監修弁護士 長田 弘樹弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長 弁護士
交通事故の被害に遭ってしまった場合、被害者は必ずしも損害額全額を請求できるわけではありません。
これは被害者側にも交通事故の発生につながる過失があった場合には、加害者と被害者の過失の割合に応じて賠償額が減額されるという過失相殺があるためです。
被害者側の過失が大きい場合には6対4の過失割合とされてしまい、大幅な減額を余儀なくされることもあります。
本稿では、6対4の過失割合となる交通事故のケースを紹介した上で、このようなケースに該当してしまった場合の対処法について解説します。
目次
交通事故の過失割合6対4の慰謝料について
加害者 | 被害者 | |
---|---|---|
過失割合 | 6 | 4 |
損害額 | 1,000万円 | 2,500万円 |
請求金額 | 1000万円×40% =400万円 |
2500万円×60% =1500万円 |
実際にもらえる金額 | 400万円ー1500万円 =-1100万円 |
1500万円-400万円 =1100万円 |
最初に過失割合が6対4となってしまった場合、被害者が加害者から実際にいくら賠償金を受け取ることができるか表のケースを用いて説明していきます。
事故に遭った場合に、実際に請求できる金額は自己が被った損害から自らの過失割合に応じて減額された部分となります。
上記ケースの場合、加害者は過失割合6割を減じて残った4割の400万円、被害者は過失割合4割を減じて残った6割の1500万円をそれぞれ相手に請求することができます。
そして、加害者と被害者はお互いに損害賠償を請求することができますので、被害者が実際にもらえる金額は加害者の請求金額を引いた金額となります。
したがって、上記ケースの場合、被害者が実際にもらえる金額は加害者の請求金額400万円を引いた1100万円となります。
過失割合が6対4になるケース
過失割合が6対4になるケースは、被害者側の過失が比較的に大きい交通事故となります。
以下では、自動車同士の事故、自動車とバイクの事故、自動車と自転車の事故、自動車と歩行者の事故、自転車と歩行者の事故における類型ごとの6対4の過失割合が基本となるケースを紹介します。
自動車同士の事故
四輪車同士の事故で6対4が基本的な過失割合となるのは以下のケースです。
信号機のある交差点の事故
(判タ109)
割合:4(A):6(B)
備考:AとBが黄信号で交差点内に進入して図のように衝突した場合
信号機のない、同幅員の交差点の事故
(判タ101)
割合:①4(A):6(B)②6(A):4(B)
備考:A、Bが同程度の速度で図のように衝突した場合は①、Bのみが減速していた場合は②
(判タ115)
割合:4(A):6(B)
(判タ130)
割合:6(A):4(B)
信号機のない、一方の道路が明らかに広い交差点の事故
(判タ103)
割合:4(A):6(B)
備考:Bのみが減速して図のように衝突した場合
(判タ118)
割合:6(A):4(B)
備考:A(直進・狭路)B(右折・広路)
信号機のない、一方の道路に一時停止規制のある交差点の事故
(判タ104)
割合:4(A):6(B)
備考:Bが一時停止後進入をし、Aと図のように衝突した場合
(判タ122)
割合:6(A):4(B)
先行車と後続車の事故
(判タ138)
割合:4(A):6(B)
備考:左折車があらかじめ左端によって左折できない交差点で、AとBが図のように衝突した場合
(判タ138)
割合:4(A):6(B)
備考:右折車があらかじめ中央によって右折できない交差点で、AとBが図のように衝突した場合
その他の事故
(判タ143)
割合:4(A):6(B)
備考:信号機のない同幅員の丁字路交差点で、AとBが図のように衝突した場合
自動車とバイクの事故
四輪車と単車(バイクや原付)の事故で6対4が基本的な過失割合となるのは以下のケースです。
信号機のある交差点の事故
(判タ164)
割合:4(単車):6(四輪車)
備考:単車と四輪車が赤信号で交差点に進入し、衝突した場合
(判タ176)
割合:7(単車):3(四輪車)
