監修弁護士 長田 弘樹弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長 弁護士
SNSが普及する昨今、LINE(ライン)のメッセージから不倫が発覚するケースは少なくありません。
夫婦は互いに貞操を守る義務を負っているため、夫婦の一方がほかの異性と性的関係を持てば、他方の妻又は夫の権利を侵害したことになります。そして、不貞行為をした夫又は妻と不貞相手は、他方の妻又は夫の精神的苦痛を慰藉すべき義務を負います。
以下では、LINEを浮気の証拠として慰謝料を請求することができるのか、また、LINEのメッセージを裁判で使うことのできる証拠にする方法についても解説します。
目次
浮気・不倫で慰謝料を請求するには証拠が必要!
浮気・不倫を理由に慰謝料を請求するためには、不貞行為を証明する証拠が必要です。
不貞行為とは、「婚姻している者が婚姻外の異性と自由な意思のもとに性的関係を結ぶこと」をいいます。
不貞行為を証明する証拠としては、例えば、配偶者が婚姻外の第三者と一緒にラブホテルに入って出てくる写真や動画などが挙げられます。
慰謝料を請求する相手方が不貞行為を認めている場合はさておき、往々にして不貞行為の有無が争われることがあります。不貞行為があったことは慰謝料を請求する側が立証しなければならないため、不貞行為の存在を証明するために証拠が必要となります。
LINE(ライン)にトーク履歴は浮気の証拠になる?
不貞行為があったことを証明するにあたって、LINEのトーク履歴も証拠になります。
ただし、LINEで不貞行為があったことを証明するには、メッセージのやり取りから性交渉を伴う男女関係、すなわち「明らかに肉体関係を持っている」事実が推認できることが必要となります。
「明らかに肉体関係を持っている」事実が推認できるやり取りとは具体的にはどのようなものなのか、以下で具体例とともに確認しましょう。
浮気の証拠として有効になるやりとりとは?
不貞行為の証拠として有効となるやり取りの例として、以下のようなものが挙げられます。
- 2人で一夜をともにしたことがわかるやり取り
- 2人で旅行に行ったことがわかるやり取り
- 同棲していることがわかるやり取り
- 性交渉をしている場面、相手や配偶者の性器の写真、裸の写真が添付されているやり取り
上記のようなやり取りは不貞行為があったと推認できるものです。また、このようなメッセージのやり取りのほかに、現実にいつどこで不貞行為が行われたのかについて、これを裏付ける資料をある程度準備することで、より不貞行為の立証が認められやすくなります。
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浮気の証拠がLINEのみだと慰謝料請求は難しい?
LINEのやり取りの内容によっては、不貞行為の証拠として弱い場合があります。
例えば、「愛しているよ」「大好きだよ」「会いたい」「この前の夜は最高だったね」「昨日は激しかったね」などの表現があり、不貞行為を疑わせたり相当親密であると疑わせたりするものであっても、それだけでは明らかに肉体関係を持っているとまでは判断されないことがあります。
もっとも、LINEのメッセージのやり取りのほかに、例えば、相手方宅への訪問やホテルへの宿泊など、現実に不貞行為が行われたことを裏付ける証拠と合わせることで、不貞行為があったと認定される可能性が高まります。
LINE以外で浮気の証拠になるものとは?
