離婚の際に取り決める、子供の面会交流について

離婚問題

離婚の際に取り決める、子供の面会交流について

大阪法律事務所 所長 弁護士 長田 弘樹

監修弁護士 長田 弘樹弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長 弁護士

子供がいる場合、離婚に際して、財産分与や養育費だけではなく、離婚後、非監護親(子供と離れて暮らす側の親)と子供の面会交流についても取り決めることが必要です。
面会交流は、子供の健全な成長のためにとても重要なものであると同時に、監護親(子供を引き取る側の親)・非監護親ともにさまざまな心配の原因ともなります。

このページでは、面会交流について取り決める際に気をつけるべきこと、面会交流が取り決めどおりに行われない場合の対処などについて解説します。

面会交流とは

面会交流とは、子供のいる夫婦が離婚し、子供と離れて暮らす側の親が、子供と交流することをいいます。「面会」とはいうものの、直接会うことのみに限らず、電話や手紙で連絡を取り合うこと、プレゼントの送付なども面会交流に含まれます。

離婚後における面会交流は、親の権利として法律上明文で保障されているものではありませんが、民法により、子供の利益を最も優先して考慮し定める事項とされています(766条1項)。離婚届にも面会交流に関する記入欄がありますので、トラブルを避けるためにも、届けを出す前に明確に決めておくべき事項だといえます。

面会交流ができるのは何歳まで?

面会交流は、子供が成人する年齢になるまで、つまり20歳まで認められています。ただし、子供の年齢が上がるにつれて本人の意思が尊重されるようになりますので、必ずしも20歳まで継続して面会交流ができるとは限りません。

なお、2022年4月1日より、成人年齢が20歳から18歳に引き下げられるため、法的に補償される面会交流も18歳までとなる可能性があります。2022年4月1日以降に子供が18歳になる場合、あらかじめ、面会交流の年齢を「成人まで」ではなく「20歳まで」のように決めておくとよいでしょう。

別居中でも面会交流はできるのか

離婚届を提出しておらず、夫婦が別居している状態でも、夫婦のあいだでルールを取り決めていれば子供と離れて暮らしている親は面会交流を求めることができます。
ただし、離婚調停中、審判の途中などで面会交流についての取り決めがまだ定まっていない場合は、面会交流ができない可能性もあります。

面会交流について決めるべきルール

以下では、面会交流について取り決める際、定めておくべき事項について解説します。

面会頻度

面会頻度に関しては、月に1回程度、多くとも週1回程度が一般的です。居住地が近く、親子仲が良好ならばそれ以上の頻度で会いたいと思うかもしれませんが、離婚したはずの親に週に何度も会っていては、子供が心の整理をつけられなくなってしまいます。繰り返しになりますが、面会交流のルールについては子供の利益を最優先にして定められなければなりません。

面会時間

面会交流の時間も頻度と同じく重要であり、事前に定めておくべき事項です。子供がまだ幼かったり、面会する親(非監護親)との仲が希薄であったりする場合は、短時間から始め、慣れてきたら徐々に時間を延ばすということもできます。監護親、そして子供自身の合意があれば、非監護親の住居に宿泊したり、旅行へ行ったりすることを認めるケースもあります。

面会場所

面会場所については、相手(非監護親)の住居、レストラン等、事前に決めておいてもかまいませんし、非監護親、あるいは子供自身に任せてもかまいません。子供が幼いうちは親同士であらかじめ決めておき、ある程度成長したら子供自身に任せる、というケースが多いようです。

子供との待ち合わせ

面会交流を行う以上は、非監護親と子供がどのようにして会うかを決めておく必要があります。例えば、監護親と子供の住居に非監護親が迎えに来る、駅やランドマーク等で待ち合わせをするなどが考えられます。

親同士の連絡方法

離婚した元夫・元妻とは連絡を取りたくないという方もいらっしゃるかと思いますが、面会交流は子供の権利です。日時や場所の決定は親同士が行うものですので、あらかじめ電話番号やメールアドレス等をきちんと交換しておき、面会交流について連絡を取れるよう手段を確保しておきましょう。子供の体調不良などによる急な変更等がある際には、その手段を用いて相手方に連絡を取ります。

