労務

団体交渉でやってはいけない対応

大阪法律事務所 所長 弁護士 長田 弘樹

監修弁護士 長田 弘樹弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長 弁護士

  • 団体交渉、労働組合対策

労働組合から団体交渉を申し入れられた場合、会社による対応が不適切だと、労働組合法で禁止されている不当労働行為に当たることがあります。

この記事では、会社が団体交渉でやってはいけない対応について詳しく解説していきます。

目次

団体交渉の対応で会社が注意すべきこととは?

団体交渉の対応で会社が最も注意すべきことは、不当労働行為に該当する行為をしないということです。

不当労働行為救済の申立てを受けた労働委員会が、使用者に不当労働行為が成立すると判定した場合、同委員会により救済命令が下されます(労働組合法27条の12第1項)。救済命令が確定したにもかかわらず、使用者がそれに違反した場合には、50万円以下の過料に処せられます(同法32条後段)。

団体交渉における不当労働行為

会社が正当な理由なく団体交渉を拒否することや、形式上は団体交渉がなされていても、その団体交渉に対して不誠実な態度でのぞむことは、不当労働行為に当たります(労働組合法7条2号)。

団体交渉で会社がやってはいけない対応

上記のとおり、会社は正当な理由なく団体交渉を拒否してはいけません。

また、形式上は団体交渉を行っていても、合意達成の意思がないことを最初から明確にした態度や、労働組合の要求を正当な理由なく拒否する態度、合理性の疑われる回答に論拠なしに固執する態度などで交渉にのぞんではいけません。

もっとも、譲歩して合意する義務があるわけではないため、労働組合と使用者が十分に議論しても合意に達しない場合には、交渉を打ち切っても不当労働行為にはなりません。

団体交渉における会社側の対応が問題となった判例

団体交渉における会社側の対応が問題となった裁判例として、以下のものがあります。

事件の概要

この事件は、X社が、国(Y)の補助参加人である労働組合との、定年後再雇用者の労働条件や賃上げなどを議題とする団体交渉(本件団交)において、代表取締役を出席させず、資料を提示して説明しなかったことが不当労働行為であるとして、労働委員会に救済申立てがなされた事案です。

裁判所の判断(令和2年(行コ)第130号東京高等裁判所令和3年1月28日判決)

裁判所は、本件団交におけるX社の対応は不誠実なものというべきであり、本件団交の出席者に実質的な交渉権限がないこと及び経営資料の不提示について、労働組合法7条2号の不誠実団体交渉に当たると判断して、X社の請求を退けました。

ポイント・解説

本件のポイントは、交渉担当者が実質的な交渉権限を有していたか否かは、形式的な交渉権限の有無だけではなく、実際の団体交渉における具体的な言動を踏まえて、実質的な交渉権限を有する者としての対応を行ったか否かを事柄の実質に即して検討すべきであるとされたことです。

本件団交には営業所長及び代理人弁護士5名が出席していたところ、出席者らは具体的な理由を挙げて会社の判断を説明することなく、具体的な理由や中身に触れることのないまま即答を避ける態度に終始し、会社の判断である旨や説明するつもりがない旨の回答を繰り返したことなどから、実質的な交渉権限を有する者としての対応を行ったものということはできないと判断されました。

団体交渉の対応に関するQ&A

団体交渉の申し入れ時に協議を求められました。その場で応じるべきでしょうか?

その場で応じる必要はありません。会社側にも準備や都合がありますし、別日に協議の場を設ければ、団体交渉を拒否したことにはならないため、日程の変更を求めるのがよいでしょう。

1回目の団体交渉には応じるが、2回目以降は拒否するというような対応は、不当労働行為に該当しますか?

通常、1回の団体交渉で十分な議論がなされたとはいえないため、2回目以降の団体交渉を正当な理由なく拒否することは、不当労働行為に該当する可能性が高いと考えられます。

所定労働時間内に団体交渉をするよう要求されました。団体交渉中の賃金を支払う必要はありますか?

原則として、団体交渉中の賃金を支払う必要はありません。もっとも、所定労働時間内における団体交渉に対して賃金を支払うとの労働協約が締結されている場合は、賃金を支払う必要があります。

団体交渉が平行線で合意に至らない場合、会社側から打ち切ることは可能ですか?

