監修弁護士 長田 弘樹弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長 弁護士
相続が発生した場合に、父親は同じだが母親が異なる兄弟姉妹(以下「異母兄弟と言います。」)がいると、その異母兄弟との関係性がしばしば問題となります。
そもそも異母兄弟に相続権はあるのだろうか、相続権があるとして相続割合はどのくらいか、異母兄弟との話し合いをどうすればよいのか、など異母兄弟に関して様々な疑問がおありかと思います。
この記事では、異母兄弟に関する疑問について弁護士が解説いたします。
異母兄弟ができるケース
父親が前に結婚していた時の子がいる
父親が離婚後に再婚した場合、前妻との間に生まれた子と再婚後の子は、母親は異なるものの父親が共通しています。このような関係にある兄弟姉妹は異母兄弟にあたり、法律上は兄弟姉妹として扱われます。
父親が認知した子(婚外子)がいる
「認知」とは、婚外子(法律上婚姻していない男女の間に生まれた子)に対して父または母が法律上の親子関係を成立させる手続きをいいます(民法779条以下)。
父親が婚姻関係にない女性との間に生まれた子を認知した場合、その子は法律上、父親の子としての地位を取得します。
そのため、父親が婚姻中にもうけた子や再婚後の子がいる場合には、認知された子とこれらの子との間で異母兄弟の関係が成立します。
異母兄弟にも相続権はあるのか?
異母兄弟であっても、法律上の兄弟姉妹に該当するため、一定の場合には相続権を有します。
例えば、被相続人に子どもや孫などの直系卑属がおらず、両親や祖父母などの直系尊属もすでに亡くなっている場合には、兄弟姉妹が相続人となり、異母兄弟もその対象に含まれます。もっとも、異母兄弟の法定相続分は、父母の双方が同じ兄弟姉妹の法定相続分の2分の1と定められています(民法900条4号但書)。
異母兄弟とこれまでに一度も会ったことがないといった事情がある場合でも、異母兄弟の相続権が失われることはありません。そのため、異母兄弟の存在が確認された場合には、他の相続人と同様に適切な対応を行うことが重要です。
異母兄弟の相続順位
異母兄弟であるからといって、他の兄弟姉妹より相続順位が低くなるわけではありません。
相続では、まず子どもや孫などの直系卑属が第1順位、父母や祖父母などの直系尊属が第2順位となり、兄弟姉妹は第3順位の相続人とされています(民法887条、889条)。
そのため、被相続人に子どもや直系尊属がいない場合には、異母兄弟も他の兄弟姉妹と同様に相続人となります。また、交流の有無や同居の有無は相続順位に影響せず、法律上の兄弟姉妹であれば相続権が認められます。
異母兄弟が相続人になる場合の相続割合
父親が亡くなった場合
父親が亡くなり、その子どもが相続人となる場合には、異母兄弟であることを理由に相続割合が変わることはありません。父親から見ると、どの子も自分の実子であるからです。
前妻との間の子、後妻との間の子、認知された子など、法律上の親子関係が認められている子であれば、みな同じ割合で相続することになります。
父親の配偶者が存命である場合には、現在の配偶者にも相続権が認められ、その残りを子ら全員で均等に分けることになります。
兄弟姉妹が亡くなった場合
異母兄弟が相続人となるのは、被相続人に子どもや父母などの先順位の相続人がいない場合です。この場合、異母兄弟も兄弟姉妹として相続権を取得します。
ただし、異母兄弟の法定相続分は、父母の双方が同じ兄弟姉妹の法定相続分の2分の1となります(民法900条4号但書)。
例えば、あなたと父母の双方を同じくする兄弟が亡くなり、相続人があなたと、あなたの異母兄弟1人のみである場合には、あなたと異母兄弟の法定相続分の割合は2:1となります。
異母兄弟の母親が亡くなった場合
異母兄弟の母親が亡くなった場合、その相続人となるのは原則として亡くなった母親の子どもたちです。異母兄弟の母親との親子関係がない者は相続人にはなりません。
例えば、あなたと父親のみ同じくする異母兄弟の母親(あなたと親子関係はない)が亡くなった場合、異母兄弟は相続人になり得ますが、あなたは原則として相続人になりません。
このように、相続権の有無は、異母兄弟という関係ではなく、亡くなった方との法律上の親子関係があるかどうかによって判断されます。
相続で異母兄弟と遺産分割協議を進める流れ
①異母兄弟を探す
異母兄弟の有無を確認するためには、被相続人の戸籍を出生時までさかのぼって収集する必要があります。
まず、被相続人の死亡が記載された戸籍謄本を取得します。その後、その戸籍に記載された従前戸籍や改製原戸籍を順次たどり、出生時の戸籍まで収集していきます。
この調査によって、前妻の子や認知された子の存在が判明することがあります。
異母兄弟が確認できた場合には、その人の現在の戸籍や戸籍の附票を取得し、住所などを調査します。
②異母兄弟と連絡をとる
異母兄弟の存在が判明した場合は、住所を確認したうえで、手紙などの書面で連絡を取る方法が一般的です。突然の電話や訪問は相手に警戒心を与えるおそれがあります。
また、相続人の中には、初めて異母兄弟の存在を知る方や、長年交流がない方も少なくありません。そのため、感情的な対立を避けるためにも、冷静かつ誠実な対応を心掛ける必要があります。
連絡が取れない場合や話し合いが進まない場合には、弁護士を通じて連絡を行ったり、家庭裁判所の手続を利用したりすることも検討されます。
③遺産分割協議をする
異母兄弟の存在が判明した場合は、その人を含めた相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。相続人が一人でも欠けた状態で行われた遺産分割協議は、原則として有効なものとは認められません。
遺産分割協議においては、相続財産の内容を明らかにしたうえで、誰がどの財産を取得するのかについて話し合いを進めます。
協議がまとまった場合には、遺産分割協議書を作成し、相続人全員が署名押印します。なお、協議がまとまらない場合には、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることになります。
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異母兄弟に相続させない方法はある?
