健康情報(要配慮個人情報)の保護

公開日:2020年10月12日
  • メンタルヘルス

労働者が健康に働くためには会社側が労働者の健康状態を把握しておく必要があります。しかし、個人の心身の状態に関する情報は非常にセンシティブなものですので、それを会社側がどのように取り扱うか不安に思う労働者も多いと思います。
働き方改革の一環として、労働者の心身の状態に関する情報の取り扱いについても見直されました。

企業における労働者の心身の状態に関する情報の取り扱い

労働者の心身に関する情報は非常にセンシティブなものですので、それを取り扱うこととなる企業においては慎重な対応が求められることとなります。
その法的な根拠、具体的な取り扱い方法について以下で見ていきます。

個人情報保護法による要配慮個人情報の保護

個人情報保護法において、個人情報取扱事業者は、法令に基づく場合等の例外を除き、あらかじめ本人の同意を得ないで、要配慮個人情報を取得してはならないとされています(個人情報保護法17条2項)。
ここでいう個人情報取扱事業者とは、個人情報データベース等を事業の用に供している者とされ(個人情報保護法2条5項)、扱うデータの件数には関わらないため、ほとんどの会社が個人情報取扱事業者に該当してきます。
では、取得に本人の同意が必要となるよう配慮個人情報とは何でしょうか。

要配慮個人情報とは

要配慮個人情報とは、本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するものが含まれた個人情報であり、心身の状態に関するものとしては、身体障害、知的障害、精神障害等の心身の機能の障害、健康診断その他の検査の結果、本人に対して医師等により行われた心身の状態の改善のための指導、診療、調剤などが挙げられています(個人情報保護法2条3項、個人情報保護法施行令2条)。

健康情報の定義とその取扱いについて

労働安全衛生法に基づき実施される健康診断や労働者が任意に行う健康管理活動を通じで得られる労働者の心身の状態に関する情報は、そのほとんどがこのよう配慮個人情報に該当することになります。 そこで、その取り扱いについては、労働安全衛生法で以下のとおりに定められています。
なお、この労働者の心身の状態に関する情報とほぼ同義として、「労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針」(以下、「本指針」と言います。)においては「心身の状態の情報」という言葉が、「雇用管理分野における個人情報のうち健康情報を取り扱うに当たっての留意事項について」においては「健康情報」という言葉が使われています(以下では、もっぱら「健康情報」という言葉を使用します)。

企業は従業員の健康情報を保護する義務がある

労働安全衛生法において、事業者は、労働者の健康情報を収集、保管、使用するにあたって、原則として、労働者の健康の確保に必要な範囲内で収集し、当該収集の目的の範囲内で保管し、使用しなければならないとされています(労働安全衛生法104条1項)。
そして、事業者は、労働者の健康情報を適正に管理するために必要な措置を講じなければならないとされています(同条2項)。

健康情報取扱規程策定の義務化

労働者が不安を抱くことなく産業医による健康相談等を受けられるようにするとともに、事業者が労働者の健康確保措置を十分行うために必要な情報を収集できるようにするためには、法令に基づき健康情報が適切に取り扱われることを明確化しておく必要があります。そこで、本指針において、健康情報取扱規程の策定が示されています。

取扱規程の策定方法

健康情報取扱規程の策定にあたっては、労使の協議が欠かせません。具体的には、常時使用する労働者が50人以上の事業場では、衛生委員会又は安全衛生委員会の設置が義務付けられているため、そこで審議することが求められ、衛生委員会又は安全衛生委員会の設置が無い事業場においても、労働者の意見を聴くための機会を設けた上で、策定することが求められます。

取扱規程に定めるべき内容

健康情報取扱規程には以下の内容を定めることになります。

  • ①健康情報を取り扱う目的、取扱方法
  • ②健康情報を取り扱う者とその権限、取り扱う情報の範囲
  • ③目的、取扱方法などの通知方法と本人同意の取得方法
  • ④健康情報の適正管理の方法
  • ⑤健康情報の開示、訂正、使用停止等の方法
  • ⑥健康情報の第三者提供の方法
  • ⑦事業承継、組織変更に伴う健康情報の引継ぎに関する事項
  • ⑧健康情報の取扱いに関する苦情の処理
  • ⑨健康情報取扱規程の労働者への周知の方法

本人の同意取得に関する注意点

労働安全衛生法令において本人の同意なく収集できる健康情報であったとしても、その情報を取り扱う目的、取扱方法等について、労働者に周知した上で、労働者の十分な理解を得ることが望ましいでしょう。
また、労働安全衛生法令において本人の同意なく収集できるものでない場合には、要配慮個人情報については、個人情報保護法17条2項に基づき、労働者本人の同意を得なければなりません。

健康情報を取り扱う者に対する教育の必要性

そして、策定された健康情報取扱規程が適切に運用されるためには健康情報を取り扱う者等の関係者に対する教育が不可欠です。
例えば、健康情報取扱規程の策定、改定時において健康情報を取り扱う者に対して研修を実施することが典型例ですが、健康情報を取り扱う者以外もその重要性、必要性を周知することは重要ですので、管理職を対象とする研修において、健康情報の取り扱いに関する講義を行うことなども必要となるでしょう。

健康情報の取り扱いに関する判例

個人情報保護法や労働安全衛生法が改正される前のものですが、健康情報の取り扱いに関して以下の裁判例があります。

事件の概要

Yが経営するY病院で勤務するXは、A病院の血液検査の結果、HIV陽性と診断されたところ、A病院の医師から情報取得したY病院の医師がXの同意なく、Y病院の他の職員に伝達して情報を共有したのはプライバシー侵害の不法行為であり、HIV感染を理由に就労制限したのは働く権利を侵害する不法行為であるとして、Y病院に損害賠償を求めました。

裁判所の判断(事件番号・裁判年月日・裁判所・裁判種類)

裁判所(福岡地裁久留米支部平成26年8月8日判決)は、Y病院の副院長が院長らに、看護師長が看護部長らに伝達したことは、Xの就労に関する方針を話し合う労務管理目的であり、個人情報保護法16条が禁ずる目的外利用であり、患者個人の医療情報は重要な秘密とされる個人情報で、本人の同意のない本件情報共有はプライバシー侵害の不法行為となり、また就労制限も不法行為となるとし、休業損害及び慰謝料を認めました。

ポイントと解説

この判決は、個人情報保護法に要配慮個人情報の規定が定められる前のものですが、HIV陽性との診断結果を職場内で共有したこと、就労に関して不利益な取り扱いをしたことについて不法行為責任が認められています。
個人情報の取り扱いがより厳格化された現在においても当然同様の結論になると考えられます。

健康情報の適正な取り扱いについて、専門知識を有する弁護士がアドバイスさせて頂きます。

従業員の健康情報の取り扱いや健康情報取扱規程の策定、改定などについて、今まで深くは考えてこなかったと感じられた場合、すぐに専門家に相談されることをお勧めします。
弊所では、専門知識を有する弁護士が親身になってご対応させていただきます。

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