子供の認知とは?認知が必要なケース、養育費や戸籍について

離婚問題

子供の認知とは?認知が必要なケース、養育費や戸籍について

大阪法律事務所 所長 弁護士 長田 弘樹

監修弁護士 長田 弘樹弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長 弁護士

嫡出子は、特別な手続きを経なくとも夫が父親であるとされています。
これに対して、非嫡出子については、父親の「認知」がなければ、法律上の父子関係は認められません
では、父親による認知がなく、法律上の父子関係が認められなければどうなるのでしょうか。また、父親が自分から認知をしなかった場合、どうすれば認知してもらえるのでしょうか。

この記事では、子供の認知の気になるポイントについて解説していきます。本稿を読めば、「認知」とは何かがわかるようになっているため、認知に関心を持っている方は是非ご一読ください。

なお、法律上明確に定義がなされているわけではありませんが、一般的には婚姻している夫婦間の子どもを「嫡出子」、そうでない子どもを「非嫡出子」といいます

目次

子供の認知とは

認知とは、非嫡出子を父が自らの子であると認め、それにより法律上の父子関係を創設する法律行為です。

たとえ血縁上の父子関係が存在していたとしても、ただちに法律上の父子関係が認められるわけではありません。

法律上の父子関係を生じさせるために、認知が必要になる場合もあります。

認知が必要になるケース

認知は、父親に婚姻外の女性との間に生まれた非嫡出子がいる場合に必要となります。
妻が婚姻中に懐胎した子などは後述する嫡出推定制度により嫡出子として扱われます。
そのため、婚姻関係にない男女の間で生まれた子供などの嫡出推定が及ばない場合には、基本的に認知が必要となります。

子供を認知しないとどうなる?

子供を認知しないと、父親と子供の間に法律上の父子関係が生じません
そして、法律上の父子関係が生じなければ、①戸籍に父子関係が載らない、②父親は子供に対して養育費の支払義務を負わない、③父親と子供の間で相続が発生しない、④父親が子供の親権者に定められないことになります。

嫡出推定制度について

民法では、妻が婚姻中に懐胎した子を夫の子であると推定するとされています(民法772条1項)。

もっとも、いつの時点で懐胎したかは明確とならない以上、婚姻期間と懐胎の時期によっては「婚姻中に懐胎した」かがわからないこともあります。
そこで、婚姻の成立の日から200日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定するとされています(民法772条2項)。

これらをまとめると、「婚姻の成立の日から200日を経過した後から婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、夫の子であること」が推定されます。
この嫡出子であることを推定する制度を嫡出推定制度といいます。

嫡出推定がなされると、嫡出否認の方法によらなければ、この推定を覆すことはできません。

子供が認知されたときの効果

戸籍に記載される

まず、父親が子供を認知した場合には、父親の戸籍に子を認知した旨の記載がなされます。具体的には、認知日、認知した子供の名前、認知した子の戸籍が記載されます
また、母親の戸籍の子供の「父親」の欄に父親の氏名が記載され、「身分事項欄」に父による認知がされたことが記載されます。具体的には、認知日、認知者の氏名、認知者の戸籍が記載されます。

養育費を請求できる/支払義務が生じる

父親が子供を認知した場合、法律上の父子関係が生じることから父親は子供に対して扶養義務を負うことになります。
したがって、子供や母親は、扶養義務を負っている父親に対して、子供の養育費を請求することができ、父親は養育費を支払わなければなりません。

認知後の養育費はいつから請求できる?過去の分は請求可能?

養育費の始期については、権利者が義務者に対して、養育費の請求の意思表示をした時と考えられているため、原則として過去の分は請求できません。
もっとも、認知によって法律上の父子関係が生じた同じ非嫡出子の場合には、認知以前の養育費について、子の出生時まで遡り、過去の未払養育費の請求を認めた事例があります(大阪高決平成16・5・19家月57・8・86)。

過去の未払養育費については、無制限に過去に遡って請求が認められるわけではなく、事案に応じた判断がなされていれています。
過去の未払養育費全額が当然に認められるものではありませんが、事情によっては請求できることもあります。