遺言書を作成する
異母兄弟に相続させない方法として、生前に遺言書を作成しておくことが考えられます。
遺言書によって特定の人へ財産を相続させる意思を明確にしておけば、法定相続とは異なる形で遺産を承継させることができます。
もっとも、遺言書の内容に不備があると無効となるおそれもあるため、法的に有効な形式で作成することが重要です。
確実に意思を実現したい場合は、公正証書遺言の活用をご検討ください。
異母兄弟から遺留分を主張されることがある
被相続人の死後、異母兄弟に相続させない旨の遺言が発見された場合に、異母兄弟から遺留分を主張されることがあります。
被相続人が父親である場合には、異母兄弟も父親の子として法定相続人に当たり、遺留分を請求する権利が認められています。
これに対して、兄弟には遺留分を請求する権利が認められていません(民法1042条1項)。
そのため、被相続人が兄弟である場合には、異母兄弟による遺留分の主張が認められることはありません。
異母兄弟に相続放棄してもらう
異母兄弟が相続人となる場合でも、本人の意思によって相続放棄をすることは可能です。
相続放棄が認められると、その人は初めから相続人ではなかったものと扱われるため、遺産分割協議に参加する必要もなくなります。
もっとも、相続放棄は他の相続人が一方的に要求できるものではなく、異母兄弟本人が家庭裁判所で所定の手続を行わなければなりません(民法938条)。
なお、異母兄弟が相続放棄を希望する場合には、原則として自己のために相続の開始を知った時から3か月以内に手続を行う必要があります(民法915条1項)。
異母兄弟と相続トラブルが起きたときの対処法
遺産分割調停を申し立てる
異母兄弟との間で遺産の分割について意見が対立し、話し合いによる解決が難しい場合には、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることができます。遺産分割調停では、裁判官と調停委員が中立の立場で当事者の意見を聞きながら、合意による解決を目指します。
異母兄弟とはこれまで面識がなかったり、交流がなかったりする場合が多く、当事者間での協議が行き詰まることは少なくありません。
そこで遺産分割調停を申し立てることは非常に有意義です。
なお、調停で合意に至らない場合には、遺産分割審判へ移行し、最終的に家庭裁判所が遺産の分割方法を判断します。
弁護士に相談する
相続に際して異母兄弟の存在が発覚した場合には、早期に弁護士に相談されることをおすすめします。
弁護士に依頼すれば、戸籍調査や相続人の確定、異母兄弟との交渉、遺産分割協議書の作成などを適切に進めることができます。
また、話し合いがまとまらない場合には、遺産分割調停や審判の手続にも対応可能です。感情的な対立があるケースでも、弁護士が間に入ることで円滑な解決につながることが期待できます。
異母兄弟との相続トラブルでお困りの場合は、経験豊富な弁護士にご相談ください
異母兄弟が関わる相続では、面識のない異母兄弟との連絡や遺産分割協議への対応、相続分をめぐる意見の対立など、通常の相続よりも複雑な問題が生じることがあります。
そのような場合には、早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士法人ALG&Associatesには相続事件の経験が豊富な弁護士が多数在籍しております。
異母兄弟との相続トラブルでお困りの場合には私たちにご相談ください。

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保有資格弁護士(大阪弁護士会所属・登録番号:40084)
