
監修弁護士 長田 弘樹弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長 弁護士
離婚時には父母のいずれか一方を子の親権者として指定する必要があるところ、親権に関する争いのために離婚協議が成立せず、離婚調停が必要となるケースは少なくありません。
そこで本稿では、離婚調停において子の親権を獲得するために注意すべき点、また、離婚調停の流れ等について解説させていただきます。
目次
離婚調停で親権者を判断するポイント
離婚調停では、親権者を判断するポイントとして、どのような点が考慮されているのでしょうか。
以下では、特に重要なポイントについて、ご紹介いたします。
子供への愛情
父母を比較して、より子への愛情が深い方が、親権者にふさわしいと考えられます。
もっとも、「子への愛情の深さ」は内面の問題であり、比較することが難しいため、実際の比較にあたっては、これまでの子との関わり方から客観的に判断されます。
そのため、仮に相手方よりも子に対して深い愛情を有していたとしても、仕事等の都合で子と関わる時間が相手方よりも短い場合、親権者を判断するうえでは不利となる可能性があります。
今までの監護実績
監護実績は、親権者の判断にあたって、最も重要な考慮要素です。
監護実績は、子の日常的な世話をどの程度担っていたか、という点から判断されます。
もっとも、監護実績については客観的な証拠が残っていることが少ないことから、子と過ごす時間が長い方が、子の日常的な世話を担っていたと判断されやすい傾向にあります。
離婚後の養育体制
離婚後の養育体制が整っていることも、親権者の判断にあたって考慮されます。
この点については、子と過ごす時間を十分に確保できるか、子の監護養育について親族等から支援を受けられるか、子が経済的に困窮する恐れはないか、子の健やかな成長に適した居住環境・教育環境を整えられるかといった点が考慮されます。
子供の年齢、意思
子が15歳以上の場合には、子が自らの意思で親権者を選ぶことができます。
また、子が15歳未満であっても、10歳程度に達していれば、子の意思が尊重される傾向にあります。
親の健康状態
親の健康状態は、心身共に良好であることに越したことはありません。
もっとも、持病があったとしても子の監護養育に支障を来たすほど心身の状態が悪い場合を除いては、親権者としての判断に大きな影響を及ぼすことはありません。
親権者を決める際の離婚調停の流れ
離婚調停の流れは、おおよそ、以下のとおりです。
- ①家庭裁判所に対し、離婚調停を申し立てる
- ②裁判所から父母双方に対し、第一回期日の呼出状が配達される
- ③第一回期日が開催され、父母は調停委員を介して離婚について話し合う
- ④離婚についての合意が成立するまでの間、第二回期日以降も、上記③と同様の話し合いを継続する(但し、合意成立の見込みがないと判断された場合は、離婚調停は不成立となり、終了する)
※④~⑤の間で、調査官調査が実施され、調査官調査報告書が作成される
同報告書の作成後には、父母は同報告書の記載を参考にしながら話し合いを進めることになる - ⑤父母が合意できた場合には、調停が成立し、終了する
離婚調停の申し立て
離婚調停は、原則として、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に対し、申立書をはじめとする下記必要書類を提出のうえ、下記費用を納めることで、申し立てることができます。
もっとも、上記以外の書類についても提出が求められる可能性があるため、事前に申立先の家庭裁判所に確認しておくのが良いと思われます。
〔必要書類〕
- 申立書及びその写し 各1通
- 戸籍謄本
〔費用〕
- 収入印紙 1200円分
- 予納郵券 ※予納金額は家庭裁判所によって異なります
家庭裁判所調査官による調査
親権に争いがあるケースでは、家庭裁判所調査官が、子・父母との面談、父母宅の家庭訪問、子の通所・通園、通学先等の関係機関への訪問等を行い、子の監護状況、子の養育状況等を調査することがあります。
家庭調査官による調査結果は報告書のかたちで報告され、その調査結果を考慮の上、親権者の判断が行われます。
離婚調停で親権者が決まらず不成立になった場合
離婚調停での話し合いを経ても父母の間で親権者が決まらない場合は、離婚調停は不成立となります。そして、離婚調停が不成立となった後は、離婚訴訟において親権を争うことになるケースが多いです。
