働き方改革関連法案:(ア) 第1の柱:働き方改革の総合的かつ継続的な推進(雇用対策法改正)

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国によりますと、「働き方改革」は、個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で「選択」できるようにするための改革であるとされています。日本が直面する「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」、「働く方々のニーズの多様化」などの課題に対応するためには、投資やイノベーションによる生産性向上とともに、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境を作ることが必要であり、働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現することで、成長と分配の好循環を構築し、一人ひとりがよりよい将来の展望を持てるようにすることを目指すとされています。
その第1の柱が、働き方改革の総合的かつ継続的な推進に向けた施策です。働き方改革に係る基本的な考え方を明らかにするとともに、国は、改革を総合的かつ継続的に推進するための「基本方針 」( 閣議決定)を定めることとされ(雇用対策法)、中小企業の取組を推進するため、地方の関係者により構成される協議会の設置等の連携体制を整備する努力義務規定を創設するものとされています。

働き方改革関連法案の趣旨

働き方改革関連法が施行された背景とは?

日本においては、長年、少子化に対する対策が課題とされつつも、人口減少に歯止めがかからず、2008年をピークに、人口が減少しつつあります。
また、働くこと自体に対する価値観も多様化しつつあり、かつてのような、長時間労働を是とする風潮も薄れつつあります。
そこで、国は、働き方改革を通して、日本が直面する「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」や「働く人々のニーズの多様化」といった課題に取り組むこととし、多様な働き方を選択できる社会の実現を目指すべく、働き方改革を進めようとしています。

働き方改革の対象となる8つの労働関係法

働き方改革は、具体的には次の8つの労働関係法令の改正から成っています。

  • 1 労働基準法
  • 2 じん肺法
  • 3 雇用対策法
  • 4 労働安全衛生法
  • 5 労働者派遣法
  • 6 労働時間等の設定の改善に関する特別措置法
  • 7 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律
  • 8 労働契約法

その目指す方針やそれを実現するための具体的内容は次項以降で詳しくご説明します。

働き方改革を構成する3つの柱

働き方改革は、①働き方改革の総合的かつ継続的な推進、②長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現等、③雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保、の3つの方針により改革を実現しようとしています。

①働き方改革の総合的かつ継続的な推進(雇用対策法改正)

国は、改革を総合的かつ継続的に推進するための「基本方針」(閣議決定)を定めることとし、また、中小企業の取り組みを推進するため、地方の関係者により構成される競技会の設置等の連携体制を整備する努力義務を課されています。

②長時間労働の是正と多様で柔軟な働き方の実現等(労働基準法等改正)

労働時間に関する制度の見直し、勤務間インターバル制度の普及促進等、産業医・産業保健機能の強化により、長時間労働の是正と他用で柔軟の働き方の実現を図ろうとしています。

③雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保

不合理な待遇差を解消するための規定の整備、労働者に対する待遇に関する説明義務の強化、行政による履行確保措置及び裁判外紛争解決手続き(行政ADR)の整備を軸として、雇用形態にかかわらない公正な待遇を確保する施策が講じられています。

改正雇用対策法「働き方改革の総合的かつ継続的な推進」とは?

そもそも雇用対策法とはどのような法律なのか?

雇用対策法は、昭和41年に施行された法律であり、労働者の職業の安定や経済的社会地位の向上を図ること等を目的とし、求職者に対する指導や、職業訓練に関する規程、一定の給付に関する規程を設け、また、国や地方公共団体に対し、労働者の職業指導、紹介、訓練に関する必要な施策を充実させることや、女性の就業に関して必要な施策を充実させること、高齢者や障がい者の職業の雇用に必要な施策を充実させることなどを義務付ける内容の法律です。

今回の改正により、法令の題名が「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」へと変更となり、国は、労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにするために必要な労働に関する施策の総合的な推進に関する基本的な方針を定めなければならないとされ(第10条1項)、必要があるときは、地方公共団体の長などに対し、基本方針に定められた施策について必要な要請をすることができるものとされました(第10条の2)。
また、中小企業における労働時間の短縮その他の労働条件の改善、多様な就業形態の普及、雇用形態又は就業形態の異なる労働者の均衡のとれた待遇の確保等の実施に関し、地方公共団体などから成る競技会の設置等に必要な施策を講ずるよう努めるものとされています(第10条の3)。

雇用対策法の改正内容

今回の改正により、法令の題名が「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」へと変更となり、国は、労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにするために必要な労働に関する施策の総合的な推進に関する基本的な方針を定めなければならないとされ(第10条1項)、必要があるときは、地方公共団体の長などに対し、基本方針に定められた施策について必要な要請をすることができるものとされました(第10条の2)。

また、中小企業における労働時間の短縮その他の労働条件の改善、多様な就業形態の普及、雇用形態又は就業形態の異なる労働者の均衡のとれた待遇の確保等の実施に関し、地方公共団体などから成る競技会の設置等に必要な施策を講ずるよう努めるものとされました(第10条の3)。

題名と目的規定等の改正

従前、雇用対策法と題されていた法令ですが、働き方改革の名の下に、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(略称は労働施策総合推進法)とするとともに、第1条における法令の目的においても、従前、「労働力の需給が質量両面にわたり均衡することを促進して」とされていたものが、「労働者の多様な事情に応じた雇用の安定及び職業生活の充実並びに労働生産性の向上を促進して」という文言へと変更されました。
これらの変更内容からも、労働者の多様な就業形態を前提として施策を立てるべきと考えられていることがうかがえます。

国の講ずべき施策

労働施策総合推進法においては、国は、労働者の多様な事情に応じた「 職業生活の充実」に対応し、働き方改革を総合的に推進するために必要な施策として、現行の雇用関係の施策に加え、次のような施策を新たに規定するとされています。