使用者には、組合の要求や主張に対して譲歩をする義務までが課されているわけではありません。そのため、十分な協議を行った後であれば、団体交渉が平行線で合意に至らない場合、会社側から打ち切ることは可能です。

労働組合に加入したことを理由に解雇した場合、不当解雇となるのでしょうか?

不当解雇となります。労働者が労働組合の組合員であることを理由として、使用者がその労働者を解雇することは、不当労働行為として禁止されています(労働組合法7条1号本文)。

団体交渉には応じるが、資料や書類などを一切提示しないとすることは可能ですか?

資料や書類などを一切提示しないことは、不当労働行為に該当する可能性があります。

前述の裁判例でも、組合が経営資料の提出を求めていたのに対し、資料の提出の必要がないと考える理由を具体的に説明することなく、世間水準であるなどと抽象的に述べるのみで資料の提示を一切行わなかった会社の対応が、不誠実なものと判断されました。

団体交渉の場で協議を行わず、全て社内に持ち帰って確認するという行為は、不誠実な交渉とみなされますか?

通常、労働組合が使用者側に提示する団体交渉申入書に交渉事項が記載されているため、初回の団体交渉に向けて、使用者側もある程度準備ができるはずです。そのため、あらかじめ予測できた事項であるにもかかわらず、社内に持ち帰って確認するという対応は、不誠実な交渉に当たると考えられます。

要求事項の内容にもよりますが、団体交渉の場で初めて要求・主張された事項については、一度社内に持ち帰るという対応をしても不誠実な交渉とはならない可能性もあります。

団体交渉の内容を録音・録画することは可能でしょうか?

可能です。ただし、録音・録画をすることについて労働組合側の了承を得ることが望ましいです。

訴訟中の事項について団体交渉を要求された場合、応じる必要はありますか?

訴訟中の事項であっても、団体交渉に応じる必要はあります。

もっとも、訴訟戦略等の観点から、訴訟で主張していること以上の情報を組合側に開示したくない場合もあると考えられます。その場合は、「訴訟で主張しているとおり」と回答しても誠実交渉義務に違反しないと考えられます。

子会社の団体交渉に親会社が参加することは認められますか?

親会社と子会社の関係によりますが、認められる場合があります。

親会社が子会社の労働条件について、基本的な労働条件等について雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的に支配決定することができる地位にある場合には、その事項に関し、親会社も、子会社とともに労働組合法上の「使用者」として、団体交渉義務を負うことになります。

不当解雇について団体交渉の申し入れを受けましたが、既に雇用関係にない場合でも応じる必要はあるのでしょうか?

不当解雇に当たれば、その解雇は無効となるので、現時点でも雇用関係は継続していることになります。そのため、不当解雇についての団体交渉には応じる必要があります。

団体交渉で会社が誤った対応をしないよう、弁護士が最善の方法をアドバイスさせて頂きます。

労働組合は法律上権利を厚く保護されているため、団体交渉において、会社側には慎重な対応が求められます。

弁護士法人ALG&Associatesは企業法務に精通しており、団体交渉の対応について最善の方法をアドバイスすることが可能です。

労働組合から団体交渉を申し入れられた場合には、お気軽に弊所までご相談ください。

関連記事
大阪法律事務所 所長 弁護士 長田 弘樹
監修:弁護士 長田 弘樹弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長
保有資格弁護士(大阪弁護士会所属・登録番号:40084)
大阪弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。
関連記事

来所・zoom相談初回1時間無料

企業側人事労務に関するご相談

  • ※電話相談の場合:1時間10,000円(税込11,000円)
  • ※1時間以降は30分毎に5,000円(税込5,500円)の有料相談になります。
  • ※30分未満の延長でも5,000円(税込5,500円)が発生いたします。
  • ※相談内容によっては有料相談となる場合があります。
  • ※無断キャンセルされた場合、次回の相談料:1時間10,000円(税込み11,000円)

顧問契約をご検討されている方は弁護士法人ALGにお任せください

※会社側・経営者側専門となりますので、労働者側のご相談は受け付けておりません

ご相談受付ダイヤル

0120-406-029

※法律相談は、受付予約後となりますので、直接弁護士にはお繋ぎできません。

メール相談受付

会社側・経営者側専門となりますので、労働者側のご相談は受け付けておりません