監修弁護士 長田 弘樹弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長 弁護士
素因減額とは
素因減額とは、交通事故発が発生する以前から被害者に存在した身体的・心因的な要因(素因)が原因となって損害が発生したり拡大する場合に公平の観点に反するため、過失相殺の考え方にならい素因の程度に応じて損害賠償額に一定割合の減額を認める考え方や取扱いをいいます。
身体的素因により素因減額が認められるのは身体的素因が疾病にあたる場合に限られ、心因的素因により素因減額が認められるのは被害者の心因的素因が個性の多様さとして通常想定される範囲外にある場合に限られると考えられています。
素因減額の減額の程度
身体的素因による減額の程度
素因減額による損害額の減額程度は個別の事案に応じて考慮されるため一律に決まった基準はありません。
ただ、頸椎捻挫の傷害を負った被害者の方に椎間板ヘルニアの既往症が存在していたようなケースでは10%~30%の減額を認めた裁判例が多いようです。
心因的素因による減額の程度
身体的素因と同じく個別の事案に応じて考慮されるため一律に決まった基準はありません。
損害額を4割に減額した最高裁判例もありますが、心因的素因による減額が検討される際には医学的・法律的に複雑な判断が必要となることが多いと考えられますので弁護士に相談されるのがよいと思います。
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
素因減額のよくあるご質問
身体的素因のQ&A
Q. 椎間板ヘルニアが交通事故前に発生したものなのか交通事故により発生したものかどうか分からないのですが、受け取ることができる損害額は減額されてしまうのでしょうか?
A. 詳しい検査の結果、首の椎間板ヘルニアが交通事故によって発生した外傷性のものであることが判明すれば素因減額がされることはありませんし、右腕の痺れを引き起こしている原因であることが判明すればむしろ損害額を増額させる要因となります。
Q. 交通事故より前から椎間板ヘルニアがあったと分かった場合は必ず素因減額されてしまうのですか?
A.交通事故が発生した前から存在した疾病等は身体的素因にあたることもありますが、年齢相応の身体的要因(例えば加齢により発生する椎間板ヘルニア等)は身体的素因とは認められないと考えられます。
あなたの場合は年齢が55歳ですので、椎間板ヘルニアは年齢相応の身体的要因として素因とならない可能性があります。
心因的素因のQ&A
Q. 8ヶ月前に交通事故に会い病院では「頸椎捻挫」と診断され首が痛くて現在も通院を続けていますが、保険会社の人からは私のようなケースでは長くとも6ヶ月程度で治療が終了するはずだと言われました。確かに、私はもともと少し神経質な性格なため痛みを気にしすぎているために治療が長引いている可能性もありますが、私の少し神経質な性格が素因と扱われて損害額が素因減額されてしまうことはあるのでしょうか?
A. 被害者の心因的要因が交通事故による損害を拡大させる場合には心因的素因による素因減額がされる場合があります。
典型的なケースとしては、交通事故に会う前から患っていたうつ病などの影響により極めて軽微な交通事故であるにも関わらず治療期間が異常に長引いたケースなどが考えられます。
しかし、性格や気質などの心理状態は被害者の個性による幅が大きいため、一般的な人と比べて常軌を逸するような場合でなければ心因的素因による素因減額は認められないと考えられます。
あなたのように少し神経質という程度では素因減額されない可能性が高いと思います。
もっとも、主治医の先生が医学的な見地から治療を継続する必要性を認めていることが前提となりますのでこの点には注意して下さい。
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保有資格弁護士(大阪弁護士会所属・登録番号:40084)