監修弁護士 長田 弘樹弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長 弁護士
交通事故に遭った際、怪我の治療や車の修理と並行して、損害賠償に関する話し合いが行われます。
その際に問題となりやすいのが「過失割合」です。この過失割合は、交通事故の賠償金の額を大きく左右するため、当事者間の意見が対立し、交渉が進まない場面も多々あります。
本記事では、過失割合で揉めてしまう理由と揉めやすい事故のパターン、争いがある場合の具体的な対処法について解説します。
目次
交通事故の過失割合で揉める理由とは?
交通事故の過失割合で揉める主な理由としては、①損害賠償の金額に影響すること、②警察が過失割合の判断をしないこと、③事故状況に対する認識の食い違いの3つが挙げられます。
それぞれについて以下では詳細に解説します。
損害賠償の金額に影響するため
交通事故の原因について、被害者側にも過失があった場合、その割合に応じて加害者が支払う賠償額が減額されます。これを「過失相殺」と呼びます。
被害者としては、過失が小さければ受け取ることができる賠償額が多くなりますが、その一方で過失が大きいとなった場合には受け取ることができる賠償額が少なくなります。また、被害者であっても自身の過失に応じた割合の範囲で加害者の損害に対しても賠償する必要もあります。
したがって、過失割合は支払われる賠償額を大きく左右するため、交渉においては過失割合で揉めることになりやすいといえます。
警察は過失割合に関与しないため
交通事故が発生した場合には、通報を受けた警察が現場を捜査しますが、これは主に刑事上や行政上の処分をするために行うものです。過失割合は、損害賠償責任という、民事上の問題であるため、警察の捜査によって民事上の過失割合は明らかになることはありません。
過失割合についての法的な判断を下すのは裁判所です。そのため、法的な判断が下されていない示談交渉の段階では、双方が主張のどちらが正しいかが明確になっていません。
その結果、自らの主張を譲らずに過失割合で揉めてしまい、交渉が行き詰まってしまうことがあります。
事故状況の食い違いがあるため
過失割合は、事故の状況に基づいて決定されるものです。
しかし、交通事故は一瞬の衝撃的な出来事であるため、当事者双方の事故発生時の記憶があいまいになっている場合や、ドライブレコーダーがなく客観的な事故状況が確認できない場合があります。
そのような場合には、過失割合の前提となる事故状況についての当事者双方の主張が食い違います。前提となる事実認識が異なるため、双方の主張する過失割合にも乖離が生じてしまいます。
その結果、過失割合で揉めてしまい、交渉が行き詰まってしまうことがあります。
過失割合について揉めやすい4つのパターン
①交通事故に関する証拠が不足している
過失割合は事故の状況に基づいて決定されるため、事故の状況を立証する証拠が重要となります。
特に、事故の瞬間を記録したドライブレコーダーや、防犯カメラの映像は非常に有力な証拠となります。
他にも、警察の実況見分調書、交通事故証明書、事故直後の事故現場や車両の写真、目撃者の証言も証拠となりえますが、客観的・直接的な証拠が少ないほど事実に対する裏付けが乏しく、過失割合で揉めやすい傾向があります。
手元に証拠が無い場合の対処法
自分の手元に事故当時の状況を立証できる証拠がない場合には、相手方保険会社、警察、場合によっては事故現場付近の関係者が何らかの証拠を保有していないかを確認し、開示を求めることが考えられます。
自身の手元に証拠がないとしても、相手方の保険会社が証拠を持っている場合には、話し合いを進めるために開示に応じる可能性があるため、諦めずに問い合わせるなど確認することが大切です。
②損害賠償額が大きい
損害賠償額が大きくなるほど、過失割合が1割変わるだけでも減額される金額は大きく変動します。例えば、損害額が10万円であれば1割の違いは1万円ですが、損害額が1000万円であれば100万円もの差になります。
したがって、賠償額が大きければ大きいほど過失割合によって左右される金額も多額になるため、過失割合を少しでも自分に有利にしたいという心理が強く働きます。
その結果、双方が過失割合についての主張を譲らなくなり、交渉で揉めやすくなります。
損害賠償額が大きい場合の対処法
相手方が自己に有利な賠償額を主張するために、根拠の乏しい過失割合を主張するケースがあります。
相手方の過失割合の主張に根拠が伴っているかを具体的に確認することが重要です。
