団体交渉の進め方

公開日:2020年10月12日
  • 団体交渉、労働組合対策

団体交渉は、進め方を一つ間違えれば、使用者側にとって不利になったり、大きな紛争に発展する恐れがあります。そこで、具体的な団体交渉の進め方についてご案内いたします。

団体交渉の流れと進め方について

団体交渉の申し入れがあった場合の初動対応

団体交渉の申し入れがあった場合には、まず交渉の日時・場所について協議することが必要になります。労働組合からの申し入れの日時・場所等に都合がつかない場合に、その変更を求めることは認められていますので、業務に支障のない日時・場所等を合理的な範囲で決めることになります。
また、実際に参加を希望する人数や、必要となりそうな時間等について確認し、会場の規模やスケジュールを検討する必要があります。申し入れに対して、あまりにも乖離した規模・時間での実施では、誠実な対応をしたとは評し難くなるおそれがあります。

団体交渉の事前準備と予備折衝

後述するように、団体交渉においてはただ単に、交渉の機会を持てばよいというだけでなく、議題に即した準備をし、誠実に対応することが求められます。そのため、実際に団体交渉を行う前に、可能な限り議題や相手方の要望について詳細を把握し、現状の理解に努め、使用者側の認識・考えをまとめておくことが大切になります。
また予め、労使間で折り合いをつけられる点について予備折衝を行いうと、交渉が徒に空転せず有意義なものとなります。

団体交渉に向けて決めておくべき事項

団体交渉の出席者・発言者

使用者側の団体交渉の出席者は、会社や団体の代表者がなることはもちろんですが、団体交渉の議題となっている事項について、事情をよく理解している者・管理決定権限のある者が出席するほうが、交渉が有意義なものとなります。
団体交渉においては、会社の長が出席することが必ずしも望ましいわけではなく、議題に関し、よく理解し・適切な判断・決定を行える者が対応する方が、誠実な交渉になることに注意が必要です。
団体交渉の議題となっている事項について譲歩・妥結権限のない者だけを交渉担当者として出席させた場合には、誠実交渉義務に違反する不当労働行為となります。

団体交渉の場所

団体交渉の場所については、労働組合の申し入れに拘束されるものではありませんので、事業への影響等を考え、事業場外で行うことも可能です。
ただし、合理的な理由なく、遠隔地を提案したり、特定の団体のみ別の場所を指定するなど差別的な取り扱いをすることは許されません。あくまでも。合理的な範囲で、交渉において有利・不利が生じない場所で行う必要があります。

団体交渉の日時

団体交渉の日時についても、必ずしも労働組合の申し入れに拘束されるものではなく、使用者側からの提案をすることが認められています。
ただし、業務の繁忙期であることを理由に団体交渉を拒否することはできませんので、合理的理由を説明したうえで、近接した時期に代替する日時をきちんと示すことが必要です。
なお、顧客対応などへの支障を考え、就業時間後に行うことも可能ですが、就業時間中にも対応可能であるにもかかわらず、就業時間後の開催に固執することは合理的な理由のない交渉拒否とされるおそれもあるため、注意が必要です。また、効率的実施のために、団交時間についても事前にあわせて協議しておくことが望ましいといえます。

団体交渉の費用負担

団体交渉に要する費用についても、実施場所・規模・時間等を決める際に、あわせて協議しておく必要があります。
団体交渉はあくまでも労使が対等な立場で話し合いを行う機会ですので、一方的な負担にならないように配慮することが求められます。

弁護士への依頼の検討

団体交渉を行うにあたって、法的な観点からの助言を行うため、あるいは誠実な団体交渉を実現させるために弁護士へ団体交渉への出席を依頼することを検討することが推奨されます。
弁護士の団体交渉の出席は、交渉の際の使用者側の負担を軽減するだけなく、会社の違法状態を是正し、適法な協議を行えるという意味においては、労働者側にとっても有意義なものといえます。

団体交渉当日の進め方

団体交渉はあくまでも労使間の協議の場ですので、一方的な意見を述べる場ではないことに注意が必要です。現場に詳しい担当者同士が出席すると熱が入りすぎてしまうおそれもあるため、一個人の利益ではなく、労働者全体と会社という組織との調整なのだという意識を忘れずに進めることが大切となります。
そのため、事前に協議した議題について順序立て、時間をある程度区切りながら実施するように心がけましょう。
なお、徒に議論を空転させ、時間がきたので終了といった取り扱いは、誠実な対応とはいえませんので、一方的な進行にならないようにしなければなりません。

団体交渉の協議内容

団体交渉の内容は、使用者が処理できる内容であれば、特段の制限はありません。
ただし、労働条件その他の待遇、団体交渉の運営に関する事項で使用者に処分可能なものについては、義務的団交事項とされ合理的な理由なく団体交渉を拒否した場合には、不当労働行為に該当することになります。

