離婚調停で聞かれることとは?

離婚問題

離婚調停で聞かれることとは?

大阪法律事務所 所長 弁護士 長田 弘樹

監修弁護士 長田 弘樹弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長 弁護士

離婚調停は、どのような流れで、どのようなことに気を付ければよいのでしょうか。以下では、離婚調停において注意すべき点をお伝えさせていただきます。

申立人が離婚調停で聞かれること

離婚調停では、男性と女性一人ずつの調停委員がおり、それぞれから話を聞かれますが、特に初回期日では時間をかけて、主に以下の内容を詳細に聞かれることになります。

結婚した経緯

まずは、結婚に至る経緯ですが、これは特に問題がなかった時期であることが多いので、それほど聞かれることはないでしょう。婚姻前に預金があったり、相続財産を受け取っていたということであれば、財産分与のところと関係する可能性があります。

離婚を決意した理由

離婚を考えるようになったエピソードは、最も問題となる部分なので、できるだけ詳細に伝えるべきです。調停委員は何かを決定する権限を持っているわけではないので、過度に調停委員の言動を気にする必要はありませんが、時間がある程度限られていますので、要点をかいつまんで、感情的にならず冷静に話しましょう。

現在の夫婦関係の状況について

現在、相手方と同居しているか別居しているかは、非常に重要な問題です。同居したまま調停を進めることも可能ですが、調停期日で顔を合わせず個別に呼ばれて調停委員と話しても、同居していると家に戻って顔を合わせることになり、調停でお互い主張していることが家庭内で再燃することになり、事態がより深刻になるおそれがあります。
また、別居している場合に生活費が支払われているか、住宅ローンや水光熱費、学費等が支払われているかについても、婚姻費用の関係で明確にしておく必要があります。

子供に関すること

お子さんの親権や面会交流、養育費が問題になる場合は、財産分与や慰謝料等、金銭で解決する場合よりも難しくなることが多いです。特に、親権の争いが含まれている場合は、監護者指定及び子の引渡しの調停・審判が同時に申し立てられていることがあり、その場合は家庭裁判所の調査官という、未成年者の問題に特化した専門家が同席し、裁判官の命を受けて調査を行う場合があります。

夫婦関係が修復できる可能性について

離婚調停の正式名称は、夫婦関係調整調停(離婚)申立事件といい、これ以外にも、夫婦関係調整調停(円満)申立事件という、円満調停と呼ばれるものもあります。すなわち、調停は離婚の方向に進む場合のみ活用できるものではなく、配偶者の一方が元の夫婦関係に戻りたいと考えているものの、没交渉が続くような場合に、裁判所で調停委員に間に入ってもらって何とか元に戻れないかと話し合う場面でも活用されます。しかし、事例的に数は少なく、また、仮に円満調停を申し立てたとしても、相手方の配偶者が元に戻る気が全くない場合には、調停委員は元に戻るよう説得することまではしてくれないので、結果的には円満につながることは難しいようです。

離婚条件に付いて(養育費、財産分与、慰謝料)

離婚調停を申し立てる側(申立人)は、調停申立書の「申立ての趣旨」という項目で、自分が相手方に求める条件を提示する必要があります。このうち、離婚するという意思表示以外の部分を付随申立て部分と言い、親権、面会交流、養育費、財産分与、慰謝料、年金分割等があります。養育費、財産分与、慰謝料の額は、申立ての段階ではっきりとわかっている場合はその額を記載することになりますが、申立て時点ではまだわからない場合には、「相当額」とすることもできます。
養育費については、申立人と相手方の収入のみで決まることが多いので、それぞれ収入資料(源泉徴収票、確定申告書、給与明細等)の提出が必要です。財産分与は、婚姻期間中に形成された資産(現預金、不動産、株式、債券、解約返戻金のある保険、自動車等)が対象になるので、それらが別居時等の基準時にどれだけ存在していたかにつき、自身の保有するものを開示し、相手方に対しては相手方保有分の開示を求めることになります。任意の開示が期待できない場合は、文書送付嘱託や調査嘱託等の手続を行います。慰謝料については、相手方から受けた精神的苦痛の根拠となる証拠を出すことになります。

相手方が聞かれること

相手方は、当然に自分の立場から申立人に対して反論することになりますが、まずは離婚の意思が存在するかどうかの確認がされます。離婚については断固として拒否する場合は、調停を続けても意味がないので、早い段階で不成立とされる可能性もあります。
離婚について争わないということであれば、申立人に聞かれたことを同じ質問をされ、相手方の立場から回答することになります。

1回あたりの所要時間の目安と調停の流れ

申立人と相手方は、交互に調停委員がいる部屋に呼ばれ、1回あたり30分程度の時間をかけて話を聞かれます。そのようなターンが2回ずつ程度なされ、1回の期日がトータル2時間の枠に収まるように協議が行われます。相手方が調停委員の部屋に入っている間は、申立人は指定された待合室で待機し、申立人が調停員の部屋に入っている間は、相手方は指定された別の待合室で待機するので、お互いが鉢合わせになることはありません。期日の最後に、期日で行われた内容のまとめと次回期日に提出する宿題の確認をする終わりの会のようなものがあり、そこで次回期日の日程調整が行われるので、それまでは指示に従って待機します。

