監修弁護士 長田 弘樹弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長 弁護士
婚姻費用算定表とは
婚姻費用の算定は、簡易迅速にされる必要があり、かつ、内容の合理性・当事者双方にとっての公正性も欠かせません。そこで、裁判官を中心とする研究会が立ち上げられ、平成15年に、新たな算定方式及び算定表が発表されました。これを、それぞれ「標準算定方式」・「標準算定表」といいます。
標準算定方式・算定表は、社会実情の変化に応じて改定されながら、全国の家庭裁判所において広く活用され、実務に定着するに至っています。
婚姻費用算定表の使い方
婚姻費用算定表は、算定される養育費の分担額を1~2万円の幅を持たせ、子供の人数と年齢に応じた構成となっています。
以下では、使用方法を確認してみましょう。
お互いの年収を調べておく
婚姻費用算定表は、権利者及び義務者の総収入(年収)に基づき、婚姻費用の分担額を導き出すものです。まずは、お互いの年収を調べておきましょう。
給与所得者の年収の調べ方
- 源泉徴収票
- 課税証明書
を入手しましょう。源泉徴収票であれば「支払金額」が、課税証明書であれば「給与収入」が総収入に当たります。
源泉徴収票の入手が困難であれば、課税証明書を市役所等で取得するのが簡便です。同一世帯の親族(本人と住民票記載の住所が同じ親族)であれば、本人自署の委任状なくして取得可能です。
自営業者の年収の調べ方
- 確定申告書の控え
- 課税証明書
を入手しましょう。確定申告書の「課税される所得金額」が婚姻費用算定の総収入に当たります。
確定申告書の控えが手元になければ、給与所得者の場合と同様に、市役所等にて課税証明書を取得するのが簡便です。
裁判所のHPから最新版の婚姻費用算定表をダウンロードする
養育費・婚姻費用の算定表は、裁判所のHPに掲載されています。
この算定表は、算定される養育費・婚姻費用の分担額を1~2万円の幅を持たせて整理し、子どもの人数(0~3人)と年齢(0~14歳と15歳以上の2区分)に応じて構成されています。
裁判所のHPでは、表10~19が婚姻費用の算定表となっています。
支払う側と受け取る側の年収が交わる箇所を探す
算定表の横軸には権利者(支払う側)の年収が、縦軸には義務者(受け取る側)の年収が記載されています。 権利者及び義務者の収入欄を給与所得者か自営業者かの区別にしたがって選び出し、権利者の収入欄を上に、義務者の収入欄を右に伸ばします。両者が交差する欄の額が、標準的な婚姻費用の分担額となります。
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婚姻費用算定表が自分のケースに当てはまらない場合
子どもが4人以上いる場合や、給与所得者で年収が2000万円を超える場合等、婚姻費用算定表が自分のケースに当てはまらないことがあります。
こういった場合、標準算定方式で算出できることがあります。
婚姻費用の計算式は以下のとおりです。
{(義務者の基礎収入+権利者の基礎収入)×(権利者の生活費指数+子どもの生活費指数)÷(義務者の生活費指数+権利者の生活費指数+子どもの生活費指数)-権利者の基礎収入}÷12か月=1か月あたりの婚姻費用
婚姻費用算定表に関するQ&A
婚姻費用を算定表より多くもらうにはどうしたらいいですか?
あくまで算定表は、家庭裁判所が判断するにあたって採用されるものなので、当事者間の交渉では、算定表から導かれる金額以上の婚姻費用を支払うとの合意をすることは可能です。
とはいえ、権利者が婚姻費用を任意に支払わず、調停や審判の場で争うとなれば、算定表どおりの金額が前提とされることになります。こういった場合には、個別の事案に応じて、妥当な婚姻費用の金額及びその理由を主張していきます。たとえば、権利者の総収入がもっと高いこと等の主張立証が考えられます。
給与所得者である権利者の年収が350万~450万で、義務者が無収入の場合は、婚姻費用相場が6万~8万となっているのですが、年収450万円に近ければ8万円という考え方で良いのでしょうか?
義務者の年収と権利者の年収との交差点が、算定表の枠内の上限に近ければ、上限値を基本に調整することになります。したがって、この原則に当てはめると、上記の条件では、8万円を基本に調整していくことになるでしょう。
但し、後述するとおり、権利者が無収入である場合であっても、潜在的稼働能力があるものとして、一定の収入を推計して分担額を算出することがあります。
婚姻費用算定表の金額に、子供の学費は含まれていますか?
算定表においては、公立学校・公立高等学校に関する学校教育費を考慮していますが、子どもが私立学校や学習塾に通っている場合の費用等については、考慮していません。
しかし、義務者が別居前に子どもが私立学校に進学することを了承していたり、義務者の学歴や収入、資産状況等からみて私立学校や学習塾の費用等を、義務者に負担させることが相当であると認められる場合には、私立学校の費用等を義務者に負担させるべきと考えられます。
専業主婦は収入0のところを見ればいいでしょうか?年収100万円として考えることもあると聞いたのですが…
算定表は、権利者と義務者の収入によって婚姻費用を算定するので、無職であれば、原則、収入がないものと扱います。しかし、働こうと思えば働けるにもかかわらず、働こうとしない場合に、収入がないものと扱うのは公平性に欠けます。そこで、潜在的稼働能力(働こうと思えば働くことのできる能力)があるものとして、収入を推計して分担額を算出します。
したがって、専業主婦であっても、子供の年齢や健康状態次第では潜在的稼働能力が認められ、扶養範囲内で収入が推計されることがあり得ます。
年金生活者です。年金を収入と見なして婚姻費用算定表を使えばよいでしょうか?
年金所得については、職業費(給与所得者として仕事をするために必要な出費。例 被服費、交通費、交際費等。)がかかっていません。したがって、年金額をそのまま給与所得額として扱うのではなく、職業費の割合分(概ね15~20%程度)を考慮することになります。具体的には、年金額を0.8〜0.85で割った額を給与所得として算定表を用いてください。
弁護士がそれぞれの事情を考慮して婚姻費用を算定します
婚姻費用算定表は、子どもが4人以上の場合や、義務者の収入が2000万円を超える場合に対応していません。また、子どもが私立学校や学習塾に通っていたり、特別の習い事をしていたりする場合、算定表はそのような費用を前提としていません。
婚姻費用でお悩みの方は、ぜひ弁護士にご相談ください。
個別の事情に応じて相当額の婚姻費用を算定いたします。
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保有資格弁護士(大阪弁護士会所属・登録番号:40084)