もっとも、その主張や根拠が法的に適切かどうかを法律的な知識がない状態で判断するのは困難です。そのため、法律の専門家である弁護士に相談し、相手方の主張が妥当であるかを確認することが適切な対処法となります。
③どちらが悪いか判断がしにくい
追突事故のように加害者の過失が大きいことが明白な事故もあれば、出会い頭の事故など、双方に同程度の過失があったとされやすい事故もあります。
こうした事故類型では、当事者双方のどちらの過失が大きいのか判断が難しく、揉めやすい状況に陥ります。
判断がしにくい場合の対処法
過失割合の判断が難しい事故では、事故当時の細かい状況を精査し、有利な事情を一つひとつ積み上げて適切に主張する必要があります。
これには法的な知識と専門的な分析が不可欠なため、弁護士に相談し、有利な主張を構成できないか検討してもらうことが有効な対処法です。
④駐車場内での事故
駐車場内では公道のような明確な交通規制が妥当せず、車や歩行者の動きも不規則な公道とは異なった特異な環境です。そのため、駐車場における事故においては、一般的な公道における過失割合の考え方が直接該当するわけではありません。
駐車場の事故では、特に事故の状況を精査し、それに応じた法的な分析が必要となります。
したがって、駐車場内での事故は過失割合の判断が難しく、揉めやすいといえます。
駐車場内の事故の対処法
駐車場内の事故であっても、過去の裁判例は多数存在し、それらが過失割合を判断する上での参考になります。自身の事故と類似した裁判例などを参考に、適切な主張に基づいて相手方と交渉することが重要です。
もっとも、適切な裁判例を見つけ出し、その内容を基に有効な主張を組み立てるには専門知識を要するため、この場合も弁護士に相談することが有効な対処法となります。
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
交通事故の過失割合で揉めた場合はどうする?
保険会社と交渉する
相手方が任意保険に加入している場合、通常は相手方の保険会社担当者と示談交渉を行います。保険会社としても、自身の契約者に有利な過失割合を提示してくることが少なくありません。
提示された割合に納得できない場合には、その根拠を確認し、安易に同意せずに自らの主張をしっかりと伝える必要があります。
交渉次第では、保険会社も示談を成立させるために、過失割合について譲歩を引き出せることもあります。
ADRを利用する
ADR(裁判外紛争処理機関)は中立・公正な第三者のもとで話し合いによる解決を目指す手続きです。交通事故に関する代表的ADRとしては、「交通事故紛争処理センター」や「日弁連交通事故相談センター」などが挙げられます。
当事者間の交渉が行き詰まってしまった場合でも、専門的な知見を持つADRを利用することで解決に至る場合もあります。
裁判で解決する
示談交渉やADRでも合意に至らない場合、最終的な解決手段として裁判(訴訟)が考えられます。裁判では、証拠に基づいて事実が認定され、法律に基づいて判断が下されます。
判決には法的な強制力があるため、争いがある紛争を終局的に解決することができます。
自身に有利な判決を得るためには、法律の専門家である弁護士に依頼し、証拠に基づいて法的に適切な主張を行うことが重要となります。
弁護士に相談・依頼する
過失割合で揉めた場合、最も有効な対処法の一つが弁護士に相談・依頼することです。
弁護士であれば、法律の専門知識や過去の裁判例に基づいて、適切な過失割合を主張することができます。弁護士に依頼することで、裁判、ADR、交渉といった手続きを自身で行うことに伴う精神的・時間的な負担の軽減にもつながります。
自身の保険に弁護士特約が付いている場合には、弁護士費用を保険で賄うことができる場合もあるため、ご自身の保険の内容を一度ご確認ください。
交通事故の過失割合について揉めた場合は、お早めに弁護士にご相談ください
交通事故の過失割合によって大きく賠償額は変動するため、交渉では揉めることも少なくありません。
そして、このような場合には、専門的な知識がなければ適切に対応することが難しい場面も多々あります。交渉の相手方がたとえ保険会社の担当者であっても提示される過失割合が必ずしも適切とは限りません。
もし提示された過失割合に少しでも疑問を抱いたり、揉めてしまって交渉が行き詰まったりした場合は、お早めに弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士という専門家の力を借りることで、自身の権利を守り、納得のいく解決を目指すことができます。

-
保有資格弁護士(大阪弁護士会所属・登録番号:40084)
