
監修弁護士 長田 弘樹弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長 弁護士
面会交流とは、婚姻している夫婦が離婚した場合や、離婚せずに別居している場合に、非監護親が子供と直接会ったり、面会以外の方法で意思疎通を図ることをいいます。
面会交流は子供の監護養育のために適正な措置を求める権利とされていますが、監護親から拒否されてしまうことがあります。
この記事では、面会交流を拒否された場合の対処法や、慰謝料を請求できるのかなどについて、詳しく解説していきます。
目次
面会交流は原則的に拒否できない
子供と非監護親との面会交流は、子供が非監護親から愛されていることを知る機会として、子供の健全な成長にとって重要な意義があるとされています。面会交流がうまく行われていると、子供は、どちらの親からも愛されているという安心感を得ることができるのです。
そのため、単に監護親が子供を非監護親に会わせたくないという理由だけで、面会交流を拒否することはできません。
面会交流の拒否が認められてしまう正当な理由とは?
面会交流の条件を決めるに当たっては、子供の利益を最も優先して考慮しなければなりません(民法766条1項)。そのため、面会交流を実施することによって子供の利益が害されるおそれがある場合には、面会交流の拒否が認められる正当な理由があるものとして、面会交流が制限されることがあります。
子供が面会交流を嫌がっている
面会交流においては、子供の利益が最も優先して考慮されることから、子供自身が面会交流を嫌がっている場合には面会交流を実施することが難しくなります。
おおむね10歳以上の子供であれば、その意向を言語的に表明することができると考えられているので、子供の意向を聞き、尊重すべきです。
ただし、子供が父親と母親の板挟みになって、率直に意向を表明できないこともあります。子供の本当の気持ちがどうであるのかには、注意しなければなりません。
子供を虐待するおそれがある
非監護親が子供を虐待するおそれがある場合には、面会交流を実施することによって子供の利益が害されるおそれがあるとして、面会交流の拒否が認められる可能性があります。
面会交流の実施の可否を判断するに当たっては、過去の虐待の有無だけでなく、虐待のきっかけ、虐待の態様、現在の子供に与えている影響、同様の虐待がなされる可能性などを検討し、面会交流によって子供がさらに精神的ダメージを受けるおそれがないかを見極めることが重要です。
子供を連れ去るおそれがある
非監護親が子供を連れ去るおそれがある場合にも、面会交流の拒否が認められる可能性があります。
子供を連れ去ると、子供が予想外の出来事によって監護親の下から引き離されてしまうことになり、子供が大きな精神的ダメージを受け、子供の利益が害されると考えられるからです。
過去に連れ去りがあった場合には、面会交流の実施には慎重にならざるを得ないでしょう。
配偶者や子供へのDV・モラハラがあった
配偶者(監護親)へのDV・モラハラがあっても、子供に危害が及んでいない場合には、面会交流によって子供の利益が害されるとは限らないため、一概に面会交流の拒否が認められるとはいえません。
他方で、直接子供に危害が及んでいた場合や直接子供がDV等の被害を受けていなくても子供が非監護親に対する恐怖心を抱いている場合などには、上記の虐待の場合と同様、子供が精神的ダメージを受けるおそれの有無を検討したうえで、面会交流が制限される可能性があります。
面会交流を拒否されたときの対処法
面会交流を拒否されたらどうすればよいのでしょうか。
以下では、考えられる対処法について一つずつ解説していきます。
元配偶者と話し合う
まずは、元配偶者(監護親)と話し合うことです。
監護親が面会交流を拒否する理由を聞き、面会交流を実施することと実施しないことのいずれが子供の利益に適うかという観点から、元配偶者を説得してみることが重要です。
監護親の主張を素直に受け止め、監護親の不安を払しょくするよう努めれば、話し合いにより解決できるかもしれません。
面会交流調停の申し立てを行う
直接の話し合いでは折り合いがつかなかったり、そもそも話し合うことすらできなかった場合には、家庭裁判所に面会交流調停の申立てを行うことが考えられます。
調停では、調停委員という第三者を通じて監護親と話し合いができるのに加え、必要に応じて家庭裁判所調査官が事実の調査を行ってくれるため、双方が納得のいく解決を図れる可能性があります。
間接強制の申し立てを行う
面会交流の調停や、調停が不成立になった場合の審判で、面会交流の条件が定められたにもかかわらず、それどおり面会交流が実施されない場合があります。
そのような場合で、監護親の義務の内容がはっきりと特定されているときは、調停調書や審判書に基づいて間接強制(義務者に対して一定の時期までに義務を履行することを命令し、これに従わなかった場合には金銭の支払を命令すること)の申立てができます。
なお、強制的に子供を連れてきて面会交流をさせることはできません。
親権者の変更の申し立てを行う
親権者の変更以外に、面会交流が実現しない現状を改善する手段が見当たらないとして、親権者の変更が認められた事例があります(福岡家裁平成26年12月4日審判)。ただし、この事例では、非監護者への子の引渡しは認められませんでした。
面会交流を拒否されたら慰謝料請求は可能?
監護親が、面会交流を拒否する正当な理由がないにもかかわらず面会交流を実施しなかった場合、非監護親の被った精神的苦痛について、損害賠償責任を負うことがあります。
ただし、裁判実務上、そもそも調停や審判によって面会交流の具体的条件が定められていなければ、慰謝料の請求は認められていません。
慰謝料の請求が認められた場合、金額は数十万円となることが多いですが、500万円の支払が命じられた裁判例もあります(静岡地裁浜松支部平成11年12月21日判決)。
慰謝料の金額はケースバイケースですが、監護親に面会交流の協議に応じる姿勢が一切ない場合や、面会交流が実施されていない期間が長い場合には、慰謝料が高額になりやすいようです。
面会交流を拒否された際のQ&A
面会交流を拒否されたので養育費の支払いを止めようと思いますが構いませんか?
面会交流を拒否されたからといって、養育費の支払を止めることは許されません。
親は子供に対して扶養義務を負っているので、養育費の支払義務がありますが、この義務は、面会交流と連動するものではないのです。
調停、審判又は判決で養育費の支払義務が定められたにもかかわらず、支払義務者が養育費を支払わずにいると、権利者(監護親)が強制執行を申し立てることで支払義務者の財産が差し押さえられてしまう可能性があるため、注意が必要です。
面会交流を子供が拒否した場合はどうしたらいいでしょうか?
先ほど述べたとおり、面会交流においては、子供の利益が最も優先して考慮されることから、子供自身が面会交流を拒否している場合には面会交流を実施することが難しくなります。
ただし、「子供が会うことを嫌がっている」と監護親が言っていても、子供が本当にそう思っているとは限りません。家庭裁判所の手続である調停・審判では、家庭裁判所調査官が子供の意向調査を行ってくれます。
面会交流を拒否されてお困りの方は弁護士にご相談ください
面会交流は、子供が非監護親から愛されていることを知る機会として重要な意義があるにもかかわらず、正当な理由なく監護親に拒否されてしまうことがあります。
本人どうしではうまく話し合えない場合でも、弁護士を入れることによって交渉がスムーズにいくことがあります。また、弁護士は調停等の手続にも詳しいため、依頼者様の状況に合わせて最善の策をご案内することができます。
一日でも早くお子様との面会交流を実現するために、お気軽に弁護士法人ALGまでお問い合わせください。
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保有資格弁護士(大阪弁護士会所属・登録番号:40084)