LINEのほかに不貞行為の証拠となるものとして、以下の例が挙げられます。
- 不貞相手と一緒にラブホテルに類するホテルに出入りするところを撮影した写真や動画
- クレジットカードの利用明細
- 交通ICカードの利用履歴
- ホテルや旅館等の領収書
特段の事情がない限り、ラブホテルに数時間ともに滞在すれば、不貞行為をしていると強く推認できるものとされています。なお、ホテルの種類によっては、性交渉以外の目的による宿泊の可能性が多少なりとも生じるため、例えば、ダブルベッドのある部屋での宿泊やカップル限定プランでの予約等の事実を合わせて立証することも考えられます。
LINEを裁判で使える証拠にする方法
慰謝料請求の裁判をする場合、「LINEで浮気相手とのやり取りを見ました」と証言するだけでは、裁判官に不貞行為の事実を認定してもらうことは困難です。
裁判官に不貞行為の事実を認定してもらうためには、証拠としての価値を認めてもらえるように準備する必要があります。
LINEの画面を写真撮影する
LINEのトーク履歴は転送できますが、「加工した」「それは私が書いたものではない」などと否定される可能性があります。もちろん、改変したとの相手方の主張に反論していくことも可能ですが、そもそも加工・偽造したという争い自体を回避するほうが望ましいでしょう。
したがって、LINEのやり取りを証拠として提出する場合には、「LINEの画面をそのまま撮影すること」が最善です。
加工・偽造の疑いを回避できることに加え、浮気が発覚した時に証拠隠滅のために消去された場合にも、強力な証拠となります。
LINE画面を撮影するときのポイント
①日付や時間、送信者がわかるように撮影すること
不貞行為がいつどこで行われたのかをより具体的に証明するため、LINE画面を撮影する際には、メッセージのやり取りが行われた日時がわかるように撮影することが必要です。
また、誰とのやり取りであるかも重要ですので、送信者のアカウントもわかるように写してください。
②不貞行為がはっきりわかる部分を撮影すること
不貞相手との肉体関係が明らかにわかるやり取りが重要です。性交渉があったことを推認させる部分を狙って撮影する必要があります。
③メッセージが長い時は前後がわかるように撮影すること
メッセージのやり取りを分割して撮影する場合には、やり取りが続いていることを明らかにするため、文頭と末尾の数行が重複するように写しましょう。スクロールさせていく様子を動画撮影することも有効です。
④スマホ本体の形状や機種が写るように撮影すること
誰のスマホかわからなければ、パートナーが浮気した証拠としては不十分となります。撮影するスマホ本体の形状や機種がわかるように写真を撮っておくとよいでしょう。
LINEのトーク履歴をバックアップする
LINEのトーク履歴をバックアップし、自分の携帯に送ることも有効な証拠となります。
LINEのトーク履歴は編集の疑いが生じるおそれがあるとはいえ、それ自体重要な証拠となることに変わりありません。バックアップしておけば、証拠隠滅として削除されても、本人以外の端末で復元可能となるので、証拠保全にも役に立ちます。また、LINEのトーク履歴が多く、すべてを写真撮影する時間がないときにも有効な手段といえるでしょう。
相手を説得してLINEを見せてもらう
相手のLINEをこっそり確認することが難しく、相手を説得して本人から見せてもらう必要がある場合があります。
その場合は相手を説得したり、不貞行為のほかの証拠を突き付けたりすることで、相手が自らスマホを差し出すことが考えられます。
なお、相手にスマホを見せることを強要すると、強要罪になるおそれがあるため注意が必要です。
LINEで浮気の証拠を掴むときの注意点
すでに申し上げたとおり、不貞行為の証拠としてLINEのやり取りは有効なものとなりえるものです。
ただし、証拠を入手するにあたって、相手のLINEを勝手に見るのは違法行為になる可能性があります。
以下で証拠取得に際しての注意点を確認しておきましょう。
相手のLINEを勝手に見ることは違法?
相手のLINEを勝手にみることは、刑法上の犯罪にはなりません。
しかし、「プライバシー権の侵害」として、LINEを勝手に見られたとして、相手から民事上の損害賠償を請求される可能性があります。もっとも、夫婦間で浮気の疑いが生じているなどの場合、プライバシー権の侵害の程度は低いものと判断され、損害賠償が認められるとしても低額にとどまることが想定されます。
なお、LINEのやり取りが、相手方の承諾を得ずに勝手に見たものであるとしても、不貞行為の証拠としての有効性には影響がありません。「LINEを勝手に見た」という事実が、LINEのやり取り内容の真実性に何ら疑義を生じさせるものではないからです。慰謝料請求の裁判においては有効な証拠となりますので、この点はご安心ください。
プライバシー侵害にあたるケース | 勝手にロックを解除して相手のスマホを盗み見た |
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プライバシーの侵害にあたらないケース | スマホのポップアップ通知を偶然見てしまった |
ID・パスワードを勝手に使うと不正アクセス禁止法違反
LINEのやり取りを確認するにあたって、自分のスマホやパソコンから相手のIDやパスワードを勝手に使ってログインしたり、アプリを開いたりすることは、不正アクセス行為(不正アクセス禁止法2条4項1号)に該当し、不正アクセス禁止法違反に該当します(不正アクセス禁止法3条)。
不正アクセス行為については、3年以下の懲役または100万円以下の罰金が定められており(不正アクセス禁止法11条)、刑事罰を受ける可能性があります。
また、相手のIDやパスワードを勝手に使用してログイン等をしたうえでLINEのデータを転送する行為についても、不正アクセス禁止法に違反するため注意が必要です。
相手が浮気を認めたら「不貞の自認書」の作成を!
