面接で聞いてはいけない質問とは?

大阪法律事務所 所長 弁護士 長田 弘樹

監修弁護士 長田 弘樹弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長 弁護士

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企業が採用等の面接で聞いてはいけない質問には、どのようなものがあるでしょうか。
以下では、面接で聞いてはいけない質問にどのようなものがあるか、それをしてしまった場合、どのようなリスクが生じるかを説明していきたいと思います。

企業が面接で聞いてはいけない質問とは?

企業が採用等の面接で聞いてはいけない質問のうち、代表的なものとして以下のものをあげることができます。

本人に責任のない事項に関する質問

まず、本人の意思、能力等ではどうしようもない、本人に責任のない事項に関する質問は聞いてはいけません。

本籍・出生地に関すること

例えば、本籍・出生地に関することも、本人に責任のない事項として質問してはなりません。面接の質問としてだけでなく、応募にあたっての書類に戸籍謄(抄)本や本籍が記載された住民票を提出させることも、同じくしてはならない事項にあたるので、注意しましょう。

家族・資産に関すること

本人の家族に関すること、例えば、家族の職業、本人との続柄、健康状態、病歴、地位、学歴、収入、資産の有無・多寡についても、本人に責任のない事項として質問してはなりません。

住宅状況に関すること

住宅状況(間取り、部屋数、持ち家なのか賃貸なのか、近郊の施設など)についての質問も、本人の適性や能力に関係のないものであり、本人に責任のない事項として質問してはならないとされます。

生活環境・家庭環境に関すること

その他生活環境、家庭環境に関することも、採用等の面接では本人に責任のない事項として質問してはなりません。

本来自由であるべき事項に関する質問

本来個々人の自由であるべき、思想や信条に関わる以下の事項も質問してはなりません。

思想・信条・宗教・支持政党などに関すること

まず、思想・信条・宗教・宗派・支持政党はもちろん、これらの事項を容易に推測させる、これらの事項に密接に結びついている特定の政治テーマについての意見を問うことや、一定のシチュエーションを想定させて回答させる質問等はしてはなりません。

労働組合の加入状況や活動歴に関すること

労働組合の加入状況や活動歴に関することも、本来個々人の自由であるべきものであり、思想や信条に関わる内容に該当するため、してはなりません。

購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること

購読新聞、雑誌、場合によっては愛読書を質問することも、本来個々人の自由に属する思想・信条の内容に容易に推測させることにもなりかねませんので、採用等の面接ではしてはなりません。

男女雇用機会均等法に抵触する質問

また、例えば、女性は家庭を守るべきであるから〇〇すべきであるなどといった、特定の不当なジェンダーロールを前提とするような男女雇用機会均等法の理念に抵触する質問もしてはなりません。

応募者の健康情報に関する質問

企業としても健康な人材を採用しなければならず、健康状態の確認のため病歴の申告を求めることがあります。これは法的に可能なことですが、あくまでも応募者の適性や能力を図るためのものですから、適性や能力に無関係な病気を把握することはしてはなりません。

応募者の犯罪歴を聞くことは許されるか?

応募者の担当する具体的な業務で犯罪歴の有無を確認しなければならないとき以外は、差別となり、プライバシーの侵害を理由に損害賠償を請求されるリスクもありますので、質問はしない方がよいでしょう。

採用面接に関する職業安定法上の規制

採用にあたって、募集者の個人情報は、本人の同意や正当な事由がある場合を除き、業務の目的の達成に必要な範囲内で収集等しなければならないとされます(職業安定法5条の4)。

集団面接で質問する際に注意すべき点とは?

集団面接でも、一対一の面接であっても聞いてはいけない質問は基本的に同じです。
応募者自身は質問を特別問題視しなかったとしても、集団面接を受けている他の応募者が、そのような質問をしていたことを広く問題化するリスクもありますので、特に気を付けるようにしましょう。

