労務

フレックスタイム導入の手続き

大阪法律事務所 所長 弁護士 長田 弘樹

監修弁護士 長田 弘樹弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長 弁護士

  • フレックスタイム

「フレックスタイム制を導入したいけれどもどのような手続きを踏めばよいかわからない」という方も多いのではないでしょうか。下記では、フレックスタイム制の導入手続きについて詳しく解説します。

目次

フレックスタイム制を導入するための手続き

 

フレックスタイム制を導入するためには、①就業規則の作成・変更、②労使協定の締結、という手続きが必要です。

就業規則の作成・変更

 

フレックスタイム制は、出勤・退勤時間や日々の労働時間の長さを従業員自らが決めることのできるという制度です。新たにフレックスタイム制を導入するということは、従来の労働条件に変更を加えるということになりますので、就業規則を作成し直すか、従来の就業規則に変更を加える必要があります。

就業規則に規定が必要な事項

 

労働基準法上、就業規則には、「始業及び就業の時刻」に関する事項が必要的記載事項とされています。そのため、フレックスタイム制を導入する際には、始業及び就業の時刻について労働者が自由に決定できる旨定める必要があります。 

従業員への周知義務について

 

就業規則を作成・変更した後は、その就業規則の適用を受ける労働者がいつでも閲覧できるよう周知しなければなりません。労働者に対する周知が行われていない場合、就業規則の作成・変更の効力が否定されるおそれがありますのでご注意ください。

労使協定の締結

フレックスタイム制を導入するに際しては、原則として、労使協定で以下の事項について定め、労働基準監督署へ届け出る必要があります。ただし、後述の清算期間が1か月以内の場合には、必ずしも届出は必要ありません。

対象となる労働者の範囲

フレックスタイム制の適用を受ける労働者の範囲を明確に定める必要があります。
特に、一部の労働者についてフレックスタイム制を設ける場合には、適用を受ける労働者と適用を受けない労働者の区別を明確に定めましょう。

清算期間

清算期間とは、フレックスタイム制において、労働契約上、労働者が始業・終業時間を決定することのできる期間を指します。この期間は、原則として1か月以内とされています。労使協定においては、フレックスタイム制の起算日と期間を定める必要があります。

清算期間における総労働時間

フレックスタイム制が導入された場合でも、労働者は総労働時間を自由に決められるわけではありません。労使協定において、清算期間内の総労働時間が定められ、労働者は、清算期間内においてその労働時間に満つるように労働に従事することになります。
労使協定においては、清算期間内における所定労働日数及び所定労働時間が定められることが一般的です。 

標準となる1日の労働時間

標準となる1日の労働時間は、フレックスタイム制の適用を受ける労働者が年次有給休暇を取得した際に、賃金等の計算の算定基礎を何時間とするのか明らかにするために定める必要があります。そのため、ここでは単に時間数を定めておけば問題ありません。

コアタイムとフレキシブルタイム

コアタイムとは、フレックスタイム制の適用を受ける労働者が、少なくとも労働しなければならない時間帯をいいます。コアタイムは、フレックスタイム制の導入に際しては任意的なものとされています。

法改正により必要となった手続き

労働基準法の改正により、従来、「1か月以内」とされていた清算期間について、その上限が「3ヵ月以内」とされました。
清算期間が1か月を超える場合は、その旨を定めた労使協定を管轄の労働基準監督署に届け出る必要があります。なお、就業規則の作成・変更が必要な点は従来と同様です。

フレックスタイム制を導入するにあたっての注意点

フレックスタイム制を導入するにあたっては、いくつか注意点があります。

フレックスタイムの導入に関するQ&A

フレックスタイム制においても36協定の締結は必要ですか?

フレックスタイム制においても、36協定の締結が必要な場合があります。
例えば、休日勤務を命じる場合や、清算期間内における総労働時間を超える労働を命じる場合などがこれにあたります。後々にトラブルが生じないよう、適切に定めておく必要があるでしょう。

フレックスタイム制の導入で、労使協定を締結しないとどのようなリスクが生じるのでしょうか?