録音や議事録の作成

団体交渉の内容や決まった事項について、記録として残しておくことは重要です。このような記録は将来の交渉や紛争の際に、従前の状況がどのような理由で、どのような交渉に基づいて形成されているのかを労使ともに確認する資料になります。
そのため、団体交渉を行うにあたっては、労使双方の了解のもと、録音を行ったり議事録を作成し、その内容を双方が確認したうえで、同じものを労使それぞれが保管・管理することが望ましいといえます。 なお、合理的な理由なく、合意事項について書面化することを拒否することは、不当労働行為に該当すると考えられているため、注意が必要です。

団体交渉の場で会社がやってはいけないこと

使用者には、労働組合と誠実に交渉する義務があります。そのため、最初から組合の要求に応じない旨を表明する、合理的な根拠のない説明に固執する、必要かつ合理的な範囲の資料を開示しない、といった行為は、誠実交渉義務に違反することになり、許されません。
受け入れがたい内容であったとしても、頭から拒否するのではなく合理的な根拠をもって丁寧に説明することが重要です。

労働組合との団体交渉の終結

労使間で合意に至った場合

団体交渉の終結は多くの場合、議題に対する何らかの合意がなされます。その場合には、上述のとおり、客観的な証拠として合意内容を書面で残しておく方が、紛争の蒸し返しや、合意違反が生じた場合に対応しやすくなります。

団体交渉が決裂した場合

合理的な説明や資料のもと、労使が十分に議論を行ったうえで、結果として合意に至らなかった場合は、団体交渉を打ち切ったとしても誠実交渉義務には違反しません。
その際は、議事録という形式で、議論の内容や合意に至らなかった理由などについて残しておくほうが望ましいといえます。

団体交渉に関する裁判例

事件の概要

使用者は新規採用者についてその初任給を従前の採用者に支給していた額より引き下げることとしました。この引き下げに関して使用者と労組との間で、団体交渉が開催され、使用者側は団体交渉時点で非組合員である新規採用者の初任給額について団体交渉応諾義務を追わないなどの主張をしました。
本件は,使用者が経営状況改善のため新規採用者の初任給を引き下げたことについて労働組合が都労委に救済命令を申し立て,申立てを一部認容する初審命令を得たましたが,使用者から中労委に再審査申立てがあり,初審命令を一部変更する救済命令が発され,使用者,労組双方がそれぞれの不服部分について国(中労委)に対し同命令の取消しを求めた事案です。 主要な争点は、非組合員の労働条件が義務的団交事項にあたるか否かという点です。

裁判所の判断(事件番号・裁判年月日・裁判所・裁判種類)

東京高判平成19年 7月31日判決  事件番号平成19年(行コ)第23号
「労組法7条2号の趣旨に照らすと誠実な団体交渉が義務付けられる対象、すなわち義務的団交事項とは、団体交渉を申し入れた労働者の団体の構成員たる労働者の労働条件その他待遇、当該団体と使用者との間の団体的労使関係の運営に関する事項であって使用者に処分可能なものと解するのが相当である。
そして非組合員である労働者の労働条件に関する問題は当然には上記団交事項にあたるものではないがそれが将来にわたり組合員の労働条件権利等に影響を及ぼす可能性が大きく、組合員の労働条件に関わりが強い事項については、これを団交事項に該当しないとするのでは、組合の団体交渉力を否定する結果になるのであるから、これも団交事項にあたると解するべきである。」と判示されています。
そして、新規採用者のうち、少なくない者が、短期間のうちに労組に加入している事情、会社の賃金決定の仕組みを考えると、本件初任給の引き下げは組合員相互の労働条件に影響が生じるとして義務的団交事項にあたるとされました。

ポイント・解説

本判決は、非組合員の初任給という労働条件が義務的団交事項にあたるかについて正面から争点となった裁判例です。非組合員の労働条件・待遇等については原則として義務的団交事項に当たらないとしたうえで,義務的団交事項の該当性について判断の枠組みを設定し,新規採用者の初任給と組合員の賃金との関係等を将来にわたって検討した上で,義務的団交事項に当たるとしたものです。
義務的団交事項にあたる内容について、誠実に対応しない場合は不当労働行為に該当しますので、注意が必要です。

早期解決には冷静かつ粘り強い交渉が必要

多くの団体交渉においては、議題となっている事項だけでなく、大小様々な問題が潜んでいる場合が多くあります。このような問題解決にあたっては、組合の要求に正面から応えるだけでは足りず、その裏に隠れた小さな事情まで丁寧に解きほぐすことが重要となってきます。
「急がば回れ」というように、労使間の交渉においては、冷静かつ粘り強く、誠実に対応することが早期解決への近道といえます。

団体交渉を有利に進めるためには、専門的な知識が必要となります。まずは弁護士にご相談下さい。

既に述べてきたように、団体交渉においては、ただ組合からの申し入れを受けるだけでは、不十分な点が多くあります。適法な交渉を行うことは当然のこと、より有利により迅速に交渉を進めるためには、専門的な知識を有する弁護士にご相談いただくことが、労使関係を円満に保ち、一体となって会社を成長させていく秘訣といえます。
団体交渉にお困りの際には、ぜひ一度ご相談ください。

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