監修弁護士 長田 弘樹弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長 弁護士
婚姻しようと約束した後に、合意によらずに婚約を破棄した場合、相手方から婚約破棄の慰謝料を請求されることがあります。婚約破棄したことによって相手方から慰謝料を請求された場合について解説します。
目次
婚約破棄の慰謝料を請求されたら支払わなければならない?
①婚約が成立したこと、②婚約破棄に正当事由がないことの2つの要件を満たしているときに、慰謝料を支払わないといけません。
慰謝料を支払わなくてもいいケース
婚約が成立していない
婚約とは将来婚姻する旨の約束のことを指すので、そのような約束に至らない場合に婚約の成立が否定されます。例えば、単に交際していただけであれば、婚約が成立していません。当事者間で婚姻の話をしていたとしても、婚約指輪を渡しておらず、互いの親に婚姻の挨拶をしていないような段階であれば、婚約が成立していないと判断されることがあります。
婚約破棄の正当な理由がある
婚約破棄することに正当な理由がある場合にも慰謝料請求権は発生しません。例えば、相手方が別の異性と性的な関係に至ったこと、相手方から暴力を振るわれたこと、相手方の収入が著しく下がったこと等の事情があれば、婚約破棄の正当な理由があると判断されることがあります。
慰謝料請求の時効を迎えている
慰謝料請求権が発生していたとしても、消滅時効が完成していれば慰謝料を支払うことは必要ありません。
婚約破棄の慰謝料請求の時効は、婚約破棄から3年又は婚約破棄から5年です。どちらの期間になるかは法的に争いがある点なので弁護士にご相談ください。
婚約破棄の慰謝料相場はどれくらい?
婚約破棄の慰謝料の一般的な相場はありません。20万円~300万円程度が多く、事案によって幅があります。慰謝料額は、婚約破棄の態様や相手方が被った損害によって影響を受けます(交際期間や婚約期間の長さ、妊娠・出産・中絶の有無、婚約破棄時の年齢、別の異性と交際するための破棄かどうか等)。
請求された金額が妥当なのかわからない場合、どうしたらいい?
請求された金額が妥当なのかわからない場合、弁護士に相談してください。弁護士であれば、裁判例と比較して慰謝料額の見通しや落としどころを伝えることが可能です。
慰謝料の請求額を減額する条件とは
お伝えしたとおり、慰謝料額は、婚約破棄の態様や相手方が被った損害によって影響を受けます(交際期間や婚約期間の長さ、妊娠・出産・中絶の有無、婚約破棄時の年齢、別の異性と交際するための破棄かどうか等)。
例えば、交際期間が短い場合、婚約してから解消するまでの期間が短い場合、破棄された側が暴力を振るったり他の異性と性的関係をもつなど婚約破棄の原因を作った場合などは、慰謝料の減額が認められる可能性があります。
婚約破棄の慰謝料を請求された場合の対応
支払い義務があるかどうか確認する
①婚約が成立したこと、②婚約破棄に正当事由がないことの2つの要件を満たしているときに、慰謝料を支払わないといけません。
そのため、①②に該当するかどうか、事実確認を行うことが必要です。該当しなければ支払義務はありません。
無視は厳禁、連絡を取る
相手方から(裁判所を通さずに)慰謝料を請求されている場合(交渉といいます)、これを無視して連絡を放置すると、相手方から民事調停の申立てや民事訴訟の提起等の裁判所を介した紛争解決手段をとられる可能性があります。
裁判所からの連絡をも放置すると、相手方の言い分が通り相手方に有利な判決が出て、それに基づいて所有している財産について強制執行される危険があります。連絡を無視したり放置することは控えるべきです。
婚約破棄の慰謝料請求に関する解決事例
婚約破棄の慰謝料の減額に成功した事例
婚活サイトで知り合った男性が女性と知り合い、交際に至ったが、女性が別れを切り出したため、男性が女性に対して婚約破棄を理由とした慰謝料を請求した事件です。男性は500万円強を請求し、交際から約2週間後には婚約が成立した旨主張しました。女性の代理人である弊所の弁護士は、交際開始からわずか2週間で婚約することは通常考えにくいこと、明確なプロポーズがないこと、親への挨拶がないこと、結婚指輪を交付していないこと等を根拠にして、婚約が成立していない旨主張立証しました。弊所弁護士の訴訟活動が功を奏し、裁判所からは婚約は成立していないとの心証が開示され、約500万円の請求に対して、20万円の解決金を支払う旨の和解をすることで訴訟は終了しました。相手方の請求を大幅に減額できた事例です。
婚約破棄の慰謝料を請求されたら、弁護士にご相談ください
婚姻は婚姻届という明確な基準があるのに対して、婚約はその成立の基準が曖昧であり、婚約破棄の要件を充足しているかどうかについては専門的な知識が必要です。
また、既にお伝えしたとおり、慰謝料を減額するための要素は多数あり、弁護士であれば、これらの要素に該当する事実を引き出したり、証拠を収集することで、有利な交渉や訴訟活動を行うことが可能です。婚約破棄の慰謝料を請求されたら、弁護士にご相談ください。
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保有資格弁護士(大阪弁護士会所属・登録番号:40084)