労務

申し立てがあった場合の会社側の対応のポイント

大阪法律事務所 所長 弁護士 長田 弘樹

監修弁護士 長田 弘樹弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長 弁護士

  • 労働審判

事業活動の中で、労使紛争に巻き込まれることは避けがたいリスクです。

労使紛争の解決手段として、行政による手続や裁判所による手続が各種用意されていますが、本稿では、裁判所による手続のうち【労働審判】について、会社側の対応を中心に説明します。

労働審判のポイント

労働審判の大まかな流れ

  1. 労働者からの申立て
  2. 裁判所による期日指定・当事者の呼出し通知
  3. 使用者から答弁書等の提出
  4. 労働審判手続期日
  5. 手続の終了(調停成立/審判確定/訴訟移行)

労働審判を申し立てられた会社はどう対応すべきか?

申立て~期日前のポイント

第1回期日は、申立から40日以内に指定され、答弁書はその前に提出しなければなりません。
相手方となった会社側の準備期間は、非常に短いです。

一方で、労働審判手続は、3回以内の期日で審理を終結しなければならないとされており、主張・証拠の提出は第2回期日までにしなければならないと定められています。審判委員会は、申立書、答弁書、証拠から得た情報で一定の心証を形成し、それに基づいて第1回期日の審理を進めます。

会社側が有利に手続を進めるためには、裁判所の心証を第1回期日までに引き寄せることが重要です。
答弁書と証拠を充実させて審判委員会へ期日の前にアピールするとともに、期日当日の対応を想定して必要な準備をしましょう。

答弁書は期限間近に提出すると不利になる?

審判委員会は、3回以内の期日で審判を出せるようにしなければならないため、訴訟と比べて、その心証形成は早くに行われます。

審判委員会が手続の方針を決めて進行を指揮するため、使用者側に有利な内容で手続を進行させるように、できるだけ早くに答弁書を提出したほうがよいでしょう。

労働審判期日のポイント

事実関係を説明できる者を同行させる

第1回期日では、当事者の主張書面と証拠に基づき、争点整理が行われます。

審判委員会は、争点整理の結果を踏まえ、労働者と使用者の双方に対し、事実関係について質問をします。

実務上、審判委員会は第1回期日における事実認定を前提に、その後の進行を方針を決める傾向にあるので、労働者側の言い分に沿った進行をさせないためにも、会社側で事実関係を説明できる者を同行させる必要があります。

審判員からの質問には端的に回答する

手続中の発言は、基本的には事実認定の基礎となり、いわば証拠と同じ役割を果たします。

質問されたことに関連して、回答等は別に、これまでの主張と矛盾したり、不利な発言をしてしまったりする場面がよくみられます。発言は不利にも有利にも働きうるので、審判委員会からの質問に対しては、端的に回答し、余計なことを言わないようにしましょう。

調停成立時のポイント

和解の落としどころを見極める

審判委員会は、争点整理及び事実認定に基づいて、調停成立に向けた調整を行います。

当事者を交互に審判委員会が呼出し、現時点での心証(事実や法的争点の見込み、審判を出すとすればどのような内容になるか等)を開示しながら、それぞれに対して和解勧試します。

会社側としては、審判委員会の心証を踏まえ、早期解決するために何らかの譲歩案を提示するか、又その内容を検討し、審判委員会に伝えます。労働者側も同じく、審判委員会の心証を踏まえての譲歩案を提示します。これを繰り返し、和解の落としどころを見極めることになります。

調停条項には「守秘義務条項」を入れておく

調停成立させる場合は、労働者に対し、紛争に関する事実や調停の内容について、必ず守秘義務を負わせるようにしましょう。

労使間の紛争やその合意内容を第三者に発信されることで、会社のイメージダウンや、他の労働者へ影響が及ぶおそれがあるからです。

調停条項には、必ず口外禁止条項を入れてください。

審判確定時のポイント

異議申立ては2週間以内に行う

調停が不成立となると、審判委員会は審判を出します。

審判の内容に不服がある場合は、2週間以内に異議申し立てを行う必要があります。

なお、異議申し立てを行うと、手続は訴訟に移行します。

労働審判でやってはいけない対応とは?

労働審判の呼出しを無視する

期日の呼び出しを無視すると、手続は、労働者の言い分のみに基づいて進行してしまいます。

上述のとおり、審判手続は、調停成立か審判によって終了します。手続に会社側が対応しないとしても、審判が出てしまい、その内容に不服があれば訴訟に挑まなければならなくなります。

労働者の申立てに理由がないと思ったとしても、必ず手続には対応してください。

法律や証拠に基づかない主張を行う

審判委員会は、証拠に基づき、主張の採否を判断します。事実の評価も法律に沿って行われます。

法的に無関係な事実を述べたり、証拠に基づかない主張を行ったりしても、審判委員会は考慮してくれません。

円滑に手続を進めるためにも、法律や証拠に基づいて主張を組み立てて、労働者側の主張に的確に反論していく必要があります。

声を荒げたり、侮辱するような発言をする

手続における発言は、審判委員会の事実認定の基礎となったり、心証形成に影響を与えたりします。

声を荒げたり、暴言等を述べたりしても、法的な主張として取り扱ってもらえないどころか、審判委員会に会社側に不利な心証を抱かせかねません。

審判期日の場でこそ、落ち着いて丁寧に対応すべきです。

労働審判委員会の進行に従わない

審判委員会は期日の進行に関して方針を定め、当事者双方に事前準備や検討事項を指示します。

審判委員会が当事者の主張の当否を判断するために必要であると考えている内容なので、審判委員会の進行に従わないでいると、会社の主張に関して判断材料が不足してしまい、審判委員会が不利な判断を下す可能性があります。

会社側としては、審判委員会へアピールするチャンスと考えて、審判委員会の進行に沿って適切に準備しましょう。

会社が労働審判で虚偽の陳述をした場合はどうなる?

虚偽の陳述自体に罰則等はありませんが、事実や主張に矛盾が生じると、その他の陳述の信用性が損なわれかねません。

虚偽の陳述をした結果、会社にとって有利な事実も認定されないとなっては元も子もないため、事実に沿って陳述等をすることが望ましいです。

労働審判の有利な解決を目指すには会社側の対応が重要です。労働審判の対応でお悩みなら弁護士にご相談下さい。

労働審判は、申し立てられた会社側にとっては、非常にタイトなスケジュールで進む手続です。
短期間で準備を行うためには、法的知識と手続に関する実務経験が欠かせません。

労働審判を申し立てられた際には、すぐに弊所までご相談ください。

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大阪法律事務所 所長 弁護士 長田 弘樹
監修:弁護士 長田 弘樹弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長
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