不貞慰謝料とは 慰謝料相場と請求方法

離婚問題

不貞慰謝料とは 慰謝料相場と請求方法

大阪法律事務所 所長 弁護士 長田 弘樹

監修弁護士 長田 弘樹弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長 弁護士

本項目では、不貞による離婚の慰謝料について解説していきたいと思います。

不貞慰謝料とは

不貞行為とは、配偶者以外の異性と性交等の肉体関係を有することをいいます。
夫婦は法的に互いに貞操義務、つまり、不貞行為を行わないようにする法的な義務を負っており、不貞慰謝料は、そのような貞操義務に反する行為の結果生じた精神的な損害を回復させるための慰謝料として機能するものです。

不貞慰謝料と離婚慰謝料の違い

不貞慰謝料は、配偶者の不貞行為によって精神的な損害を被ったことに対する賠償であるのに対して、離婚慰謝料は、離婚それ自体を余儀なくされてしまったことについての賠償です。不貞の発覚が離婚に繋がっていくことが多いので、両者は重複する部分も多いのですが、それぞれ消滅時効の起算点が異なっているので注意が必要です。
つまり、不貞慰謝料の場合は、不貞行為を知った時から、離婚慰謝料の場合は、離婚が成立した時から3年で消滅時効にかかってしまいます(民法724条)。

不貞行為に対する慰謝料の相場

不貞行為に対する慰謝料額がどの程度になるかについては、不貞行為の態様や回数、不貞行為によって生じた結果等を総合考慮して、個別の事例に基づいて決定されています。
しかしながら、やはり不定慰謝料の額にも一般的な“相場”というものがあります。そして、その相場に影響を与える最もわかりやく、かつ、大きな事情としては、“その不貞行為によって離婚を余儀なくされてしまったのかどうか”があげられるでしょう。
不貞慰謝料の大まかな相場を表にすると、以下のとおりとなります。

不貞慰謝料の相場
離婚の有無慰謝料の相場
離婚も別居もしなかった場合50万~100万円
離婚しなかったけど別居した場合100万~200万円
離婚した場合200万~300万円

不貞慰謝料額の判断基準

不貞慰謝料額のその他の判断基準としては、例えば、不貞発覚前の夫婦関係(円満であったか、あるいは家庭内別居が行われているなど、冷え切った状態にあったか)、不貞をしていた期間(ごく短期間の回数も少ないものなのか、あるいは長期的に繰り返し行われていたのか)、夫婦間の子どもの有無、不貞発覚後に謝罪をしたかどうか、などが重要になってきます。

不貞慰謝料を請求したい方

不貞慰謝料は誰に請求できる?

不貞慰謝料を請求する場合、請求の相手方として想定されるのは、①配偶者のみ、②不貞相手のみ、③配偶者と不貞相手の両方、の3パターンがあります。

不貞慰謝料を請求する前に確認すべきこと

不貞慰謝料請求をするにあたっては、以下の点に注意が必要です。事前に確認するようにしましょう。

①(不貞相手に慰謝料請求をする場合)不貞相手の氏名、連絡先、住所がわかっているか
②相手方が不貞の事実を否定してきた場合、それに反論できるだけの客観的な証拠があるか
③消滅時効の期間が経過していないか
④相手方が慰謝料額を支払えるだけの経済力をもっているか

証拠になるもの

不貞慰謝料の請求のためには、より客観的な証拠を複数種類集めて、その相乗効果で、それぞれの証拠の不利な部分を補いあうようしていくことが重要です。

【写真・動画】
ラブホテルに入るとき、出てくるときの写真、動画も有力な証拠となります。
ただ、宿泊施設であっても、ビジネスホテル等であれば、肉体関係をもつ以外の利用が通常想定される施設なこともあり、それ単独では証拠としての力は弱いと判断されることもあるので注意が必要です。

【メール・SNS】
メールやSNSの文章であっても、それが特定の人物との肉体関係があったことを推認させる内容であれば、その文章の日付や文章の相手方の反応等と相まって重要な証拠となります。

【領収書】
ラブホテルや、一部屋・二人分の旅館やホテルの領収書、クレジットカードの明細も重要な証拠になり得ます。

不貞慰謝料を請求する方法

不定慰謝料の請求方法としては、口頭、書面(内容証明郵便)、電子メール、調停や訴訟をあげることができます。それぞれの方法にメリット、デメリットがありますが、後に法的手続に移行することも選択肢に入っている場合は、いつ、誰に対して、どのような内容で請求を行ったかを証明することも必要になってくるので、内容証明郵便を使用するなど、可能な限り証拠に残るかたちで請求をした方がよいでしょう。

