新型コロナウイルスにおける労働者への対応

公開日:2020年9月9日
  • 新型コロナウイルス

新型コロナウイルスにおける労働者への対応については、これまで前例がないこともあり、各社対応に迷うところが多いと思います。既に厚生労働省等によりガイドラインのようなかたちで望ましい対応策が発表されていますが、具体的にはどのようにすればよいのでしょうか。

新型コロナウイルスにおける労働者への対応

新型コロナウイルスに感染していると労働者から報告を受けた場合、会社としてはどのような対応をすべきでしょうか。会社はその判断や対応が適切でなかった場合、感染拡大を引き起こす可能性があり、ひいては安全配慮義務違反を問われる可能性もあります。具体的に確認していきましょう。

感染の報告があった場合の対応

感染の報告があった場合、すぐに出勤をさせないよう命じることになります。無症状や軽症の場合は自宅や病院、隔離施設で様子を見ることになりますが、基礎疾患がある方は急激に重症化する可能性があるため、近隣で対応可能な病院を確保する必要があります。

労働者本人が感染した場合

従業員が新型コロナウイルスに感染したことが確認された場合、従業員に対し、無症状や軽症であれば自宅や隔離施設等で待機命令を出し、重症化しそうであれば入院できるよう協力すべきでしょう。また、職場では直ちに医師や保健所、新型コロナ受診相談センター等の指示に従い、職場の消毒、濃厚接触者の確認、感染した労働者の過去2週間程度の行動履歴の聞き取りを行います。 なお、当該労働者が新型コロナウイルスに感染したという情報は、要配慮個人情報に該当すると考えられますが、二次感染予防の観点から、会社内や取引先への情報提供をすることが可能であるとされています(個人情報保護委員会事務局 令和2年4月2日「新型コロナウイルス感染症の拡大防止を目的とした個人データの取扱いについて」参照)。

労働者の同居人が感染した場合

労働者の同居人も感染した場合は、労働者自身の健康状態に問題がない場合であっても、濃厚接触者である可能性が高いので、一定期間自宅待機を命じることになります。

新型コロナウイルスの検査について

新型コロナウイルスの検査としては、PCR検査、抗原検査、抗体検査というものがあります。 PCR検査とは、鼻や喉等の細胞を採取し、新型コロナウイルスの遺伝子を増幅させて検出させる検査方法です。 抗原検査は、新型コロナウイルスに感染した細胞から生じる抗原を検知する検査方法です。 抗体検査とは、新型コロナウイルスに感染すると形成されるたんぱく質があるかどうかを調査する検査方法となります。

一部の労働者が感染した場合、全労働者の検査実施は可能か?

厚生労働省によると、令和2年7月7日現在、PCR検査の実施件数は約75万件であり、1日あたりの最大実施能力は約3万件強とされています。現在の感染拡大状況からすると、ある会社の一部の労働者に感染者が出たからといって当該会社の濃厚接触者に検査実施をすることは、検査能力からしても現実的ではありません。 そこで会社としては、感染拡大防止措置の自主的な判断として、自宅待機命令を出すことを検討しなければいけません。

新型コロナウイルス感染者の自宅待機命令

労働者が新型コロナウイルスに感染した場合、会社に出勤させないようにする必要がありますが、会社はどのような権限によって出勤を制限するのでしょうか。

「出勤停止」と「自宅待機命令」の違い

出勤停止は、就業規則で定める懲戒処分のうちの一つなので、懲戒事由に該当する場合に懲戒処分として発動するか否かを検討するものです。 これに対し、自宅待機命令は、雇用契約に基づく業務命令の一つとして行うものであり、新型コロナウイルスに感染した労働者がいる場合に出勤をさせないようにするのは、自宅待機命令に基づいて指示することになります。

労働安全衛生法の「就業禁止の措置」は適用されるのか?

