離婚で慰謝料を請求された場合に確認すべきこと|拒否や減額はできる?

離婚問題

離婚で慰謝料を請求された場合に確認すべきこと|拒否や減額はできる?

大阪法律事務所 所長 弁護士 長田 弘樹

監修弁護士 長田 弘樹弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長 弁護士

離婚に際して、不貞などを理由として相手方から慰謝料を請求される場合があります。
この記事では、離婚慰謝料を請求された場合の対応の仕方について、詳しく解説していきます。

離婚慰謝料を請求されたら確認すべきこと

請求してきたのは誰か

まず、離婚慰謝料を請求してきたのが誰かを確認しましょう。
配偶者本人から慰謝料を請求してきたのであれば、配偶者に対して回答すれば問題ありません。

しかし、代理人弁護士が書面を送ってくるような形で慰謝料を請求してきたのであれば、書面に「今後本人への直接の連絡は控え、代理人宛に連絡してもらいたい」旨の文言が入っていることが通常です。

このような場合には、配偶者本人ではなく、代理人弁護士に対して意向を回答すべきです。 

回答期限があるか

離婚慰謝料の請求に際し、回答期限が設けられている場合があります。

弁護士が送付する書面であれば、期限が2週間に設定されていることが多いです。
回答期限を過ぎたことによって、被請求者が何か法的な不利益を受けるわけではありません。

しかし、場合によっては、回答期限を経過しても回答がなかったことをもって、相手方が離婚調停を申し立ててきたり、訴訟を提起してきたりすることも考えられます。

期限内に考えがまとまらなければ「検討中」との回答でも問題ないので、回答期限内に何か相手方に反応を示すことが望ましいです。

慰謝料が発生する理由

慰謝料を請求されたら、どのような理由で請求されているのかを確認しましょう。
離婚慰謝料は、精神的苦痛を被っただけで請求できるわけではなく、相手方の有責行為により離婚を余儀なくされたという不法行為が成立することが必要となります。

すなわち、被請求者に何らかの有責行為があったことを、請求者が主張しなければならないのです。
不貞行為やDVが有責行為の典型例ですが、それ以外の行為でも有責行為と認められる可能性があります。

相手方が、有責行為が存在しないにもかかわらず慰謝料を請求してきている場合には、金銭の支払を拒否できる可能性があります。

相手方の主張は真実か

相手方は、慰謝料が発生する根拠として何らかの事実を主張してきているはずです。
その事実が真実であり、かつ、離婚の原因となった有責行為に該当するのであれば、被請求者は慰謝料の支払義務を負います。

他方で、相手方の主張する事実が真実とは異なり、被請求者に有責行為はなかった、又は、有責行為はあったが相手方が主張するほど悪質なものではなかったといえるのであれば、慰謝料をゼロにしたり、減額したりすることが可能です。

請求金額は妥当か

離婚慰謝料を請求されたら、請求金額が妥当かを確認しましょう。
裁判例で認められている慰謝料の金額は、事案の性質によって様々ですが、一般的には、離婚慰謝料の金額は300万円が最大と考えてよいでしょう。

この相場からかけ離れた高額な慰謝料を請求されているのであれば、減額の余地があります。

離婚慰謝料を請求されたときにやってはいけないこと

慰謝料請求を無視する

慰謝料請求を無視するのはよくありません。
無視したからといって、相手方が慰謝料の請求を諦めるとは考えられませんし、たとえ相手方の主張が事実無根であったり、法外な金額を請求してきたりしている場合でも、何らかの回答をするようにしましょう。

回答期限が設けられている場合には、期限内に何らかの反応を示すことが望ましいです。

相手方の言い値で慰謝料を支払う

相手方の言い値で慰謝料を支払うことは、基本的にやめた方がよいでしょう。
特に、高額な慰謝料が請求されている場合には、本当にそれが適正額なのかよく考えてから慰謝料の支払に同意すべきです。

また、自分が支払える範囲の金額で慰謝料が請求されたときでも、口頭のみで合意してお金を払ってしまうと、後で追加の請求をされるおそれがあり危険です。

相手方の請求に応じる際には、慰謝料の金額、及び、これ以上の請求を行わないこと(清算条項といいます。)を記載した書面を作成し、相手方にサインさせるべきです。 

相手方の神経を逆撫でするような発言を行う

相手方の神経を逆撫でするような発言は禁物です。
相手方に対して思うところがあったとしても、それをぶつけて相手方を不快にさせてしまうと、交渉はよい方向には進みません。

相手方から慰謝料を請求された場合には、冷静に対応するよう努めましょう。

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離婚慰謝料の支払を拒否できるケース

離婚慰謝料を請求されたからといって、法的に必ず請求が成り立つわけではありません。
以下の場合には、離婚慰謝料の支払を拒否することができます。

相手方が主張する内容が虚偽である・証拠がない場合

相手方が主張する内容が虚偽である場合には、慰謝料の発生原因となる事実が存在しなかったとして、慰謝料の支払を拒否することができます。

また、訴訟で有責行為の有無について争う場合には、有責行為の存在について、慰謝料を請求する側が立証する責任を負うため、証拠が全くない場合には、慰謝料の支払義務が認められないことになります。

時効が成立している場合

離婚慰謝料請求権は、離婚成立時から3年間行使しない場合、時効によって消滅します。
離婚成立時から3年経過後、相手方に対して時効援用の意思表示をすることで、慰謝料の支払を拒否することができます。

なお、離婚に関する慰謝料には、この記事で「離婚慰謝料」と表現しているもの(離婚自体慰謝料)とは別に、離婚の原因となった個別の有責行為による慰謝料(離婚原因慰謝料)もあり、こちらについては、個別の不法行為の時が時効の起算点となります。

