監修弁護士 長田 弘樹弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長 弁護士
夫婦間で突然配偶者から離婚の申し入れがなされた場合や夫婦で離婚の話し合いをする中で、相手方との離婚を望まず、離婚を拒否したいと考えている人も多いかと思います。
今回は、そもそも相手方からの離婚の申し入れを拒否することができるのかどうか、離婚の申し入れをなされた場合の対処法や疑問点について、ご説明いたします。
目次
そもそも離婚を拒否することはできるのか
相手方との離婚を望まない場合において、当事者間の離婚協議や離婚調停が申し立てられた場合においては、相手方申し入れを拒否することは可能です。そもそも、協議離婚や調停離婚が成立するためには、当事者間で離婚意思が合致していることが求められています。そのため、一方当事者が離婚を望まない場合には、離婚協議や離婚調停の中で相手方に離婚拒否の意思を明確に伝えることで、離婚を拒否することは可能となります。
他方で、後述するように、離婚訴訟において、裁判所が離婚請求を認めた場合には、当事者の意思に関係なく、離婚が成立してしまいます。
離婚の種類 | 解説 | 拒否の仕方 |
---|---|---|
協議離婚 | 夫婦間において、裁判所外で協議をして合意によって離婚が成立するもの | 相手方に対して離婚する意思がないことを伝える。 |
離婚調停 | 夫婦間で裁判所の調停手続を利用して、協議を行い合意によって離婚が成立するもの | 調停委員に対して相手方と離婚する意思がないことを伝える。 |
離婚裁判 | 裁判所が、当事者の主張・立証を行った結果、判決(当事者の離婚請求を認容する判決)によって、離婚が成立するもの | 相手方の離婚請求の棄却を求める。法定離婚事由がないことを主張・立証する。 |
拒否が難しいケース
協議離婚・調停離婚において、離婚を拒否し続けた場合には離婚が成立することはありません。
もっとも、裁判所が、夫婦間に法定離婚事由(民法770条1項1号ないし5号)があると判断した場合には、いくら離婚を拒否したとしても離婚が認められてしまう場合があります。
離婚拒否が難しいと考えられる具体例を以下に記載いたします。
- 離婚を拒否する者に不貞行為がある場合
- 離婚を拒否する者に暴力(DV)がある場合
- 夫婦が長期間(おおよそ5年以上)の別居状態がある場合
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離婚調停の拒否について
先ほども記載したように、離婚調停手続きの中で、相手方からの離婚請求を拒否することは可能です。以下では、離婚調停の中で離婚を拒否する場合のデメリット、調停委員に対する対応方法、離婚裁判において、離婚を拒否する場合との違いをご説明いたします。
拒否した場合のデメリット
相手方配偶者が裁判所に離婚調停を申し立てると、裁判所から、離婚調停の調停期日等が記載された呼出状が送付されます。裁判所からの呼び出しに応じない場合(無視した場合)のデメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。
- こちらが出席しない場合にも、調停期日が開催される場合があり、その際には、相手方のみが調停委員と話をすることになるため、こちらの離婚拒否の主張が、早期に調停委員に理解してもらえない可能性がある。
- こちらが欠席を繰り返すと、当方に話し合う余地がないとして、調停が不成立になる可能性がある。
欠席する場合の連絡方法
上述したように、相手方が裁判所に離婚調停を申し立てると、裁判所より離婚調停の調停期日が記載された呼出状が送付されます。この調停期日は、申立人である配偶者の都合により一方的に決められるため、こちらが都合により出席できない場合もあるかと思います。
その場合、上記呼出状の中に記載されている担当書記官にすぐに連絡をして、調停に出席できないやむを得ない理由(他の予定が入っていた等)を伝え、欠席の連絡をしておく必要があります。
離婚裁判を拒否すると離婚が成立する可能性が高くなる
離婚調停手続きは、あくまでも当事者間の話し合いによって合意を求める手続きであるため、一方当事者が欠席しただけで離婚が成立することはありません。しかし、離婚訴訟は、調停手続きと異なり、裁判所が離婚請求を認めるかどうかを判断する手続きであるため、当事者が欠席し続けた場合には、欠席した当事者は、離婚請求を争う意思がないと判断され、判決によって、離婚が成立する(離婚請求を認める)可能性が高くなります。
離婚調停での財産分与の拒否はできるのか
財産分与とは、離婚に伴って夫婦共有財産を一方配偶者に分与する手続きのことをいいます。そのため、そもそも離婚自体を拒否する場合には、財産分与の協議にすら至らずに、離婚調停が不成立になるケースもあり、財産分与を拒否することも可能となります。もっとも、離婚訴訟において、相手方の離婚請求が認められる場合には、それに伴って財産分与も認められる可能性があります。
通帳開示を拒否する場合
離婚調停における財産分与の協議の中で、裁判所から通帳開示が求められる場合もあります。もっとも、財産分与は、あくまでも離婚に伴って発生するものであるため、離婚自体を拒否する場合には、財産分与請求権も発生しないため、離婚自体を拒否するとともに通帳開示を拒否することができます。
他方、離婚訴訟においては、相手方からの調査嘱託手続(調査嘱託とは、裁判所を通じて第三者に、裁判に必要な情報に関しての質問・問い合わせを行う手続をいいます。)によって、こちら名義の通帳開示がなされる可能性があります。
離婚調停の拒否に関する質問
離婚調停を拒否したら相手から別居したいと言われた場合はどうしたらいいですか?
離婚を拒否した場合であっても、夫婦が長期間の別居状態にある場合には、裁判所が離婚を認める可能性があります。そのため、相手方から別居したいといわれた場合に、離婚を拒否したいと考えるのであれば、少しでも同居を継続することが望ましいと考えれます。民法第752条では、結婚した男女(夫婦)は、同居義務を負うことが規定されており、相手方に民法上、同居義務があることを伝え、できる限り、同居を継続することが望ましいと考えます。
離婚調停の拒否(欠席)はいつまで通じますか?
離婚調停で離婚を拒否する意思を伝えた場合には、当事者間に協議の余地がなく、離婚調停が不成立となります。どの時点で調停が不成立になるかは、最終的には裁判所の判断となりますが、離婚拒否の意思が明確であれば、通常は2、3回程度の調停期日で不成立となります。離婚を望まず、復縁を望む場合には、こちらから相手方からの離婚請求に対し、円満調停(夫婦間の円満を望む調停)を申し立て、こちらの意思を伝え、当事者間で円満に向けた話し合いがなされる場合があります。もっとも、相手方に円満の意思がない場合には、こちらが円満調停を申し立てたとしても不成立に終わる可能性もあります。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
離婚調停の拒否を検討している場合は弁護士にご相談ください
このように、離婚調停や離婚手続の中で離婚を拒否するには、離婚手続をきちんと理解しておく必要があります。そして、相手方の離婚請求が認められてしまう見通しや可能性を精査した上で、その場面に応じて適切な行動をとっていくことが求められます。そのためには、離婚手続に精通した弁護士に相談することが重要です。さらに、相手方が離婚を求める中で、離婚を拒否し続けることは、精神的にも負担がかかるため、一人で悩むのではなく、弁護士に相談することで、方針が固まり、気持ちが晴れることもあります。当事務所には、離婚手続に精通した弁護士が多数在籍しておりますので、お困りの際には、お気軽にご相談ください。
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保有資格弁護士(大阪弁護士会所属・登録番号:40084)