遺産分割調停の流れとメリット・デメリット

遺産分割調停の流れとメリット・デメリット

家族が亡くなった際、相続が発生します。どのように遺産を分けるかについて相続人間で話合えば問題ないと考えられている方も少なくないかと思いますが、実際に相続が発生した場合に、これまで仲の良かった家族であっても、自らの取り分を多く主張したり、他の相続人の取り分について少なく主張したりと、遺産の分割について当事者だけでは解決できない事態が生じ得ます。その場合に利用できる手続きとして、遺産分割調停があります。

以下、遺産分割調停について解説させていただきます。

遺産分割調停とは

遺産分割調停とは、亡くなった被相続人の遺産を、相続人間でどのように分割するかの話し合いがまとまらない場合に、家庭裁判所へ申立てをして利用することができる手続きです。調停には、原則として相続人全員が参加し、調停委員会が、各相続人がどのような分割を望んでいるかという意見を聞き取りしたり、必要に応じて遺産の資料等の提出を促したりします。そのような手続きを進める中で、調停委員会が遺産分割の話し合いがまとまるように解決案を示したりするなどして、相続人間での合意の形成を目指していきます。

遺産分割調停の流れ

以下では、遺産分割調停の申立てにあたっての準備段階から調停の終了までの流れの中で、ポイントとなる部分について概説させていただきます。

必要書類を集める

遺産分割調停の申立てにあたっては、以下の書類が必要となります(なお、相続人が誰であるのか、相続人と被相続人はどのような関係性なのかによっては、上記以外にも必要な提出書類があります)。

①被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
②相続人全員の戸籍謄本
③被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している者がいる場合、その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
④相続人全員の住民票又は戸籍附票
⑤遺産に関する証明書(不動産登記事項証明書及び固定資産評価証明書、預貯金通帳の写し又は残高証明書、有価証券写し等)

各書類は、戸籍謄本は本籍地の市区町村役場へ、住民票については住所地の市区町村役場へ請求することにより取得することができ、窓口での取得以外に、郵送での取得も可能です。なお、出生時から死亡時までのすべての戸籍を取り寄せる際には、本籍地が移動している場合もあるので、まずは最後の本籍地から戸籍謄本を取り寄せ、そこに記載されている転籍前の本籍地へさらに請求するという形を繰り返し、最終的に出生時の戸籍を取得するという流れとなります。

相続人全員の住所が必要なことに注意が必要

上記2.1で挙げた必要書類の中に、「相続人全員の住民票又は戸籍附票」がありますが、これは、相続人全員の住所が必要であることを示しています。 遺産分割は相続人全員で行わなければならず、相続人のうち一人でも参加しない者がいた場合には、その遺産分割は無効となってしまいます。 したがって、相続人全員の住所が判明しないまま、遺産分割調停を申立てたとしても、家庭裁判所には受理してもらえません。

未成年・認知症の相続人がいる場合は代理人が必要

相続人全員の住所が判明している場合であっても、相続人の中に未成年者や認知症の相続人がいる場合には、そのまま調停を申して立てることはできず、代理人が必要となります。 まず、未成年者が相続人の場合には、通常は親が子の代理人となりますが、相続の場合には親子が共に相続人となるため利益相反にあたり親が代理人になることができない場合があります。この場合には家庭裁判所に特別代理人の選任を求める必要があります。 次に、認知症の相続人の場合には成年後見制度を利用し、選任された成年後見人を代理人として遺産分割をすることが考えられます。成年後見人は、本人又は親族の申立てにより家庭裁判所が選任します。なお、認知症の程度によっては保佐人、補助人の同意のうえで、本人が遺産分割調停に参加することとなる場合もあります。

管轄の家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てる

上記の必要書類がそろったところで、遺産分割調停申立書を作成し、これらを家庭裁判所に提出をして調停を申し立てます。その際、どこの家庭裁判所へ申し立てればいいかというと、申立人以外の相続人の住所地を管轄する家庭裁判所または相続人で協議して合意した家庭裁判所のいずれかとなります。 なお、申立書等の書類は、窓口へ持参して提出することもできますが、郵送にて提出することも可能です。

申し立てにかかる費用

遺産分割調停の申立てにかかる費用としては、まず被相続人1人につき収入印紙1200円が必要となります。また、連絡用の郵便切手代も必要となりますが、こちらについては、申し立てる家庭裁判所によって額が異なりますので、直接申し立てる家庭裁判所へお問い合わせください。

