労務

従業員の非違行為とは|私生活上の行為でも懲戒処分や解雇は可能?

大阪法律事務所 所長 弁護士 長田 弘樹

監修弁護士 長田 弘樹弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長 弁護士

  • 懲戒処分
  • 非違行為

従業員による非違行為があった場合、懲戒処分を行うことができる可能性があります。
この記事では、非違行為の具体例や懲戒処分が無効とならないためのポイントなど、従業員に非違行為があった場合の具体的な対応をご紹介していきます。

従業員の非違行為とは?

就業中の非違行為の具体例

就業中の非違行為の具体例としては、暴行・脅迫・窃盗、業務妨害、ハラスメント等が挙げられます。

私生活上の非違行為の具体例

私生活上の非違行為の具体例としては、帰宅途中での酒気帯び運転、社内不倫、ホームページでの会社に対する批判の掲載、痴漢行為、就業時間外の会社を誹謗中傷するビラの配布等が挙げられます。

私生活上の非違行為でも懲戒処分や解雇は可能か?

会社の信用や重大な悪影響を及ぼす場合は懲戒処分の対象

労働者の私生活上の行動は原則として企業の懲戒処分や解雇の対象とはなりません。通常であれば、私生活上の行動が企業秩序や服務規律に影響を及ぼすものではないためです。

もっとも、労働者は企業の社会的評価を毀損させる行為や、事業活動に支障を生じさせる行為をしないという義務を負っています。その義務に反し、私生活上の非違行為によって、企業の事業活動に支障が生じた場合には、懲戒処分や解雇の対象となります。

不当に重い懲戒処分は無効・違法となるため注意

私生活上の非違行為があったからといってどんな懲戒処分も常に認められるものではなく、非違行為の態様・性質・動機、業務に及ぼした影響、損害の程度等を考慮した上で、相当な範囲でのみ有効な懲戒処分として認められます。

非違行為に対する懲戒処分が無効にならないためのポイント

就業規則で規定する

非違行為に対する懲戒処分が無効にならないためには、就業規則等に懲戒処分の対象となる非違行為とこれに対する懲戒処分の種類が明示的に規定されていることが必要です。

弁明の機会を与える

弁明の機会を付与しないことをもってただちに懲戒手続が違法になるというわけではありませんが、裁判例においても、「一般論としては、適正手続保障の見地からみて、懲戒処分に際し、被懲戒者に対し弁明の機会を与えることが望ましい」とされています。

処分の正当性を裏付ける証拠を確保する

懲戒処分が後に無効とされないためには、非違行為があったことの裏付けとなる客観的な証拠のみならず、適正手続に基づき適正な内容の懲戒処分がなされたことの証拠を集めておくことも重要です。

非違行為に対する懲戒処分が有効とされた裁判例

事件の概要

【平成11年(ワ)第11964号・平成12年4月28日・大阪地方裁判所・地位確認等請求事件】
観光バス会社の運転手である原告が取引先の女性添乗員や自社の女性従業員に対しセクハラ行為を繰り返し、また無断で他の運転手にバスを運行させるなどの行為に及び、事情聴取にも反抗的な態度を取っていたことから懲戒解雇されたことについて、解雇は無効であるとして地位確認および賃金の支払を求めた事案です。

裁判所の判断

裁判所は、原告の行為が就業規則上の懲戒解雇事由に該当し、会社の厳しい対応姿勢や原告の反省の欠如を考慮すると、解雇は相当であると判断し原告の請求をすべて棄却しました。

また、本件において原告は、解雇に至った背景として労使関係の悪化があり、解雇は報復措置の疑いがあるなどと主張していましたが、裁判所は「本件解雇を相当とする非違行為が認められる以上、原告主張の事情があるからといって、本件解雇の効力に消長をきたすものではない」と判断しました。

ポイント・解説

本事案は、非違行為が就業規則の懲戒処分事由に該当するか否かを判断した上で、男女関係に対する会社の従前の対応姿勢、原告の反省状況等を総合的に考慮し、解雇の相当性を判断しました。

また、非違行為が認められる以上、解雇の背景として労使関係の悪化があり、解雇が報復措置の疑いがあるとしても、解雇の効力に影響をきたすものではないと判断したという点もポイントです。

問題社員への対応・処分でお悩みなら弁護士にご相談下さい

非違行為に対して懲戒処分を行おうとしている場合、適正な手続を踏まなければ当該処分が違法・無効となってしまうおそれがあります。問題社員への対応・処分でお困りの場合、手続のプロである弁護士に一度ご相談されることをお勧めします。
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