  • ・労働時間の短縮その他の労働条件の改善
  • ・雇用形態又は就業 形態の異なる労働者の間の均衡のとれた待遇の確保
  • ・多様な就業形態の普及
  • ・仕事と生活(育児、介護、治療)の両立

基本方針の策定

労働施策総合推進法においては、国に対し、基本方針を策定するように義務付けています。
これに基づき、平成30年12月28日、基本方針が閣議決定されており、①労働時間の短縮等の労働環境の整備、②雇用形態又は就業形態の異なる労働者の間の均衡のとれた待遇の確保、多様な就業形態の普及及び雇用・就業形態の改善、③多様な人材の活躍促進、④育児・介護又は治療と仕事の両立支援、⑤人的資本の質の向上と職業能力評価の充実、⑥転職・再就職支援、職業紹介等に関する施策の充実、⑦働き方改革の円滑な実施に向けた取組、に関して、具体的に定められました。

雇用対策法改正における事業主の責務とは?

令和元年6月5日、パワーハラスメントに対する規定を盛り込んだ改正労働施策総合推進法が成立し、令和2年6月1日から施行されました。同改正では、いわゆるパワーハラスメントに関し、雇用管理上の措置等として、「事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。」とされました(第30条の2)。

「職業生活の充実」は労働者の主観に基づくべきか?

「職場におけるパワーハラスメント」は労働者の主観に基づくべきか?
改正法により、事業主が職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、その雇用する労働者の就業環境が害されること(以下「職場におけるパワーハラスメント」といいます。)のないよう、雇用管理上必要な措置を講ずべきものとされましたが、職場におけるパワーハラスメントはどのように判断すべきでしょうか。
厚生労働省告示第5号では、①「優越的な関係を背景とした言動」とは、当該事業主の業務を遂行するに当たって、当該言動を受ける労働者が当該言動の行為者とされる者に対して抵抗又は拒絶することができない蓋然性が高い関係を背景として行われるものを指す、②「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」言動とは、社会通念に照らし、当該言動が明らかに当該事業主の業務上必要性がない、又はその態様が相当ではないものを指す、③「労働者の就業環境が害される」とは、当該言動により労働者が身体的又は精神的に苦痛を与えられ、労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることを指す、とされています。

いずれについても、様々な要素を考慮した上で該当性を判断する必要があり、③については、「平均的な労働者の感じ方」、すなわち、同様の状況で当該言動を受けた場合に、社会一般の労働者が、就業する上で看過できない程度の支障が生じたと感じるような言動であるかどうかを基準とするのが適当であるとされています。

中小企業における責務について

中小事業主においては、改正労働施策総合推進法が公布されてから3年を超えない範囲内において政令で定める日までの間は、職場におけるパワーハラスメントに対する必要な措置は努力義務とされました。
しかし、令和4年4月1日からは中小事業主においても、必要な措置を講じるのが義務とされますので、今から対策を進めていくべきといえます。

労働者の職業の安定を図るための企業の取り組み

長時間労働の是正、多様な働き方を実現することに向けた取り組み、公正な待遇の確保、職場においてハラスメントに対する必要な措置といった一連の改革は、労働者が働きやすい環境を作ることで、企業の経済的発展に寄与するという側面も持ち合わせています。通勤時間の削減に向けたテレワークの導入や、ノー残業デーの設定、ハラスメントに対する講習会の実施や、待遇の見直しなどが取り組みの内容として考えられますが、重要なことは、その職場で働いている労働者のニーズに合わせた取り組みであるといえるでしょう。

企業が働き方改革を推進することのメリット

働き方改革は、もともと、長時間労働の是正や多様な働き方に合わせる必要があるとされている中で、国を挙げて取り組んでいくという方向性の下、法改正がなされたものであり、ニーズに応じた対応であるという評価もできます。
労働者の生産効率を高めることで、より業績を伸ばすことができる可能性があり、企業においても、積極的に働き方改革を進めるメリットがあるといえます。

推進に努めない企業への罰則はあるのか?

労働施策総合推進法の事業主が課される義務については、違反したとしましても罰則はありません。
もっとも、労働者とトラブルになった際に、民事上の責任を考慮する上では、考慮されるべきものであり、その意味で、違反状態を放任してよいということにはなりません。
また、現在は罰則が付されていないとしても、将来、改善が見られない場合に、違反状態を是正するために罰則を付すように法改正が行なわれる可能性もないとはいえず、その意味においても、労働環境の改善に向けて取り組んでいく必要はあるといえるでしょう。

また、労働施策総合推進法の規定を横において考えたとしましても、パワーハラスメントが労働者の生産効率を下げる行為であることは容易に想像できることですし、共働きのニーズも高まっている中、多様な働き方に向けて取り組んでいくことは、生産性を高めるために必要な取り組みであるといえます。

法改正の施行時期

パワーハラスメントに対する必要な措置に関しては、大企業においては令和2年6月1日から、既に施行されています。中小企業については、令和4年4月1日からとされていますが、事前準備を考慮しますと、今の段階から体制を整えていく必要はあるでしょう。

働き方改革についてお悩みの企業は、労働関係法に詳しい弁護士までご相談下さい。

働き方改革に対する各企業の取り組みは、単一の答えがあるものではなく、各企業における労働者の雇用環境を踏まえて、対応を検討していく必要があります。
働き方改革についてお悩みの企業は、ぜひご相談ください。

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この記事の監修

大阪法律事務所 所長 弁護士 長田 弘樹
弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長弁護士 長田 弘樹
大阪弁護士会所属。弁護士法人ALGでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。
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