労務

スーパーフレックスタイム制度における給与の控除について

大阪法律事務所 所長 弁護士 長田 弘樹

監修弁護士 長田 弘樹弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長 弁護士

    多様で柔軟な働き方を選択できるように働き方改革によって、フレックスタイム制は導入されました。その中でも、スーパーフレックスタイム制では労働者に労働時間の選択権がより多く与えられています。これにより、給与控除や労務管理において以下のような問題が生じます。この点につき、以下みていきます。

    スーパーフレックスタイム制度とは

    スーパーフレックスタイム制度とは、労働者が1か月などの単位期間の中で一定の時間労働することを条件として、1日の労働時間を自己の選択するときに開始し、かつ終了でき、コアタイム(労働者が労働しなければならない時間帯)が定められていないものをいいます。スーパーフレックスタイム制を採用した場合、1週または1日について法定労働時間を超えても直ちには時間外労働となりません。

    スーパーフレックスタイム制における給与の控除は可能?

    スーパーフレックスタイム制度においては、実労働時間が清算期間の総労働時間に満たない場合に給与の控除が可能です。

    コアタイムがない場合では「遅刻」「早退」は発生しない

    スーパーフレックスタイム制度においては、コアタイムが存在しない以上、労働時間の設定は労働者の自由にゆだねられているため、始業時間や終業時間が存在しません。したがって、「遅刻」や「早退」が生じえず、遅刻や早退による給与の控除もできません。事前に●時に出勤する、と申告があった時間より遅く出勤したとしても、「遅刻」とはならない点に注意が必要です。

    清算期間の総労働時間に満たない場合は欠勤控除が可能

    しかし、当該労働者の実労働時間が清算期間の総労働時間に満たない場合には、その部分については労務提供がない以上、ノーワークノーペイの原則から、総労働時間に満たない部分を欠勤控除として控除することが可能です。

    清算期間の総労働時間に不足があった場合の対応

    清算期間の総労働時間に不足があった場合には、①不足時間分を給与から控除すること、もしくは②不足時間分を次の清算期間に繰り越すことができます。もっとも、本来的には①不足時間分を給与から控除することによって、対応するべきです。

    ①不足時間分を給与から控除する

    前述の通り、清算期間の総労働時間に不足があった場合には、ノーワークノーペイの原則により、不足分を給与から控除することができます。

    ②不足時間分を次の清算期間に繰り越す

    不足時間分を次の清算期間に繰り越すためには、清算期間中の総労働時間に不足があった月の賃金は全額を支払い、かつ、不足した時間分を次の清算期間に繰り越しても法定労働時間の総枠の範囲内に収まり、このような取り扱いを就業規則などに規定されていることが必要です。

    スーパーフレックスタイム制の労務管理を適切に行うには

    労務管理を適切に行うためには、以下の通り、就業規則において、詳細な規定を設け、労働者の労働時間の管理を徹底することが重要です。

    労働時間の管理を徹底する

    スーパーフレックスタイム制は、労働者に、始業・終業時間をゆだねるものにすぎず、使用者に課せれられている労働者の労働時間の管理を免除するものではありません。時間外労働が成立した場合には、割増賃金を支払う義務が生じます。スーパーフレックスタイム制を採用した場合にも、労働者の労働時間の管理は徹底しましょう。

    就業規則を整備する

    スーパーフレックスタイム制においては、一定の範囲の労働者につき始業・終業時間を各労働者の決定に委ねることを就業規則で定めることが必要です。もっとも、このような就業規則の定めは、スーパーフレックスタイム制を採用するための要件にすぎません。

    スーパーフレックス制を個別の労働者に適用し、労働契約の内容とするためには、就業規則において、総労働時間、総労働時間を超える残業の仕方、賃借時間制度の有無、賃金計算の仕方など、詳細に規定を設ける必要があります。

    違法な給与控除を行った場合のペナルティ

    不足時間分を超えて給与を控除するなどの違法な給与控除を行った場合には、労働基準法の賃金全額払いの原則に違反し、労働基準法120条1号により、30万円以下の罰金が課せられるおそれがあります。

    フレックスタイム制の労務管理について、経験豊富な弁護士がアドバイスいたします。

    フレックスタイム制の導入により、多様で柔軟な労働が可能になり、労働者にとってはプライベートの充実や育児や介護との両立などのメリットがあります。一方で、使用者としては、導入する際の手続き、労働者の勤怠管理など様々な問題が考えられます。これらの問題について、経験豊富な弁護士にぜひご相談ください。

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