子供に相続権が発生する

父親が子供を認知した場合、法律上の父子関係が生じることから、父親と子供の間で相続が発生することになります
したがって、父親が亡くなった場合には、子供が父親の財産を相続することができ、反対に子供が亡くなった場合に父親が子供の財産を相続することもあります。

また、非嫡出子であっても、嫡出子と法定相続分を有しているため、非嫡出子であることが法律上相続の場面で不利になるものではありません。
もっとも、非嫡出子で父親と関わりがなかった場合には、父親の遺産が全く分からないことが通常であるため、負債も含めた遺産の調査をしっかり行う必要があります。

父親を親権者に定めることができる

非嫡出子の親権は、母親の単独親権です。

しかし、父親が認知した後であれば、協議によって父親を親権者として定めることもできます。
そして、父親と母親の間で協議が調わない場合には、家庭裁判所に親権者変更調停・審判を申し立てることによって父親に親権者を変更するよう主張することもできます。

もっとも、少なくとも現状では、父親が親権者へと変更されるのは、よほどの事情がある場合に限られており、通常父親への親権者変更は許可されづらい傾向にあります。
共同親権の導入が実務に与える影響も未知数であるため、今後の動向を注視する必要があります。

子供の認知の種類

認知には、任意認知と強制認知がありますが、任意認知にも届け出による認知と、遺言による認知があります

以下では、任意認知(届出による認知)、任意認知(遺言による認知)、強制認知の順番でそれぞれについて解説します。

任意認知(届出による認知)

任意認知は、父親がその子について父子関係があることを自ら認める方法です。
任意認知は、認知する父親が、父親もしくは子の本籍地、または、父親の所在地の市区町村に認知届を届け出ることで行います。

もっとも、認知される子供が胎児段階の場合には母親の承諾、認知される子供が成年の場合には子の承諾が必要となります。

任意認知(遺言による認知)

任意認知は、認知する父親の遺言でもできます(遺言による認知)。
遺言による認知は、遺言者の死亡と同時に認知の効力が生じますが、遺言執行者による市区町村への届出が必要となります。

したがって、遺言で遺言執行者を定めておく必要があります。
胎児の認知や成年の子の認知に必要な母親や子の承諾については、遺言者である父親の死亡後でもよいとされています。

強制認知(話し合いで拒否された場合)

強制認知は、父親が任意認知をしない場合に、母親や子が裁判所に認知の訴えを提起し、判決によって強制的に父親に認知させる方法です。

認知の訴えは、調停前置主義が採られているため、まずは家庭裁判所に調停を申し立てなければなりません。

調停が不成立となった場合には、認知の訴えを提起し、血縁上の父子関係の存在を証明することによって、裁判所に認知する旨の判決を求めていくことになります。

①家庭裁判所に認知調停を申し立てる

認知を請求する場合には、まず、家庭裁判所に認知調停を申し立てることが必要となります。
調停手続は、あくまで裁判所を入れた話し合いによる解決を目指す手続きであるため、父親が認知することに合意しなければ、調停が成立することはありません。
調停が不成立となった場合には、家庭裁判所に認知の訴えを提起することになります。

②家庭裁判所に認知の訴え(裁判)を提起する

認知の訴えが認められるには、認知される子が認知を強制させられる男性の血縁上の子供であることを証明することが必要です。

近年では、DNA鑑定の普及により、父子関係の存否を高い精度で判定できるようになり、父子関係の証明は容易になりました。もっとも、男性が鑑定への協力を拒否した場合には、母親の懐胎可能時期に父親とされる男性との間に性的関係があったこと、他の男性と性的関係がなかったこと、血液型検査の結果と矛盾しないことといった、父子関係があることを裏付ける事実を主張立証することが必要となります。

認知の判決が確定すると、子の出生時から、父親との間で、法律上の父子関係が存在していたことになります。

認知の訴えはいつまでできるのか?

認知の訴えは、父親の生存中いつでも提起することができます

これに対して、父親が死亡している場合には、父親の死後3年間に限定されます。もっとも、かかる期間内に提起できなかったとしてもやむを得ない場合には、3年が経過した後でも提起できることもあります。

あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います

離婚問題ご相談受付

0120-979-039

24時間予約受付・年中無休・通話無料

メール相談受付
離婚問題の経験豊富な弁護士にお任せください

子供の認知を取り消すことは可能か?