面接で聞いてはいけない質問をした場合に企業が負うリスク

面接で聞いてはいけない質問をした場合に企業が負うリスクにはどのようなものがあるでしょうか。

企業イメージが悪くなる

まず、企業が差別的な採用等を行う企業だと知れ渡ってしまうことで、企業イメージの悪化に繋がってしまうリスクがあります(レピュテーションリスク)。

法律違反により罰則が科せられる可能性

また、法律違反により罰則が科せられる可能性もあるので注意が必要です。先に述べたように、採用にあたって、募集者の個人情報は、本人の同意や正当な事由がある場合を除き、業務の目的の達成に必要な範囲内で収集等しなければならないとされますが(職業安定法5条の4)、これに違反した場合は、業務改善命令がなされ、その改善命令にも違反すると、6カ月以下の懲役または30万円いかの罰金刑が適用されることになってしまいます。

面接で禁止されている質問をしないための対策

事前に質問する内容を決定しておく

採用等の面接にあたっては、応募者の回答に応じて適宜内容を掘り下げる質問をするなど、臨機応変に対応すべき部分があるのも事実ですが、まずもって事前に質問する内容を決定しておき、その内容が面接で聞いてはいけない質問を含むものでないか、予めチェックすることが重要です。

面接官への研修・指導も重要

また、そもそもどのような質問が面接で聞いてはいけない質問にあたるのか、それをしてしまった場合のリスク等について、面接官が研修や指導等によって判断できるように態勢を整えておくことも重要でしょう。

面接時の質問が争点となった裁判例

以下では、面接時の質問が争点となった裁判例として〈札幌地判令和元年9月17日〉を紹介したいと思います。

事件の概要

この裁判例は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染している原告が、北海道内において病院を経営する被告の求人に応募し内定を得たものの、その後被告から内定を取り消されたことから、①内定取消しの違法性、②被告が病院の保有していた原告に関する医療情報を目的外利用したことはプライバシー侵害にあたると主張して、不法行為に基づき損害賠償を請求した事案です。

裁判所の判断(事件番号・裁判年月日・裁判所・裁判種類)

裁判所は、まず、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に関する医学的知見が進展しその治療方法が確立されていること、②原告の就労により他者へHIVが感染する危険性は無視できるほど小さいものであったこと、③現在でもなおHIV感染者に対する社会的偏見や差別が根強く残っていることを総合考慮すると、原告が被告の採用手続においてHIV感染の事実を告げる義務があったということはできないと判示しました。
そして、原告が被告に対して、HIV感染の事実を告げる義務はなかったのであるから、原告が面接において持病の有無を問われた際にHIV感染の事実を告げなかったとしても、これを理由とする内定取消しについて、客観的に合理的な理由が存在し社会通念上相当として是認することができる場合に当たるということはできず、内定取消しを違法としました。
また、原告に関する医療情報を目的外利用については、個人情報である原告の医療情報の目的外利用として個人情報保護法16条1項に違反する違法行為であるとしました。そのうえで、本来原告の診察や治療に携わる者のみが知ることのできた原告の医療情報が、採用担当者等にも正当な理由なく拡散されたのであるから、これにより原告のプライバシーが侵害されたと判断し、不法行為に基づく損害賠償請求を認めました。

ポイント・解説

本裁判例は、通常の勤務において業務上血液等に接触する危険性が高い医療機関においても、労働者にHIV感染の有無を確認することは原則として許されないと判示した点が重要です。
被告は、内定取消しの理由は原告のHIV感染にあるのではなく、原告が従業員のHIV感染という医療機関にとってきわめて重要な事実を申告しない人物であることから、原告と信頼関係を築くことが困難であると判断したことにあると主張しましたが、裁判所は当該主張を排斥しています。

面接時の質問が不適切かどうかで判断に迷ったら弁護士にご相談下さい

採用等の面接にあたっては、応募者の適性や能力等を図るために、どうしても応募者個人の細部についての質問をせざるを得ないときもあるかと思います。しかしながら、一方で、以上で述べたとおり、面接でしてはならない質問があり、微妙な境界領域に属する質問など、不適切な質問にあたるのかどうかの判断が困難な場合が多いというのが実態でしょう。
面接の質問において、適切か不適切な質問かがわからない場合、弁護士にご相談いただければ、リスクを踏まえた適切なアドバイスをさせて頂けると思います。お悩みの場合は、是非お気軽にお問合せください。

大阪法律事務所 所長 弁護士 長田 弘樹
監修:弁護士 長田 弘樹弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長
保有資格弁護士(大阪弁護士会所属・登録番号:40084)
大阪弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。

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