学校行事などへの参加

非監護親が、子供の学校行事(入学式や卒業式、運動会、授業参観など)や、習い事の発表会などに参加してもよいか否かも、事前に決めておくべきだといえます。子供が非監護親の参加を望んでいるならば、日時や場所などを事前に伝える必要がありますし、反対に、参加してほしくないのに勝手に調べられて来られてしまうというような事態を防ぐためにも、あらかじめ取り決めておきましょう。

プレゼントやお小遣い

非監護親が、子供と面会交流するたびに高価なプレゼントをする、多額のお小遣いを渡すというケースはよく見受けられます。監護親の教育方針に反する場合もありますし、子供の健全な成長を阻害するおそれもあるでしょう。そのような事態にならないよう、非監護親から子供へプレゼントやお小遣いを渡すことの可否、渡してもかまわないのであれば、上限額や、頻度(誕生日とクリスマスのみなど)も決めておきましょう。

対面以外の交流方法

非監護親と子供が連絡を取ることの可否も決めておくべきでしょう。あまりに頻繁に連絡を取り合うのも、反対にまったく取らないのも、子供の心情に影響を与えてしまう可能性がありますので、子供のことを第一に考えて定めるべき事項だといえます。
連絡を可能とするならば、手段(電話、メール、LINE、手紙など)と頻度を決めておくとよいでしょう。

宿泊について

面会交流において、子供が非監護親の家に宿泊したり、旅行で宿泊したりすることは、事前に親同士で合意がとれていれば問題ありませんが、急な宿泊はトラブルを招きますし、監護親としても不安になってしまいます。子供の宿泊の可否については、あらかじめ定めておきましょう。

祖父母の面会交流

基本的に、子供の祖父母には面会交流を求める権利はありません。民法では、面会交流は子供の親が定めるものと規定されているからです。そのため、面会交流を求めるならば、監護親と協議することが一般的です。監護親の許可があれば、祖父母でも面会交流が可能です。

面会交流に関して決定する際の流れ

子供の面会交流に関しては、まず夫婦間による話合いをします。話合いでまとまらなかった場合は、家庭裁判所に調停を申し立て、調停委員を介して調停を行うことになります。調停でも合意に達しない場合、審判に移行し、裁判官により判決が下されることになります。面会交流に関する条件が決定しても、親同士が顔を合わせることを拒んだり、送り迎えができなかったりする場合は、支援機関に仲介してもらい、面会交流を行うこととなります。
以下で、面会交流に関して決定するまでの流れを詳しく解説します。

まずは夫婦間での話合い(協議)

まずは、夫婦間で話合い(協議)を行います。
<4 面会交流について決めるべきルール>にて挙げた、面会交流の頻度、場所、プレゼントの可否などについて話し合い、合意することができれば決定します。
決定した内容は、後のトラブルを防ぐためにも、法的に効力を持つ公正証書として残しておくことをおすすめします。

話合いで決まらない場合は面会交流調停・審判へ

夫婦間の話合いでは合意に至ることができなかったら、まず、家庭裁判所に面会交流調停を申し立てます。調停では、調停員の仲介のもと、面会交流自体の可否、可能とするならばその条件などについて合意を目指します。調停でも合意に至れなかったら、審判に移行し、裁判官が審判を下すことになります。

調停や審判では、面会交流について適切に判断するため、家庭裁判所調査官による調査も行われます。調査官は教育学や心理学の専門家であり、子供自身の意思や、面会交流が行われた場合の子供や監護親への影響などを調査します。調査官立ち合いのもと、面会交流のシミュレーションが行われることもあります。これは、実際に子供と非監護親が接し、子供がどのような反応をするか確認することを目的としています。スムーズにいけば、面会交流が認められる可能性が高くなります。逆に、子供が非監護親を拒否したり怯えたりすると、調査官の心証が悪くなり、面会交流が認められないこともあります。
また、調停や審判では、子供が15歳以上の場合、あるいは15歳未満でもしっかりと意見を言える場合、子供本人の意見が聞かれ、判断において重視されます。