備考:単車と四輪車が青信号で交差点内に進入し、図のように衝突した場合
(判タ181)
割合:4(単車):6(四輪車)
備考:単車と四輪車が赤信号で交差点内に進入し、図のように衝突した場合
(判タ182)
割合:4(単車):6(四輪車)
備考:単車と四輪車が赤信号で交差点内に進入し、図のように衝突した場合
信号機のない、同幅員の交差点の事故
(判タ166)
割合:6(単車):4(四輪車)
備考:四輪車のみが減速して図のように衝突した場合
(判タ190)
割合:7(単車):3(四輪車)
(判タ194)
割合:6(単車):4(四輪車)
信号機のない、一方の道路が明らかに広い交差点の事故
(判タ168)
割合:6(単車):4(四輪車)
備考:単車・四輪車ともに同程度の速度
(判タ196)
割合:65(単車):35(四輪車)
(判タ200)
割合:4(単車):6(四輪車)
(判タ199)
割合:4(単車):6(四輪車)
信号機のない、一方が優先道路の交差点の事故
(判タ210)
割合:6(単車):4(四輪車)
先行車と後続車の事故
(判タ215)
割合:6(単車):4(四輪車)
(判タ226)
割合:6(単車):4(四輪車)
その他の事故
(判タ232)
割合:6(単車):4(四輪車)
自動車と自転車の事故
四輪車と自転車の事故で6対4が基本的な過失割合となるのは以下のケースです。
信号機のある交差点の事故
(判タ251)
割合:4(自転車):6(四輪車)
備考:四輪車が青信号で交差点内に進入し、黄信号になった後自転車と四輪車が図のように衝突した場合
(判タ254)
割合:4(自転車):6(四輪車)
備考:自転車と四輪車が黄信号で交差点内に進入し、図のように衝突した場合
(判タ257)
割合:7(自転車):3(四輪車)
備考:四輪車が青信号で交差点内に進入し、赤信号となった後に自転車と四輪車が図のように衝突した場合
(判タ258)
割合:5(自転車):5(四輪車)
備考:四輪車が黄信号で交差点内に進入し、赤信号になった後四輪車と自転車が図のように衝突した場合
信号機のない、同幅員の交差点の事故
(判タ261)
割合:4(自転車):6(四輪車)
備考:Pが本来の右折方法ですが、他の右折方法でも上記割合が適用されます。
信号機のない、一方の道路に一時停止規制のある交差点の事故
(判タ244)
割合:4(自転車):6(四輪車)
(判タ282)
割合:45(自転車):55(自動車)
(判タ279)
割合:4(自転車):6(四輪車)
(判タ278)
割合:35(自転車):65(四輪車)
信号機のない、一方が優先道路の交差点の事故
(判タ246)
割合:5(自転車):5(四輪車)
(判タ284)
割合:5(自転車):5(四輪車)
(判タ286)
割合:5(自転車):5(四輪車)
(判タ288)
割合:4(自転車):6(四輪車)
その他の事故
(判タ300)
割合:4(自転車):6(四輪車)
自動車と歩行者の事故
四輪車と歩行者の事故で6対4が基本的な過失割合となるのは以下のケースです。
(判タ11)
割合:4(歩行者):6(四輪車)
備考:横断歩道の途中に安全地帯、信号機のある交差点で、歩行者が黄信号で横断を開始し、その後安全地帯付近で赤信号になった後も横断を続け、青信号で直進した四輪車と衝突した場合
(判タ25)
割合:4(歩行者):6(四輪車)
備考:歩行者が黄信号で横断歩道外を横断し、四輪車が青信号で右左折して衝突した場合
自転車と歩行者の事故
自転車と歩行者の事故で6対4が基本的な過失割合となるのは以下のケースです。
(判タ54)
割合:4(歩行者):6(自転車)
備考:歩行者が赤信号で横断歩道上を横断し、自転車が黄信号で直進して衝突した場合
(判タ62)
割合:6(歩行者):4(自転車)
備考:歩行者が赤信号で横断歩道上を横断し、自転車が青信号で右左折して衝突した場合
(判タ72)
割合:6(歩行者):4(自転車)
備考:歩行者が赤信号で横断歩道外を横断し、自転車が黄信号で直進して衝突した場合
(判タ81)
割合:6(歩行者):4(自転車)
備考:歩行者が赤信号で横断歩道手前での横断を開始し、自転車が黄信号で直進して衝突した場合
交通事故の被害者に過失があった場合、自己負担を少しでも減らすには?