令和2年2月1日付で、新型コロナウイルス感染症が指定感染症として定められたため、労働者が新型コロナウイルスに感染していることが確認された場合は、感染症法に基づき、都道府県知事が、当該労働者に対して就業制限や入院勧告等を行うことができます。 したがって、感染症法に基づく就業制限を行う場合は、労働安全衛生法第68条に基づく就業禁止の措置は適用されません。

新型コロナウイルスで休業する場合の休業補償

会社は、労働者が労務を供給しなかった場合、それに対する賃金を支払う必要はありません。これをノーワーク・ノーペイの原則といいます。これに対し、労働基準法第26条では、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合には、使用者は、休業期間中の労働者に平均賃金の60%以上の休業手当を支払わなければならないとしています。では、新型コロナウイルスに感染した従業員に対し、休業手当を支払う義務があるのでしょうか。

会社は賃金を支払う必要はあるのか?

ノーワーク・ノーペイの原則と、労働基準法第26条の休業手当との境界は、「使用者の責に帰すべき事由による休業」か否か、ということになります。使用者の責に帰すべき事由による休業でなければ、ノーワーク・ノーペイの原則により会社は賃金を支払う義務を免れますが、使用者の責に帰すべき事由による休業であれば、平均賃金の60%以上の休業手当を支払わなければならないことになります。

感染した労働者を休業させる場合

感染した労働者を休業させる場合、当該労働者がどのような経路で感染したか否かで2つのパターンに分かれます。 つまり、業務に従事する過程で感染したということであれば、感染した原因が業務に内在していた可能性があり、「使用者の責に帰すべき事由」にあたるとされる可能性があります。そうすると、会社が従業員を業務命令として休業させる場合には、平均賃金の60%以上の休業手当を支払う必要があるということになります。 これに対し、プライベートで遊びに行っていたときに感染したということであれば、「使用者の責に帰すべき事由」にあたらないので、会社が業務命令として休業させたとしても、ノーワーク・ノーペイの原則により賃金を支払う義務はありません。

感染が疑われる労働者を休業させる場合

感染が疑われる労働者に対しては、必ずしも休業させなければならないわけではなく、あくまで感染している可能性を考慮して予防的に休業させるわけですから、会社の判断による業務命令ということになります。 そうすると、この場合は「使用者の責に帰すべき事由」にあたると考えられますので、平均賃金の60%以上の休業手当を支払わなければいけないということになります。

発熱などの症状がある労働者が自主休業した場合

状況として必ずしも休まないといけないわけではないという点では同じですが、上記と異なり、発熱などの症状があるということで労働者の側から自主的に休業した場合はどう考えればよいでしょうか。  この場合は、会社の業務命令として労働者を休ませたわけではなく、あくまで労働者自身の判断で休業しているわけですから、ノーワーク・ノーペイの原則により会社は賃金を支払わなくてよいということになります。

事業の休止に伴い休業する場合

事業の休止に伴い休業が必要となる場合は、「使用者の責に帰すべき事由」にあたるとされ、休業手当を支払わないといけないことになるでしょうが、経営状況としては相当悪化している場合であると想定されることから、現実的には支払われない恐れがあります。

休業手当や年次有給休暇の対象となる労働者

休業手当や年次有給休暇が付与される労働者は、正規雇用されている労働者に限定されるのでしょうか。

パートタイマー・アルバイト

労働基準法上の労働者であれば、パートタイマーやアルバイトの労働者も休業手当や年次有給休暇付与の対象となります。なお、法定外の休業手当や年次有給休暇付与を就業規則などで規定している場合には、非正規雇用であることのみを理由に一律に対象から除外することは、改正パートタイム・有期雇用労働法の均衡待遇・均等待遇に違反する可能性があります(中小企業は令和3年4月からの施行)。

派遣労働者

労働基準法上の労働者であれば、派遣労働者も休業手当や年次有給休暇付与の対象となります。なお、パートタイマーやアルバイトと同様、法定外の休業手当や年次有給休暇付与を就業規則などで規定している場合には、非正規雇用であることのみを理由に一律に対象から除外することは、改正労働者派遣法の均等待遇・均衡待遇に違反する可能性があります。