LINEを証拠に相手が浮気を認めた場合には、「不貞の自認書」を書いてもらいましょう。
不貞の自認書とは、自らが不貞行為をしたことを認める旨を記載した文書をいいます。
これは、自分に不利益な事実を任意で認める内容の証拠になるため、不貞行為があったことを推認させる有力な証拠となります。
不貞の自認書を作成してもらう際には、浮気をした時期や相手方の名前など詳細な記載を、浮気をした本人に自筆で書かせ、自認書の作成年月日を記入するとともに署名捺印をしてもらいましょう。
なお、相手が浮気を認める発言をしている録音も有効な証拠となります。相手方に浮気の証拠突き付けたり、説得する際には、録音機を準備しておくことを検討してください。
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よくある質問
浮気相手とはLINEだけの関係で、不貞行為がない場合でも慰謝料請求できますか?
何が不貞行為となるのかについて、裁判例も一様ではありません。性交渉に至らなければ不法行為にならないとする裁判例と、性交渉がなくても性交渉に近い行為がされ、「婚姻共同生活の平和の維持」という法的に保護すべき利益を侵害したと評価される場合には、不貞行為に準じて不法行為となると判断する裁判例もあります。しかし、慰謝料を認とめた裁判例においても、少なくとも性行為に近い行為を要求しています。
したがって、不貞行為がない場合で、LINEで親密なやり取りをするにとどまっている場合にあっては、もちろん相手方に慰謝料を請求すること自体は可能ですが、裁判で慰謝料請求が認められる可能性は低いと言わざるを得ないでしょう。
LINEの証拠をもとに、浮気相手へ慰謝料を請求することは可能ですか?
不貞行為に基づく損害賠償請求として慰謝料請求する相手方は、パートナーだけでなく浮気相手も選択することが可能です。不貞行為は、行為に及んだ配偶者とその相手による他方配偶者に対する共同不法行為となり、その損害賠償責任は共同不法行為者が連帯して負うものであるためです。
もっとも、LINEの証拠をもとに浮気相手へ慰謝料を請求する場合には、浮気相手を特定する必要があるのはもちろんのこと、LINEアカウントと浮気相手を紐づける必要もあります。
浮気の証拠を掴むために、LINEのトーク履歴を開示請求できますか?
LINEのトーク履歴を相手方に任意開示することを求めても応じない場合、それを法的に強制することはできません。
また、民事訴訟においては、LINEの運営者に対してトーク履歴の開示を請求しても、実務上、運営者が応じることはないのが現状です。
このため、LINEのやり取りを証拠に使うためには、トーク履歴等を自力で入手する必要があります。
浮気を匂わせるようなLINEを発見したら、まずは弁護士にご相談下さい。
LINEのやり取りが慰謝料請求において重要な証拠となることは、すでに述べたとおりです。
とはいえ、LINEの内容によっては不貞行為が明らかとは言えないことも多いため、不貞行為を証明するにあたってLINEのやり取りを単独で用いるのではなく、ほかの証拠と組み合わせることでより強い証拠として使うことが望ましいでしょう。
交渉や裁判上の立証等の法的観点から、慰謝料請求する際にどのような証拠を集めるべきか、集めた証拠をどのように組み合わせればよいかなどのアドバイスさせていただきます。また、証拠収集で違法になることなどリスクを回避することができます。
LINEのメッセージなどで浮気を疑ったなら、まずは弁護士にご相談ください。
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保有資格弁護士(大阪弁護士会所属・登録番号:40084)