会社を守る36協定の締結方法

公開日:2020年9月4日
  • 残業代請求対応、未払い賃金対応

労働者にとって最も重要な労働条件として、賃金や労働時間が挙げられるかと思います。そのうち労働時間については、昨今の働き方改革でも改めてその内容が見直されており、メディアなどさまざまなところで取り上げられています。会社にとっても、労働時間に関する規制について理解せずに漫然と労働者に残業をさせた場合、思わぬ形で足をすくわれて会社のマイナスとなる危険性があります。そこで本稿では、適法に時間外労働、休日労働を可能とするための36協定の締結の仕方について解説します。

会社が36協定を締結しなければならない理由とは?

労働時間の原則

労働基準法では、労働者の労働時間について、休憩時間を除いて、1週間あたり40時間を超えてはならず、1日あたり8時間を超えてはならないとされています。また、労働者に対して少なくとも週に1日の休日を与えなければならないとされています。

この労働時間(法定労働時間)を超えて又はこの休日(法定休日)に労働者を働かせるためには、災害等の避けることができない事由によって臨時の必要がある又は36協定を締結している必要があります。

36協定を締結していない残業は違法となる

災害等の避けることができない事由によって臨時の必要があると認められるのは非常に限定的で、さらに行政官庁の許可を受けなければならないことから、これによる時間外労働、休日労働は例外的な場面に限られます。ですので、法定労働時間外や法定休日に労働させるためには、原則として36協定の締結が必要となります。もし適法に36協定が締結されないまま法定時間外労働や法定休日労働をさせた場合、その労働は違法にさせたことになり、また、罰則も科されることになります。

36協定で定められる残業の限度時間

36協定によって延長できる労働時間は、各事業場の業務量や時間外労働の動向等の事情を考慮して通常予見される時間外労働の範囲内において、1か月について45時間及び1年について360時間を超えない時間とされています。

特別条項付き36協定について

さらに、各事業場で通常予見することができない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に上記限度時間を超える労働が必要となった場合には、それを超える時間外労働、休日労働に関する協定をすることもできます(特別条項)。

特別条項での労働時間の上限は、1か月について時間外労働、休日労働をさせることができるのは100時間未満で、かつ、1年について時間外労働をさせることができるのは720時間を超えない範囲とされています。さらに、対象期間初日からの2か月、3か月、4か月、5か月、6か月の平均の時間外労働時間がそれぞれ80時間を超えない必要があります。

また、特別条項によって45時間を超える時間外労働が可能となるのは、1年について6か月以内に限られます。

36協定を締結する方法

36協定は、各事業場において、労働者の過半数で組織する労働組合、又は、そのような労働組合が無い場合には労働者の過半数を代表する者との間で、書面によって協定し、これを行政官庁に届け出る必要があります。

36協定に盛り込むべき内容

36協定で定めなければならないのは、以下の事項です。


  • ①36協定により時間外労働、休日労働させることができる労働者の範囲
  • ②36協定により時間外労働、休日労働させることができる期間(1年間に限られます。)
  • ③36協定により時間外労働、休日労働させることができる事由
  • ④対象期間における1日、1か月、1年のそれぞれの期間について時間外労働をさせることができる時間、休日労働させることができる休日の日数
  • ⑤36協定の有効期間
  • ⑥特別条項を定める場合、特別条項により時間外労働、休日労働をさせることができる事由
  • ⑦特別条項を定める場合、特別条項により時間外労働、休日労働をさせる労働者に対する健康及び福祉を確保するための措置
  • ⑧特別条項を定める場合、特別条項による時間外労働、休日労働に係る割増賃金率
  • 36協定届の提出

    そして、締結した36協定は労基署に届け出る必要があります。

過半数代表者の選出方法

労働者の過半数で組織する労働組合がない場合には、労働者の過半数を代表する者を選出する必要があります。

会社が労働者代表を指名することはできない

現在においても、少なくない会社で、使用者の指名等によって労働者の過半数を代表する者が選出されている状況ですが、これでは労働者の過半数を代表する者が適法に選出されたとは言えません。

過半数代表者の要件

具体的には、労働者の過半数を代表する者とは、事業の種類にかかわらず監督又は管理の地位にある者でなく、かつ、36協定をする者を選出することを明らかにして実施された投票、挙手等の方法による手続により選出された者であり、使用者の意向に基づき選出された者でない必要があります(労働基準法施行規則6条の2)。

管理職と残業代請求-管理監督者とは

働き方改革による「時間外労働の上限規制」

従前、36協定による時間外労働、休日労働については、法律によって上限が定められておらず、現実には恒常的な長時間労働がもたらされ、過労死・過労自殺等の社会問題を引き起こしてきました。

昨今の働き方改革は、上記のとおり時間外労働、休日労働に法定の上限を設け、さらに違反した場合刑事罰をも科すことで、労働時間を制限し、恒常的な長時間労働に歯止めをかけるものです。

36協定の締結後には従業員への周知が必要

36協定は、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、備え付け、書面を交付する等の方法によって、労働者に周知されなければなりません。

36協定が争点となった裁判例

労働者が使用者からの残業命令を拒否した等の理由により普通解雇されたことに対し、労働者が36協定の無効を主張し、この普通解雇を争ったものがあります(最高裁平成13年6月22日判決)。

事件の概要

Y(使用者)は、X(労働者)を含む全従業員により構成されている親睦団体の代表者を「労働者の過半数を代表する者」として36協定を締結し、労基署に届け出ていました。繁忙期において、Yが当該36協定の範囲でXに残業命令を発したところ、Xは診断書をもってその残業命令を拒否しました。残業命令拒否が就業規則の懲戒規定にあたるとし、YはXを普通解雇しました。

裁判所の判断(事件番号

当該親睦団体の代表者は労働者の過半数を代表する者ではないから36協定が有効であるとは認められず、Xが残業命令に従う義務があったということはできないとして、Xに対する解雇は無効であると判断しました。

ポイント・解説

本件の親睦団体は全従業員によって構成されてはいましたが、それのみをもって親睦団体の代表者が労働者の過半数を代表する者に該当するとは判断されていません。原審においては、適法な選出と言えるためには、その事業場の労働者にとって、選出された者が36協定を締結することの可否を判断する機会が与えられ、かつ、その事業場の過半数の労働者がその選出者を支持していると認められる民主的な手続が取られていることとされており、上記の労働基準法施行規則6条の2の要件と同様の判断がされています。

現実には、本判決と同様に、会社の従業員の全員又は一部で構成された団体の代表との間で36協定が締結されているケースも少なくありません。これらの団体の代表者が一律労働者の過半数を代表する者に該当しないというわけではありませんが、適法に労働者の過半数を代表する者を選出するためには、労働基準法施行規則6条の2の要件を満たすかに十分留意する必要があります。

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