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離婚調停で落ち着いて答えるための事前準備

余裕をもって到着できるよう、裁判所へのアクセスを確認

裁判所に初めて行く場合は、緊張もあるでしょうから、余裕をもって到着するようにしましょう。裁判所に着いたら、家庭裁判所の担当書記官室に行き、受付を行います。そこで、どの待合室で待機するかを教えてもらえますので、待合室で呼ばれるまで待機します。

聞かれる内容を予想し、話す内容をまとめる

初回の期日では、調停委員から特にしっかりと聞かれることになるので、話す内容をある程度事前にまとめておく必要があります。弁護士に依頼している場合は、調停申立書に経緯を記載しており、それに従って話すことになりますし、弁護士が代わりに要点を伝えることもあります。時間が限られていますので、できる限り簡潔に話すことを心がけましょう。

相手の出方を予想し、対処法を考えておく

申立人が調停委員と話した後には、相手方も同様に調停委員と話をします。そこでは、当然相手方は自分の都合の良いように話をしますから、お互いの言い分が対立することになります。調停は、証拠をもって事実認定をする手続ではありませんので、そこまで厳密に裏付けが必要なわけではありませんが、相手方がどのような反論をしてくるのかを予想して、しっかりと対応できるようにしておくべきです。

調停委員からの質問に答える際の注意点

落ち着いて端的に話しましょう

通常、調停委員を目の前にして話をする経験をお持ちの方はあまりいないと思いますので、特に初回期日では緊張をしてうまく話せないことがあるかもしれません。しかし、調停委員は事実認定をする立場になく、訴訟と異なり、多少主張の内容がこれまでと矛盾するといったことがあったとしても、調停限りで言えばそれだけで非常に不利になるということはありません。ですので、あまり固くなりすぎず、ご自身の伝えたいことを端的に話すようにしましょう。

調停委員との価値観の違いに注意

調停委員はそれぞれ特徴があり、しっかりと話を聞いてくれる方もいれば、高圧的に話すような方もいます。また、弁護士が代理人としてついておらず、説得しやすそうな雰囲気を持っている方に対して、調停をまとめるために相手方の条件を押し付けようとすることも時々ですが見られます。先ほども言ったとおり、調停委員は事実認定したり判断を下す立場にはありませんが、調停を円滑に進めるためには、調停委員を味方につけることは有利に働くことがあります。できる限り調停委員の特性や価値観を理解して、ご自身の主張を調停委員に理解してもらうとよいです。

聞かれてないことを自ら話さない

調停委員から聞かれていないことはできる限り話さないようにしましょう。時間が限られていますので、その時間内に端的に話さなければならないことは当然ですし、話すぎることでご自身にとって不利な内容を発言してしまうこともありえます。また、調停委員もだらだらと同じような話を聞かされるのは閉口するでしょうし、それによって悪い印象を持たれてしまうと、味方についてもらうことが難しくなります。

長文の陳述書は書かない

陳述書は、提出が必須なわけではありませんが、こちらの主張に従った内容を端的にまとめた書面であり、調停委員や調停官に経緯を理解してもらうために有用です。ただ、あまりに長い陳述書は、読む側を余計に混乱させることにもなりますし、相手方を執拗に攻撃する内容の陳述書は、逆にそういった気質を持つ人間であるという評価を受けてしまうことにもなりかねません。
また、陳述書の内容が相手方に対する攻撃的なものであれば、それを読んだ相手方がより一層態度を硬化させ、調停という話し合いによる解決が難しくなる可能性があります。

離婚条件にこだわり過ぎない

お互い離婚についての条件を持つことは当然ですが、双方の離婚条件があまりにかけ離れており、それらが全く妥協点を見出すことができず、お互いの主張が平行線をたどる場合は、調停委員は調停官と評議をしたうえで、調停官が調停を不成立とすることになります。その場合、離婚調停で決めるべき事項は何ら決まることなく調停が終結してしまうため、調停という話し合いによる解決のチャンスが失われることになります。
したがって、絶対に譲れない点については仕方ありませんが、それ以外で譲歩の余地がある点については、うまく交渉して全体的な解決を目指すべきでしょう。

調停で話し合ったことはメモしておく

離婚調停は1回の期日で成立又は不成立し終結するということはなく、だいたい4~6回程度の期日を経ることが多いです。調停期日でやりとりされたことは、その詳細をしっかりと記録し、次回期日に備えるようにしましょう。特に、次回期日までに準備する書面や資料等があれば、それをいつまでに提出するか、次回期日がいつ行われるかは正確にメモすることは当然ですし、こちらの主張が矛盾しないようにするためにも、記録しておくことは重要です。

離婚調停のお悩みは弁護士にご相談ください

調停期日でこれらのことを意識しながら進めていくのは、初めての経験であればなかなか難しいと思います。人生における岐路ともなりうる重大なことですので、後々後悔しないようにできる限りのことをしておくためには、経験豊富な弁護士に依頼されることをお勧めします。

大阪法律事務所 所長 弁護士 長田 弘樹
監修:弁護士 長田 弘樹弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長
保有資格弁護士(大阪弁護士会所属・登録番号:40084)
大阪弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。