2週間程度で家庭裁判所から呼出状が届く

申立てが受理されると、約2週間程度で申立人、相手方すべての相続人に呼出状が届きます。呼出状には、遺産分割調停が行われること、第1回期日の日時、場所等が記載されています。裁判所によっては、事情説明書のような書面が添付されており、第1回期日までに提出するようにと指示が記載されている場合もありますので、必要に応じて提出書面を準備し、提出します。

調停での話し合い

調停での話し合いは、調停委員2名と各相続人で行われます。第1回期日では顔合わせとして、相続人全員が同席することもありますが、その後は各相続人が交互に調停委員のいる調停室に呼ばれ、それぞれの意見を調停委員に伝え、調停委員が合意に向けて意見の調整をはかりつつ話し合いを進めていきます。なお、調停委員会は調停官と呼ばれる裁判官も含め3名で構成されていますが、通常の調停期日で裁判官は同席しておらず、調停委員2名が裁判官の意見を聞きながら調停を進めていきます。 第1回で話し合いがまとまることは稀ですので、第2回、第3回…と期日が続いていき、合意に向けて調停が進められていきます。

調停成立

調停で話し合いがまとまれば、調停成立となります。合意の内容は「調停調書」に記載され、相続人全員の前で読み上げられます。内容に誤りがないか相続人全員が確認の上、調書が作成されます。この調停調書は、訴訟における確定判決と同じ効力を持ち、記載された内容で強制執行することが可能となる「債務名義」となります。仮に調停で決まった内容を履行しない相続人がいる場合には、この調停調書を債務名義として裁判所に強制執行を申し立て、調停で決まった内容を実現させることが可能となります。

成立しなければ審判に移行する

調停で話し合いがまとまらず、調停不成立となった場合には、自動的に遺産分割審判へ移行します(改めて審判を申し立てるという手続きは必要ありません)。遺産分割審判とは、調停のように相続人間での合意を形成するものではなく、裁判所が判断をくだすという手続きです。よって、これによって最終的な決着をつけられることとなります。

調停不成立と判断されるタイミング

調停不成立と判断されるタイミングですが、調停の●回目までにまとまらなければ不成立というような回数の限度はありません。調停を進める中で、これ以上話し合いを続けても、平行線をたどり合意を形成できる見込みがないと調停委員会が判断した場合に、調停不成立となります。

遺産分割調停にかかる期間

遺産分割調停が開かれる頻度は、1~2か月に1回程度で、調停開始から終了までの期間は、個別の案件により異なりますが、平成30年度における平均期間は11.5月でした(裁判の迅速化に係る検証に関する報告書(第8回)。審判移行した場合は調停+審判の期間を含む。)。もっとも、遺産分割の内容が複雑になると、2~3年かかるものもあります。

1回の調停にかかる時間は約2時間です。なお、この時間は、各相続人が交互に調停室に入って話をするため、他の相続人が調停室で話をしている間の待ち時間を含めた時間です。

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遺産分割調停のメリット

遺産分割調停を行うことは、以下のようなメリットがあります。

冷静に話合いを行うことができる

遺産分割は、相続人同士で話し合いを進め解決できる場合もあります。もっとも相続人同士での話し合いは、往々にして感情的になりやすく、当事者だけでは話し合いをまとめることが難しいこともあります。そのような場合には、第三者である調停委員会にそれぞれの相続人の意見を調整してもらえると、互いに冷静に話し合いを進めることができるというメリットがあります。

遺産分割を進めることができる

上述のとおり、相続人同士だけの話し合いでは、それぞれの意見がぶつかり、なかなか解決策を見いだせず、何も決められないまま何年も経過してしまうということもあります。それに対し、遺産分割調停であれば、決まった期日が指定され、期日では毎回話し合いを進めることができます。また、万一調停が不成立となっても自動的に遺産分割審判に移行し、裁判所が判断を下しますので、最終的な解決を得ることができます。

遺産分割調停のデメリット

遺産分割調停を行うデメリットとしては、以下のようなことが考えらえます。

希望通りの結果になるとは限らない

調停は、相続人それぞれの意見を出し合い、これを調整しながら合意形成を目指すという手続きです。したがって、それぞれが求める結論100%を主張し続けていては、調整は不可能です。時には、自分が納得のできる範囲で譲歩することも、合意形成には必要となりますので、その点においては、完全に希望通りの結果になるとは限りません。

