労務

同一労働同一賃金における定年後再雇用の基本給・賞与の待遇差とは?

大阪法律事務所 所長 弁護士 長田 弘樹

監修弁護士 長田 弘樹弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長 弁護士

  • 賃金

同一労働同一賃金における定年後再雇用の基本給・賞与の待遇差とは?
という内容で以下の項目に繋がるような冒頭文をお願いします。

同一労働同一賃金における定年後再雇用の基本給・貸与の待遇差とは、正社員と定年後再雇用された労働者との間で、待遇差が存在することを指します。
以下では、このような待遇差がいかなる場合に違法になるのか、違法になるとしてどのようなリスクがあるかについて説明していきます。

定年後再雇用にも同一労働同一賃金が適用される

定年後に雇用された有期雇用労働者についても、パートタイム有期雇用労働法が適用されます
同法には、同一労働同一賃金に関する取り決めが定められているため、定年後雇用された有機雇用労働者にも同一労働同一賃金に関する規定が適用されます。

定年後再雇用後の賃金における待遇差は違法か?

待遇差が違法かどうかは、その待遇差が不合理であるか否かで判断されます
そして、当該労働者が定年後に再雇用されたことは、待遇差が不合理であるか否かの判断の一要素になります。そのため、待遇差があるからといって直ちに違法になるわけではありません。

定年後再雇用後の賃金格差をめぐる裁判例

以下で紹介する判例は、長澤運輸事件という判例です。

事件の概要

長澤運輸事件の概要としては、定年後再雇用された労働者(嘱託乗務員)の賃金について、定年前後で2割以上の待遇差が生じたことについて、旧労契法20条(正規社員と非正規社員との間に不合理な労働条件の相違を禁じた規定)に違反するかが問題になった事案です。

裁判所の判断(事件番号・裁判年月日・裁判所・裁判種類)

平成30年6月1日
最高裁判所第二小法廷判決・平成29年(受)第442号

ポイント・解説

最高裁は、基本給等の待遇差について、不合理ではないと判断しました。

最高裁は、
  • 再雇用された労働者の基本給は、定年退職時における基本給の額を上回る額に設定していること 。
  • 再雇用された労働者音の歩合給は、正社員の能率給にかかる係数の約2倍から3倍に設定されていること 。

組合との団体交渉を経て、嘱託乗務員の基本賃金を増額し、歩合給に係る係数の一部を嘱託職員に有利に変更していることから、嘱託乗務員の基本賃金及び歩合給は、正社員の基本給、能率給及び職務給に 対応するものであることを考慮する必要があると判断しました。

その上で、
  • 再雇用された労働者は一定の要件を満たせば老齢厚生年金の支給を受けることができること。
  • 組合との団体交渉を経て、老齢厚生年金の報酬比例部分の支給が開始されるまでの間、調整給が支払われることから、 最高裁は、これらの事情を総合考慮した結果、正社員に対して能率給及び職務給を支給する一方で、嘱託乗務員に対して能率給及び職務給を支給せずに歩合給を支給するという待遇差は、不合理ではないとしました。

「基本給」の待遇差は違法となるのか?

違法となる場合があります。
前述した通り、待遇差が違法かどうかは、その待遇差が不合理であるか否かで判断されます。
そのため、「基本給」の待遇差が不合理と判断されれば、違法となります。

どの程度の差があると違法とされるのか?

基本給の待遇差について、有期雇用労働者であることを理由とした待遇差である場合には、パートタイム有期雇用労働法9条に反して違法となります
また、パートタイム有期雇用労働法9条に反していなくても、職務の内容、職務内容及び配置の変更、その他の事情のうち当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、基本給の待遇差が不合理であると認められれば、パートタイム有期雇用労働法8条に反して違法となります。
上記判断基準から分かるように、基本給の待遇差の程度だけで判断されるわけではなく、従業員が職務を遂行する上での能力や経験等の個別的事情を考慮して、待遇差を設けることについて、不合理か否かが判断されます。そのため、従業員間で業務遂行能力や経験が同一であるにもかかわらず、基本給に関する待遇差があれば、違法となる可能性が高いです。

「賞与」に関する待遇差も違法か?

賞与に関する待遇差も違法になる場合があります
賞与であって、会社の業績等への労働者の貢献に応じて支給するものについては、同一の貢献には同一の、違いがあれば違いに応じた支給を行わなければなりません。そのため、従業員間で業績への貢献が同一であるにもかかわらず、賞与に関する待遇差があれば、違法となる可能性が高いです。

定年後再雇用する際の注意点

定年後再雇用する際には、以下のような注意点があります。

同一労働同一賃金に違反した場合のペナルティ

同一労働同一賃金に違反しても罰則はありません。
もっとも、罰則がないからといって、対応を怠り、従業員間の待遇差を放置してしまうと、従業員の労働意欲の低下を招き、従業員から待遇差に関する紛争(訴訟等)に発展する可能性もあります
また、行政による会社への助言や指導等が行われる可能性があります。

定年後再雇用における同一労働同一賃金で企業に求められる対応

これまで述べたとおり、不合理な待遇差はパートタイム有期雇用労働法8、9条に違反する可能性があります
そのため、紹介した裁判例を踏まえて、従業員の能力、経験といった個別的事情や業績への貢献等を踏まえて、不合理な待遇差を設けないようにする必要があります。

同一労働同一賃金に関するご相談は、労働問題に強い弁護士法人ALGにお任せ下さい。

待遇差が違法になるかどうかの基準は、画一的な基準ではなく、様々な要素を考慮して違法かどうかが判断されます。そして、従業員への待遇差が違法になるか否かの判断には、これまでの裁判所の判断の分析を行うことや労働法に関する専門的知識が不可欠です。当法人においては、様々な労働問題を取り扱っておりますので、同一労働同一賃金に関するご相談についても、当法人にお任せください。

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監修:弁護士 長田 弘樹弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長
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