの発言内容、会社がセクハラの防止に関して文書で周知し、研修を受けさせていたこと、男性従業員らが管理職の立場であったこと、女性従業員が退職するに至ったことなどの事情からすると、出勤停止処分は相当であると判断しました。

ポイントと解説

従来、言葉によるセクハラは、身体的接触によるセクハラと比較すると軽視される風潮があり、会社としても対策が遅れがちなところではありました。しかし、本判決は、具体的な発言内容や会社のセクハラ防止への取り組みを具体的に認定した上で、本件では会社の懲戒処分が相当としたものです。 本件で留意すべきなのは、原審も、男性従業員らの言動が懲戒事由に該当することは認めていることです。そのうえで、原審は、処分が重すぎると判断していたに過ぎず、決して、言葉によるセクハラが容認されると認められたものではないことは肝に銘じるべきものです。

法改正によるセクシャルハラスメント等の防止対策の強化

令和2年6月1日より、パワーハラスメントに対してはその防止措置が事業主の義務とされており、中小事業主に対しても令和4年4月1日から義務化されるとなっています。これに合わせて、セクハラに関しても、防止対策の強化が図られており、こちらについては中小事業主も義務化の対象となっています。 法改正では、①事業主及び労働者の責務を法律上明記、②事業主に相談等をした労働者に対し不利益取扱いの禁止、③自社の労働者が他者の労働者にセクハラを行った場合の協力対応が盛り込まれ、よりセクハラの防止対策が強化されています。

法改正に向け企業に求められる取り組み

事業主としては、法改正により、①事業主の方針の明確化とその周知・啓発、②相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備、③職場におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応、④プライバシー保護や不利益取扱いの禁止といった、事業主が雇用上講ずべき措置をとるほか、さらに踏み込んでセクハラの防止のために必要な取組みをすることが望まれています。 社内向けには、各ハラスメントが同時的に行われることがあることに鑑み、相談窓口を一元化し、その旨を周知するといった対応が望ましい対応といえるでしょう。また、近年では、採用活動における学生等へのセクハラも問題視されており、セクハラが社内の者に対する性的言動に限られないことを周知することも望ましいといえます。

職場におけるセクシャルハラスメント問題の早期解決は、法律の専門家である弁護士にお任せください。

職場におけるセクハラは、対応を誤ると、職場全体に著しい悪影響を与えてしまうものであり、企業活動に大きく影響し得るものです。 加害者にしろ、被害者にしろ、企業においては事業活動のために必要な人材であるでしょうから、これをセクハラのように事業活動以外の言動によって事業活動が妨害されることが好ましくないことはいうまでもありません。 事前の防止策に関する規定の作成や研修の実施、事後的な紛争解決に向けた対応など、セクハラによって生じる問題に対しては、早期かつ適切に対応する必要があるため、法律の専門家である弁護士にご相談ください。

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