婚姻関係がすでに破綻していた場合

離婚慰謝料は、相手方の有責行為により離婚を余儀なくされたという場合に請求できるものです。

すなわち、当該有責行為によって婚姻関係が破綻したことが必要となります。
そのため、婚姻関係がすでに破綻していた場合には、慰謝料の支払を拒否することができます。

ただし、訴訟において、婚姻関係がすでに破綻していたことについては、慰謝料を請求された側が立証責任を負います。

離婚慰謝料が減額できるケース

相手方にも過失がある

離婚原因の作出について、相手方にも過失がある場合には、過失相殺によって離婚慰謝料の減額される可能性があります。

例えば、慰謝料の請求者側に不貞行為やDVがあり、これが一因となって被請求者側が不貞行為に及んでしまった場合などが考えられます。

相場以上の慰謝料を請求された

相場以上の慰謝料を請求された場合には、離婚慰謝料を減額することが可能です。
慰謝料の法的な適正額は、有責行為の内容によって変動するため、どの程度の請求額であれば減額可能かについては、一概にはいえません。

もっとも、400万円や500万円といった高額な請求がなされている場合には、減額の可能性が高いと考えられます。

自分の資産・収入が少ない

たとえ高額な慰謝料の支払義務を負ったとしても、その分の金銭を持っていなければ、実際に支払うことは不可能です。

そのため、慰謝料の交渉において、自分の資産・収入が少ないことを主張することで、慰謝料を減額してもらえる可能性があります。

なお、資産・収入が少なくても不法行為責任が減少するわけではないため、このような事情は、交渉の一材料として使えるにとどまります。

有責性が低い

自分の行為の有責性が低い場合には、慰謝料の減額可能性があります。
例えば、上司からの誘いを断りきれずに肉体関係を持ってしまったケースでは、自ら積極的に不貞に及んだケースに比べると、有責性が低いといえます。

また、不貞行為やDVは、多数回にわたって行われていた場合よりは、1回しか行われなかった場合の方が有責性は低いといえます。

離婚慰謝料額を減らすことに成功した事例

弊所で取り扱った、離婚慰謝料減額の成功事例を紹介します。
依頼者の方は、弊所に相談に来られる前に、相手方に慰謝料として900万円の支払義務を負うという内容の離婚協議書を作成してしまっておられました。

しかし、弁護士が代理人として、相手方の暴行によって依頼者の方が協議書に署名捺印したという経緯や、900万円という金額があまりに過大であることを主張して交渉を行ったことで、最終的には300万円まで減額することができました。

離婚慰謝料が増額されるケースもある?

被請求者側に不利な要素があれば、被請求者が主張する金額よりも離婚慰謝料が増額されるケースがあります。

一般的に、離婚慰謝料の増額要素となるのは、以下のようなものです。

  • 婚姻期間が長い
  • 未成年の子がいる
  • 有責行為(不貞行為など)の回数が多い
  • 有責行為の期間が長い

離婚慰謝料を決める流れ

裁判所を使わずに離婚慰謝料を決めるのであれば、当事者間で金額、支払期日、支払方法などについて交渉し、合意を目指すことになります。

この場合、後々のトラブル防止のため、合意内容を文書化して双方が署名捺印しておくことが重要です。
また、離婚調停の中で慰謝料について決めることも可能です。

調停でまとまらなかった場合や、離婚成立後に慰謝料の問題だけ残っている場合には、訴訟で離婚慰謝料が請求される可能性もあり、その場合には、和解又は判決によって離婚慰謝料が決まることになります。

離婚慰謝料が支払えない場合の対処法

金額が大きいために離婚慰謝料が支払えない場合には、減額や分割払いに応じてくれないか、相手方と交渉してみることは可能です。

分割払いは、請求者側にとっては滞納されるリスクがあるため、対策として公正証書の作成を要求される可能性があります。

訴訟において離婚慰謝料の金額が決まり、判決や和解調書が出された場合には、それらが債務名義となるため、任意に支払わない場合には強制執行がなされる可能性があり、注意が必要です。

離婚慰謝料の減額に関するQ&A

公正証書を作った後でも慰謝料を減額できますか?

公正証書を作った後に慰謝料を減額することは、簡単ではありません。
公正証書は、公証人立会いの下で作成された信用性の高い文書であるため、公正証書の内容となっている合意がなされたこと自体を争うのは非常に難しいです。

公正証書作成後でも、相手方が任意に応じてくれるのであれば、慰謝料の減額は可能です。

内容証明郵便で慰謝料請求された場合、減額交渉はどのように進めたらいいですか?

内容証明郵便は、いつ、どのような内容の文書を誰から誰あてに差し出されたかということを、郵便局が証明するものであり、文書の内容が真実であることを証明するものではありません。

また、内容証明郵便で慰謝料を請求された場合でも、必ず書面で回答しなければならないわけではありません。電話やメールでも問題ありません。

ただし、電話でのやりとりは形に残らないため、自分の主張を目に見える形で残したい場合には、メールや書面で連絡する方がよいでしょう。

内容証明郵便の送り主が本人であれば本人へ、送り主が代理人弁護士であれば代理人弁護士へ、減額希望の旨を、減額を求める理由とともに連絡するようにしましょう。

離婚慰謝料を請求されたら、弁護士に相談してみましょう

離婚慰謝料を請求された場合、ご自身で対応することも可能ですが、法律のプロである弁護士にご依頼いただくことで、慰謝料を減額できる可能性がより高まります。

離婚慰謝料を請求されてお困りであれば、ぜひ弁護士法人ALGにご相談ください。

大阪法律事務所 所長 弁護士 長田 弘樹
監修:弁護士 長田 弘樹弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長
保有資格弁護士(大阪弁護士会所属・登録番号:40084)
大阪弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。