長期化する恐れがある

上記3で説明したように、遺産分割調停には平均して約1年かかることとなります。期間については個別の案件次第とはなりますが、相続人同士であれば期間を詰めて協議することもでき、早く解決できる可能性もあります。それに比べると調停は1~2か月に1回の期日でしか話し合いは進められませんので、その点では、解決までに長期間がかかる可能性もあります。

基本的に法定相続分の主張しかできない

相続人同士の遺産分割協議であれば、話し合いの中で相続人全員が合意すれば、法律に縛られずに自由に遺産の分割方法を決定することができます。これに対して、遺産分割調停はあくまで裁判所における手続きですので、法律にしたがって、主張・立証していく必要があります。

遺産分割調停で取り扱えないもの

遺産分割調停では、取り扱えない問題もあります。

例えば、使途不明金です。使途不明金とは、被相続人の生前や死後、被相続人の預貯金から多額の引き出しがなされている場合等に問題となるものです。他の相続人が預貯金を勝手に引き出し、保有しているので、これも遺産分割の中で解決したいというご希望をお持ちの相続人の方も多いかとは思いますが、遺産分割調停では、遺産の範囲は確定されていなければなりませんので、遺産か否かがはっきりしない状態では遺産分割調停で取り扱ってもらうことはできません。使途不明金については、別途不当利得返還請求等の民事訴訟にて解決しなければなりません。

また、遺言書の効力についても、遺産分割調停では取り扱うことはできません。有効な遺言が存在するのであれば、原則としては遺言書どおりに遺産は分割されます。しかし、相続人の中で、遺言の効力に疑義を呈している者が、遺言書の内容には拘束されないと考え遺産分割調停を申し立てる場合も考えられます。もっとも、この場合遺言の効力については、遺言無効確認請求を別途民事訴訟にて解決しなければならず、調停で遺言の効力について取り扱うことはできません。

遺産分割調停を欠席したい場合

調停期日は、平日の日中に開かれ、土日祝には開かれません。お仕事等の都合で、なかなか出頭が難しい方もいらっしゃるかとは思います。その場合には、裁判所が認めれば、利益相反のない代理人(基本的には弁護士)を代わりに出頭させることも可能です。ただし、当該調停期日の内容によっては、本人の出頭が必要な場合もあります。

また、1回目の期日は裁判所が決定してしまってから連絡があるため、当該期日の日にすでに予定が入っている場合もあるかとは思いますが、その場合には、期日変更可能か一度裁判所へ問い合わせてみるという方法もあります(必ず変更できるとは限りません)。2回目の期日は、1回目の期日の最後に、相続人全員で日程の調整をして決められ、以降の期日も同様となります。

遺産分割調停の呼び出しを無視する相続人がいる場合

遺産分割調停の呼出状を受け取っているにもかかわらず、これを無視して調停期日に出頭しない相続人がいる場合には、何度か裁判所から呼出状が送られることになります。しかし、それでも呼び出しに応じない場合には、調停はあくまで相続人全員での話し合いが必要ですので、調停は不成立となり、審判に移行することになります。
なお、正当な理由なく出頭しない相続人に対しては、法律上、5万円以下の過料が課されます(家事事件手続法258条1項、51条3項)。

遺産分割調停は弁護士にお任せください

以上、遺産分割調停について解説してきましたが、遺産分割調停は、申立書の作成、必要書類の取り付け等の当初の段階から、調停への毎回の出頭、話し合いの中での法的な主張等、時間と労力、また法的知識が必要となる手続きです。 弁護士にご依頼いただければ、申立書の作成も弁護士が行い、戸籍の収集等もお任せいただけますし、調停の出頭にも弁護士が同席させていただきますので、法的な知識が必要となる調停委員会からの助言等も適切に理解することが可能となり、効果的に自身の意見を主張することも可能です。また、ご自身が万一出頭できない場合には、裁判所が認めれば代理人として弁護士のみが調停に出頭することともできます。

このように、遺産分割調停において弁護士が助力できる部分はたくさんありますので、相続・遺産分割調停に関してお悩みの方は、一度弁護士にご相談いただければと思います。

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この記事の監修

弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長 弁護士 長田 弘樹
弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長弁護士 長田 弘樹
大阪弁護士会所属。弁護士法人ALGでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。
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