労務

賃金仮払いの仮処分とは?企業がとるべき対応方法

大阪法律事務所 所長 弁護士 長田 弘樹

監修弁護士 長田 弘樹弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長 弁護士

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労働者との紛争においては、後述する賃金仮払い仮処分がなされることがあります。

同処分がみとめられれば、企業は、労働者に対し、一定額を、一方的に、支払わなければなりません。

また、一度支払った金銭については、回収することも困難です。

本稿では、賃金仮払いの仮処分とはどういったものか、企業側としてどういった対応を取るべきかについて、ご説明していきます。

賃金仮払いの仮処分とは?

そもそも仮処分とは?

仮処分とは、一定の要件が認められる場合に、訴訟の結論が出るよりも前に、暫定的な措置を認める処分です。

労働問題における仮処分には、2つの手続が存在し、労働者が何を求めるのかによっていずれを選択するのか、あるいは、両方を選択するのかが判断されます。

1つ目は、地位保全の仮処分です。

企業と労働者の間の紛争において、争いのある権利関係につき、暫定的に地位を定めるよう求める場合に利用されます。

2つ目は、本稿でお話しする賃金仮払いの仮処分です。

解雇や配置転換の有効性に関する紛争等において、判決が出るまでの間、一定額の金銭を企業から支払うよう、請求する際に利用されます。

賃金仮払い仮処分の要件

賃金仮払いの仮処分が認められるための要件は、一般的な仮処分手続と同様に、①被保全権利、②保全の必要性の2点です。

要件充足の有無を判断する事実認定のための証明は、疎明(一応確からしいと認められる程度の立証)で足ります。

被保全権利とは、労働者が有する、保全されるべき権利のことです。賃金仮払いの仮処分における被保全権利は、労働契約に基づく賃金請求権ということになります。

保全の必要性」はどのように判断されるのか? 

仮処分は、あくまで暫定的な措置であるので、それが認められるには、相応の必要性が必要です。

条文上は、「債権者に生ずる著しい損害又は急迫の危険を避けるためにこれを必要とするとき」(民事保全法23条2項)仮処分ができるとされています。

賃金の仮払いに関していえば、一般的には、賃金が支払われない以上、同労働者の生活は困窮していくものと言えますが、より個別的に、賃金の仮払いを要するような事情がないか、具体的には、貯金などの資産、固定収入、同居家族の収入の有無、家計の状況等をもとに判断していきます。

仮払いを免れるには?企業がとるべき対応方法

仮払いを免れるために企業としてできるのは、まず、労働者側の主張に対して、具体的な反論を行うことです。

仮払いの必要性がないことを基礎づける事情(十分な貯蓄があること、第三者からの援助が見込めること、再就職の予定があること、他に固定収入があること等)を主張していきます。

また、保全異議の申立てを行うことも可能です。

保全異議の申立てについて

保全異議の申立ては、仮処分の申立てを認容した命令について、命令を発した裁判所に対し行います。

申立てが行われると、口頭弁論又は当事者双方が立ち会うことのできる審尋期日において、審理が行われる必要があり、審尋の際には、第三者の審尋も可能となります。

このような手続によって、命令を発した裁判所が、慎重な手続によって改めて再審査を行います。

賃金仮払いの仮処分手続きの流れ

賃金仮払いの仮処分手続は、申立ての後、裁判所が、審尋期日を2~4回、2、3週間程度の間隔で開催し、心証を得て、仮処分の決定を行うという流れで進みます。

手続の中では、債務者が立ち会うことができる審尋期日を経ることが必要です。

決定ではなく、裁判官からの和解勧告がなされ、和解によって終了することもあります。

このように、仮処分手続は他の手続に比べて素早く進むため、企業としても、迅速な対応が必要となります。

賃金仮払いの仮処分が認められる金額・期間

賃金仮払いの仮処分において、一般的な労働者は、企業から支払われる賃金が唯一の収入源であると考えられることから、それが絶たれる以上、保全の必要性も基礎づけるものと言えそうです。

もっとも、仮処分が暫定的な措置であり、保全の必要性のある状況を避けるためのものであること、仮払金を支払い続けなければならず、その回収可能性が不明であるという点で企業にも負担があるため、仮処分が認められる金額や期間については一定の制限がなされています。

仮処分が認められる金額

賃金仮払いの仮処分が認められる金額は、事案によって様々です。

上述したような仮処分の性質を加味して、基本的な傾向としては、従前の賃金全額ではなく、労働者本人とその家族の生活に必要な限度で認められるものと言えます。

著しい損害を避けるために必要な額は、ローンや学費負担の状況など、当該労働者の家計の状況等、個別的な事情に基づいて判断されます。

仮処分が認められる期間

賃金仮払いの仮処分が認められる期間についても、一定の期限が設けられています。

一般的には、「本案訴訟の第一審判決に至るまで」や「仮処分決定から1年間」とされます。

仮処分が暫定的な措置に過ぎないことや労働者の再就職の可能性があること、仮払金を支払い続けなければならず、その回収可能性が不明であるという企業側の不利益の抑制などの観点から、このような期限が設けられていると考えられます。

また、申立時点までの賃金については、それまでは生活できていたと判断されることから、一般的には保全の必要性が認められず、仮処分もできないと判断されます。

解雇を巡る紛争や仮処分への対応でお困りなら、弁護士法人ALGにご相談下さい。

これまで、賃金仮払いの仮処分について解説してきましたが、実際の手続に際しては、具体的な事実を論理的に主張していく必要があります。

仮処分が申し立てられた経緯となる解雇等の労働関係を巡る紛争に関しては、裁判例等も踏まえたより専門的な知識が必要です。

こういった問題に直面され、対応に困った際には、ぜひ一度、弊所までご相談ください。

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