外国人労働者

労働基準法上の労働者であれば、外国人労働者も休業手当や年次有給休暇付与の対象となります。

子どもの休園・休校で休んだ労働者の賃金について

子どもの休園・休校で休んだ場合は、「使用者の責に帰すべき事由による休業」ではないので、使用者は休業手当を支払う義務はありません。 ただし、新型コロナウイルスによる休園・休校に対しては、雇用調整助成金や小学校休業等対応助成金により、要件を満たした場合には会社に対して休業補償がされる制度が拡充されていますので、これらの制度の活用を検討すべきでしょう。

新型コロナウイルスの影響による解雇

新型コロナウイルスの感染拡大により、事業活動を大幅に縮小せざるを得ず、結果的にリストラをしなければならない状況になった場合、どのような手続を踏まえて行うべきでしょうか。

整理解雇が認められる要件とは

いわゆるリストラは、整理解雇というものにあたります。整理解雇とは、使用者が経営不振など経営上の理由によりコストカットの必要性から人員削減の手段として行う解雇のことをいいます。整理解雇が認められるためには4つの要素を検討することになります。

1つめの要素が、人員削減の必要性です。人員削減の必要性とは、経営上の理由により人員削減を行う必要性があるかどうかという点です。新型コロナウイルスにより経営悪化が深刻化したということであれば、認められる可能性があります。

2つめの要素は、解雇回避努力です。解雇回避努力とは、解雇という手段を選択する前に、解雇以外の経費削減につながる選択肢を検討し実行したかどうか、ということです。具体的には、残業の削減、役員報酬等の減額、新規採用を控えること、内定取消、余剰人員の配置転換、出向、非正規従業員の雇止め、希望退職者の募集、退職勧奨等があげられます。これらの方法をとったうえで、それでもなお経営悪化に歯止めがかからないという場合に、最終手段として整理解雇を選択したかどうかという点がみられることになります。

3つめの要素は、人選の合理性です。人選の合理性とは、整理解雇の対象となる人選基準を合理的に定め、その基準を公正に適用して被解雇者を選定することです。合理的な基準としては、勤務成績、勤続年数、労働者の属性(扶養家族の有無等)があげられます。

4つめの要素は、手続きの妥当性です。手続きの妥当性とは、労働者に対して、人員整理の必要性や解雇回避の方法、人選の基準等を真摯に説明し、納得を得るために誠意をもって協議したかどうかという点です。

新型コロナウイルス感染者の治癒と職場復帰

令和2年6月12日付厚生労働省通達(健感発0612第1号)によれば、従前に比べて要件が緩和され、以下の基準が示されています。

(1)症状がある場合
 ①発症日から10日間経過し、かつ症状軽快後72時間経過した場合 または
 ②発症日から10日経過以前に症状が軽快した場合に、症状軽快後24時間経過した後にPCR検査で陰性が確認され、1回目の検体採取後24時間以後に再度PCR検査を行って2回連続で陰性が確認できた場合

(2)無症状の場合
 ①発症日から10日間経過した場合 または
 ②発症日から6日間経過した後にPCR検査で陰性が確認され、1回目の検体採取後24時間以後に再度PCR検査を行って2回連続で陰性が確認できた場合

新型コロナウイルス感染防止に向けた働き方の検討

新型コロナウイルスにより、生活様式や働き方が大きく変わりました。 具体的には、テレワークやサテライトオフィスの活用や、時差出勤やフレックスタイム制の導入により、三密を避けることが求められています。また、不要不急の外出を控えるべきとされることから、出張や転勤などの機会も大きく減少しています。さらにはマスク着用や手洗いうがい、検温を義務付け、対面する場合にはアクリル板などで飛沫が拡散しないようにしたり、徹底したアルコール消毒を行うことが新しい常識となっています。

新型コロナウイルスにおける労働者への対応でお困りなら、一度弁護士にご相談ください。

新型コロナウイルスの影響は、業界を問わず大きな影響を及ぼしています。労働者への対応にお困りであれば、ご遠慮なく弁護士法人ALG&Associates大阪法律事務所にご相談ください。

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