労使協定を締結する必要があるにもかかわらず、労使協定を締結せず、所轄の労働基準監督署に届出を行わない場合、労働基準法違反として30万円以下の罰金が科せられるおそれがあるので注意が必要です。

特定の部署のみにフレックスタイム制を導入することは可能ですか?

特定の部署のみにフレックスタイム制を導入することは可能です。
労使協定において、対象となる範囲をその部署に定めておけば問題ありません。

フレックスタイム制を導入する場合、10人未満の会社の場合でも就業規則の作成は必要ですか?

10人未満の会社の場合、就業規則の作成及び届出の義務はありません。
そのため、就業規則の作成は必ずしも必要ありません。
この場合は、労働時間について書面で定め、就業規則と同様に従業員全員に周知するなど「就業規則に準ずるもの」によって定めることで足りると考えられます。

 

就業規則を変更した場合、従業員全員に周知するにはどのような方法が有効ですか?

就業規則を変更した場合、従業員がいつでも、誰であっても閲覧できる状況に置く必要があります。
一般的には、事業所のわかりやすい場所に備え置く、各従業員に書面で交付する、などの方法が考えられます。

フレックスタイム導入による労使協定の様式は、所定のものでないとだめですか?

フレックスタイムの導入に当たって労使協定の様式は定まっていません。
前記所定の内容が記載されていれば問題ありません。

労使協定の有効期間はいつまでと定めるべきでしょうか?

労使協定の有効期間については、法的に定まっているわけではありません。
1年単位の有効期間で定めておくのが一般的です。

フレックスタイムの休憩時間を社員に委ねる場合、労使協定の締結は必要ですか?

一斉休憩が必要であるといった事情がない場合には、必ずしも労使協定の締結は必要ありません。
その場合は、就業規則などで規定しておくといった方法でも問題ありません。

清算期間における総労働時間について「8時間×所定労働日数」というような定め方も可能ですか?

完全週休二日制が採用されている労働者については、清算期間における総労働時間を、労使協定で「8時間×所定労働日数」という定め方とすることも可能となりました。

「業務の進捗状況に応じて残業命令を下す」という旨を就業規則に定めることは可能ですか?

フレックスタイム制は、始業及び終業の時刻を労働者の意思に委ねる制度です。
したがって、「業務の進捗状況に応じて残業命令を下す」という旨の内容は、フレックスタイム制に相反するものとなり、仮に就業規則に定めたとしても、その有効性は極めて疑問です。

フレックスタイム制の導入手続きで不備がないよう、弁護士に依頼することをお勧めします。

フレックスタイム制の導入には、前記のように、就業規則の変更や労使協定の締結といった手続きが必要となります。そして、フレックスタイム制と一口にいっても、定め方次第でその内容は様々であり、各会社にとってどのような定め方が一番適切であるかは一様にはいえません。
各社にとって一番望ましい形でフレックスタイム制を導入するために、ぜひ一度弁護士にご相談ください。

大阪法律事務所 所長 弁護士 長田 弘樹
監修:弁護士 長田 弘樹弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長
保有資格弁護士(大阪弁護士会所属・登録番号:40084)
大阪弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。

来所・zoom相談初回1時間無料

企業側人事労務に関するご相談

  • ※電話相談の場合:1時間10,000円(税込11,000円)
  • ※1時間以降は30分毎に5,000円(税込5,500円)の有料相談になります。
  • ※30分未満の延長でも5,000円(税込5,500円)が発生いたします。
  • ※相談内容によっては有料相談となる場合があります。
  • ※無断キャンセルされた場合、次回の相談料:1時間10,000円(税込み11,000円)

顧問契約をご検討されている方は弁護士法人ALGにお任せください

※会社側・経営者側専門となりますので、労働者側のご相談は受け付けておりません

ご相談受付ダイヤル

0120-406-029

※法律相談は、受付予約後となりますので、直接弁護士にはお繋ぎできません。

メール相談受付

会社側・経営者側専門となりますので、労働者側のご相談は受け付けておりません