離婚訴訟においては、裁判所が父母のいずれか一方を親権者として定めることになります。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
離婚調停で親権を獲得するためのポイント
自分が親権者として適していることを主張する
子への愛情の深さ、今までの監護実績、今後の監護体制等について、具体的な事実の主張・客観的な証拠の提出を行うことで、こちらが親権者としてふさわしい旨を調停委員に伝えることが肝要です。
調停委員を味方につける
調停委員は、話し合いでの解決を実現するために、父母双方に対し、自らの意見や考えを示す立場です。そのような調停委員に対し、こちらが親権者としてふさわしいことを認識してもらうことができれば、調停委員から相手方を説得してもらえる可能性を高めることができます。
調査官調査に協力する
家庭裁判所調査官による調査は、「子の福祉」の実現に向けて、父母双方の親権者としての適格性を調べるために実施されます。
したがって、このような調査に協力すること自体が、「子の福祉」の実現を望んでいる事実の表れとなります。
離婚調停で父親が親権を獲得した解決事例
弊所において、ご依頼者様(父親)が親権を獲得された事例について、以下、ご紹介いたします。
【事案の概要】
ご依頼者様(父親)が子連れ別居を開始されたところ、相手方(母親)から面会交流調停・審判及び監護者指定・子の引渡し調停・審判が申し立てられ、親権獲得を前提とする離婚をご希望され、ご依頼いただいた事案です。
【解決方法・結果】
担当弁護士は上記調停・審判手続中、ご依頼者様側の監護実績の積み上げ及び証拠収集等に尽力し、その結果、相手方から申し立てられた監護者指定・子の引渡し調停での調査官調査の結果及び同手続の審判において、ご依頼者様に監護者としての適格性を認める内容の判断が示されました。その後、担当弁護士は離婚調停を申し立て、ご依頼者様の親権獲得を前提とする内容で、調停離婚成立を実現しました。
親権と離婚調停に関するQ&A
離婚調停中に相手方が子供を連れ去った場合、親権への影響はありますか?
相手方が子の連れ去った方法、理由が不当であれば、親権の判断において、こちらに有利となる可能性があります。他方、相手方が子の連れ去った方法、理由が不当とまでいえず、相手方の監護実績が多くなった場合には、こちらに不利に働く可能性があります。
離婚調停中に夫婦のどちらかが死亡してしまった場合、親権は自動的にもう一方が得ることになりますか?
離婚調停中に夫婦のどちらかが死亡してしまった場合、親権は自動的にもう一方の親が得ることになります。
離婚調停で決めた親権者を変更することはできますか?
離婚調停で決めた親権者を変更できる場合は、極めて限定的です。
具体的には、離婚調停成立時からの事情変更を考慮して、子の福祉の観点から、家庭裁判所が、親権者を変更する必要があると認める場合に限られます。
妊娠中に離婚調停を行った場合の親権はどうなりますか?
(1)離婚成立前に出生した場合
母のみならず、父も親権者となる可能性があります。ただし、子が乳児であり、父による監護実績の積み上げが考えにくいことを考慮すると、母が親権者としてふさわしいとされる可能性が相当程度高いものと見込まれます。
(2)離婚成立後に出生した場合
原則として、母のみが親権者となります。ただし、子の出生後に父母が協議することで、父を親権者とすることは可能です(民法819条1項ないし3項)。
離婚調停で親権を獲得したい方は、弁護士に依頼してみませんか?
以上のとおり、離婚調停において子の親権を獲得するためには、自らの親権者としての適格性を十分に主張立証すること等が極めて重要です。
もっとも、親権者としての適格性に関する主張立証に関しては、今までの監護実績、今後の監護体制等に関する具体的な主張のみならず、かかる主張を基礎づける証拠の提出が不可欠ですが、事実や証拠の収集・提出等に関しては、分かりづらい点が多々あることと存じます。
この点、当事務所の所属弁護士は、子の親権獲得に関して豊富な実績を残しておりますところ、親権獲得に関するお悩み・ご不明点等につきましては、ぜひ当事務所までご相談ください。
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保有資格弁護士(大阪弁護士会所属・登録番号:40084)