被害者に過失があった場合でも、人身傷害保険によって自己負担を減らせる可能性があります。なぜなら、人身傷害保険は過失相殺で減額された部分に優先的に充当されるためです。
例えば、損害額が1000万円、被害者に4割の過失がある場合には本来被害者が受け取れる金額は4割を減じた600万円となります。ところが、人身傷害保険から400万円が支払われた場合は、保険金は減額分の400万円の枠に充てられ、減額後の600万円も相手方に請求できます。
もっとも、保険会社がこの請求に応じてくれることは極めて少なく、大半の場合、人身傷害保険を利用しつつ、相手方保険会社からも満額の支払いを受けるには訴訟の必要があります
訴訟を回避しつつ、自己負担を少しでも減らすには相手(加害者側)に正しい過失割合に納得してもらった上で支払いに応じてもらう必要があります。
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
相手(加害者側)が過失割合に納得しない場合の対処法
相手(加害者側)が過失割合に納得しない場合には、主張や説得の方法を変える必要があります。
考えられる方法としては、まずは弁護士を入れて交渉を行うことでしょう。
法律の専門家である弁護士による資料収集や既存資料の精査を経た過失割合の主張を行うことによって、こちらが主張する過失割合に相手方が納得することもあります。
また、過去の類似の事故に関して裁判所の判断が示された裁判例を用いることによって、相手方が過失割合に納得してくれる場合もあります。
過失割合6対4から修正することに成功した解決事例
弁護士法人ALGでも加害者側から過失割合6対4を主張されていたところ、弁護士が介入することによって、被害者に有利な過失割合への修正に成功した解決事例が多数存在します。
その中から今回は以下の2つの解決事例を紹介します。
参考資料が足りない中、弁護士の介入によって過失割合の修正に成功した事例
本事故は、被害者が自転車を運転して交差点に差し掛かったところ、交差道路の左側から時速50~60kmで直進してきた相手方車両に跳ね飛ばされた事故でした。
過失割合については、当初相手方は、4(被害者):6(相手方)の過失割合を主張していました。
弁護士が介入したときには既に刑事事件記録の保管期間が過ぎていたため取得不能であり、新たな資料の収集が難しい状況でした。
このような困難な状況の中で、弁護士が既存の資料を精査して最適な主張を組み立てたところ、過失割合を、2(被害者):8(相手方)に修正することに成功しました。
過去の判例を用いて過失割合等をより有利に修正できた事例
本事故は、歩車道の区別のない道路の右側を歩いていた被害者と、正面から来た四輪車が衝突した事故です。
当初保険会社は、被害者自身が有していた素因によって損害が拡大したとして、過失相殺に加えて素因減額も併せて主張しており、損害額から4割の減額を主張していました。
しかし、弁護士が類似裁判例等を踏まえて、裁判上素因減額がなされる事案ではないことを主張し、相手方保険会社に3割の減額にとどまると説得することに成功しました。
その結果として、3(被害者):7(加害者)という被害者に有利な過失割合等に修正することに成功しました。
過失割合が6対4でも弁護士費用特約を使うことができます!まずは弁護士にご相談ください!
たとえ相手方から過失割合は6対4と主張されていたとしても、弁護士に相談・依頼することによって過失割合を被害者側に有利に修正できることもあります。
そして、過失割合が6対4の場合であっても、弁護士費用特約を使える場合には、負担なく弁護士に依頼できることもあります。
弁護士法人ALGには数多くの交通事故の過失割合修正に成功してきた実績があります。
過失割合でお悩みの方は、まずは弁護士にご相談ください。
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保有資格弁護士(大阪弁護士会所属・登録番号:40084)