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取り決めた面会交流が守られなかった場合

調停や審判によって決められた面会交流のルールが守られなかった場合、非監護親は、取り決めどおりに子供に会わせるよう、家庭裁判所に申し立てることができます。家庭裁判所が、面会交流を拒否することに正当な理由がないと判断すると、まず、監護親に対して面会交流をさせるよう勧告が行われます。それでも面会交流を拒否する場合、強制執行が行われる可能性があります。しかし、面会交流に関しては、裁判所が子供を強制的に連れてくるような「直接強制」をすることはありません。金銭的なペナルティを課すことによって面会交流を促す「間接強制」が行われます。間接強制の金額は、養育費や監護親の収入によって異なります。

取り決めた面会交流を拒否したい場合

非監護親との面会交流は子供の成長のため重要なものであり、正当な理由なく拒否することはできません。理由なく拒否を続けると、裁判所から勧告を受けたり、金銭的なペナルティを受けたりする場合があります。
しかし、場合によっては面会交流を拒否できることもあります。
まず、十分な判断ができる年齢に達した子供自身が、自分の意思で面会交流を明確に拒否している場合、面会交流の拒否が認められることがあります。ただし、子供は監護親の意向に敏感であり、本当は面会したいにもかかわらず本心を隠してしまうこともあるため、慎重に判断されます。
また、虐待や連れ去りの可能性が強く疑われる場合も拒否できます。
ほかには、取り決めを守らず、長時間子供を連れまわしたり、監護親の悪口を吹き込んだり、子供といるときにアルコールで酩酊していたといった問題行動が繰り返された場合も拒否が認められる可能性があります。
離婚前に監護親に対してDVをふるっていた、それを子供が目撃していたといった事情がある場合は、子供と監護親の心情を考えて拒否することが認められた事例もあります。
いずれにせよ、面会交流について裁判所はあくまでも親の利益ではなく子供の利益を最優先に考えるので、常に拒否できるとは限りません。

面会交流と養育費の関係

養育費は子供が自活できるようになるまで、非監護親が子供の成長に不可欠な額を支払うものであり、面会交流もまた子供の健全な成長のために非監護親と会うことを認めたものです。
どちらも子供の健全な成長を目的としたものですが、基本的には別の制度です。
養育費が支払われないから面会交流をさせない、面会交流をさせないから養育費を支払わない、ということは正当な理由とはみなされません。これらは別の問題として別個に解決するべき問題とされています。

再婚した場合の面会交流

現在の裁判所は、親のどちらか、または両方が再婚しても、監護親が面会交流を拒否する理由にはならないと判断する傾向があります。面会交流は子供のためのものであるため、親の事情が変わっても、よほどのことがない限り中止にはなりません。
監護親が再婚し、新しい家庭に慣れてもらいたいので面会交流をさせたくないと思っても、子供自身が拒否していなければ、面会交流を続ける必要があります。非監護親が再婚しても、監護親が再婚を理由として面会交流を拒否することはできません。

ただし、面会交流に再婚相手を連れてくるといったケースでは、子供の心に負担がかかってしまうことが想定されるため、事前に監護親や子供本人の意見を聞くなどの配慮が必要になります。

面会交流で不安なことがあれば、弁護士に相談してみましょう

子供の面会交流に関しては、監護親、非監護親、どちらの立場でも、ご不安なことが多いかと思います。
そもそも面会交流を認めていいのか、認めるとしてもどのようなルールを定めるべきなのかというお悩みもあるかと思います。また、監護親の立場であれば、面会交流が子供に対して悪い影響を与えないか、非監護親が取り決めたルールをきちんと守っているのか、非監護親の立場であれば、監護親が取り決めたルールどおりに子供に会わせてくれないなどのケースもあるでしょう。

離婚に際して、面会交流のルールをきちんと取り決めて公正証書として残したい、あるいは、取り決めて離婚してしまった後だけれど面会交流のルールを変更したい、そのようなときは、ぜひ弁護士にご相談ください。ご依頼者様とお子様のことを第一に考え、尽力させていただきます。

大阪法律事務所 所長 弁護士 長田 弘樹
監修:弁護士 長田 弘樹弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長
保有資格弁護士(大阪弁護士会所属・登録番号:40084)
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