子供を認知した場合には、原則として取り消すことはできません

もっとも、認知につき母親や子供本人の承諾が必要な場合に、承諾がないにもかかわらず認知の届出が受理されてしまった場合、既に他人との間で父子関係が存在するにもかかわらず、認知の届出が誤って受理されてしまったなどの場合には、認知の取消しの訴えを提起することで、認知を取り消すことができます。

血縁関係のない子を認知してしまった場合は?

血縁関係のない子を認知してしまった場合には、認知は無効となります。

父親が血縁関係のない子を自己の子と誤信して認知した場合のみならず、父親が子との間に血縁関係がないことを知りながら認知した場合であっても、認知は無効となります。
認知が無効であったことを明らかにするために、認知無効の訴えを提起することができます。

弁護士が立証したことにより、相手方への認知請求が認められた事例

依頼者は当時海外にいる外国人の夫(以下、「前夫」といいます)と婚姻関係にありましたが、不仲から既に別居しており、日本国内において相手方との子を妊娠しました。その後、前夫とは離婚の上、相手方と結婚し、依頼者を出産しました。しかし、前夫との婚姻期間中に懐胎したことから、前夫の嫡出子であることになってしまったため、相手方への認知請求を行うことが必要になりました。

弁護士は、認知の訴えを提起し、訴訟において、①血液型からして父子関係があることと矛盾しないこと、②妊娠当時前夫は海外におり、接触する機会もなかったこと、③依頼者の容姿が日本人顔であったことを立証することで、相手方との父子関係の存在を証明しました。

これによって、相手方への認知請求が認められました。

子供の認知に関するQ&A

不倫相手との子供を認知したら妻にバレますか?

認知をした場合、子供の戸籍に父親の名前が載るのみならず、父親の戸籍にも不倫相手との子供を認知したことが記載されます。
したがって、妻が自分の戸籍を見ると、認知したことや、その前提となる不倫をしたことがバレることになります。
そして、認知された子供の記載事項として不倫相手の氏名や不倫相手の本籍地もわかるため、不倫相手に慰謝料請求がされる可能性もあります。

認知された子供はどこで確認ができますか?

認知された子供は、子供の戸籍に父親による認知がされた事実が記載されます。
したがって、認知された子供であるかは、母親の戸籍の子供の記載欄や、既に結婚などにより母親の戸籍から抜けている場合には、子供の本人の戸籍から認知された子供であることが確認できます。

認知された子供は父親の氏(姓)を名乗れますか?

非嫡出子は、出生時に母親の氏を取得しますが、認知されただけでは父親の氏を取得することができません。
認知された子供が父親の氏を名乗るには、子の氏の変更の手続を経る必要があります。

認知した子供のDNA鑑定を行った結果、親子の可能性0%でした。支払った養育費を取り返すことは可能でしょうか?

認知した子供との間に、血縁上の父子関係が存在しなかった場合には、認知は当然に無効となり、法律上の父子関係もなかったことになります。
そして、養育費支払義務が生じるのは法律上の親子関係がある場合であるため、法律上の親子関係がないのであれば、養育費を支払う義務はなかったことになります。
そうであるにもかかわらず、養育費を支払ってしまっていたのであれば、法律上の原因のない支払いであり、不当利得返還請求によって取り戻すことができる可能性があります。

子供の認知で不安なことがあれば、お気軽に弁護士にご相談下さい。

本稿では、子供の認知について解説してきました。

母親としては、父親から養育費をもらわないと子供を育てられないが認知してくれるのか、父親としては、本当に自分の子供かわからないのに認知してしまってもいいのかなど、母親と父親どちらの立場からしても子供の認知には不安はつきものです。

子供の認知で不安なことがあれば、まず弁護士に相談することが大切です。
弁護士は、子供の認知に関して抱えている不安を解消できるよう法律の専門家として方策を提示し、解決に導きます。
子供の認知で不安なことがあれば、弁護士法人ALGにご相談ください。

大阪法律事務所 所長 弁護士 長田 弘樹
監修:弁護士 長田 弘樹弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長
保有資格弁護士(大阪弁護士会所属・登録番号:40084)
大阪弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。