内容証明郵便での請求について

配偶者と別居している場合、直接会って話し合いを行うのが難しいという場合があるでしょう。このときは、電話やメール、郵便を送ったりして協議、交渉を行ってみるようにしましょう。
特におすすめしたいのが内容証明郵便による請求です。
内容証明郵便によれば、いつ、誰に対して、どのような内容で請求を行ったかの証明をすることができ、後に法的手続に移行することも考えられる場合、有効でしょう。また、相手方に心理的なプレッシャーを与えることもできるでしょう。内容証明郵便には文字数や行数の指定があったり、発送に通常の郵便よりも費用がかかりますが、総合的にいっておすすめできる請求方法になります。

内容証明郵便に記載する内容

内容証明郵便に記載しなければならないのは、①不法行為の要件に該当する各具体的な事実、②慰謝料を請求する旨、③支払方法、④支払期限、⑤支払方法として振込みを選択した場合は、振込先、⑥期限内に対応等しなかった場合、法的手続を検討しなければならくなること等です。内容証明郵便には、文字数や行数の制限等の特別なルールがあるのでお気をつけください。

離婚後でも慰謝料請求は可能?

慰謝料請求は、消滅時効にかかり消滅してしまうのでない限り、離婚後においてもすることができます。但し、離婚後において慰謝料請求をする場合、時間の経過とともに証拠がなくなっていたりすることも多く、請求することそのものが困難になることがあります。また、離婚が成立していることで、慰謝料請求について相手方が真摯に向き合わず、慰謝料額が低額に抑えられるという事態が生じがちなので注意が必要です。

相手が慰謝料を支払わないときの対処法

相手方が合意等した慰謝料を支払わない場合、公正証書や調停調書、確定判決といった債務名義をもとに強制執行を申し立てるようにしましょう。強制執行を申し立てれば、相手方名義の給与や、預貯金、自動車、不動産等を差し押さえて、競売にかけて売却し、売却益から慰謝料を回収等することになります。

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不貞慰謝料を請求されている方

慰謝料を請求されたらまず確認すること

慰謝料請求をされた場合、まず落ち着いて、①誰がどのような資格で請求をしているのか(請求の主体)、②相手方が請求の基礎とする事実関係の正否、③相手方が不貞があったと主張する時期において既に夫婦関係が破綻していたといえないか、④相場以上の不当に高額な慰謝料を請求されていないか、⑤損害賠償請求権について消滅時効が成立しないかなどを確認するようにしましょう。

内容証明郵便で請求された場合の対処法

では、内容証明郵便が送られてきてこれを受領した場合、具体的にどのように対処するべきでしょうか。

回答書を送付する

まず、内容証明郵便に対する回答書を送付してみるようにしましょう。
電話や口頭ではなく、回答書という書面で対応することをお勧めするのは、対応を事後的に確認できる状態で行わないとトラブルになる可能性があるからです。
回答書には、内容証明郵便に書かれてあった事実関係を認めるのか、あるいは、争うのか、争う場合は、具体的な反論の内容を、客観的な証拠等を添えてしてみるようにしましょう。
内容証明郵便に対する回答は内容証明郵便でなければならないという決まりはないので、内容証明郵便であれば添付することのできない画像等を添付することもできます。
事実関係を認めて、慰謝料の支払いに応じる場合も、謝罪の意を示したうえで慰謝料の減額の希望を出したり、支払い方法についての打診をしたり(一括で支払うよう請求されているのを、分割の提案をしたりするなど)してみましょう。

内容証明を無視することは避けるべき

内容証明郵便には受領した日から何日以内に回答や支払等をするようにと記載されていることも多いですが、そのように一方的に指定された期限内に回答等ができなかったとしても、それ自体で何らかの法的な効力が発生するわけではありません。まずは落ち着いて対応することが重要です。
期限内に回答等をしなければならない法的義務はないからといって、内容証明郵便でなされた請求を無視し続けることはやめた方がよいです。訴訟等の法的手続を起こされる可能性が高いからです。
回答等をしようと思っているけれども、どうしても期限内にできそうにないというような場合(例えば、弁護士に相談したうえで回答等しようとしているけれども、期限内に弁護士との相談が実現できない場合など)は、とりあえず回答等をもう少し待って欲しいということだけでも相手方に伝えておくとよいかもしれません。

代理人を通して請求されたら

慰謝料請求について代理人弁護士が選任されていた場合、訴訟等の法的手続に移行してでも(高額な慰謝料獲得等の)目的達成を図ることが指向されており、また、それができるだけの客観的な証拠を掴んでいる可能性が高いです。今後の対応等について総合的な考慮等が必要になるので、請求を受けた側も同じように弁護士に相談等をしてみることを強くお勧めします。
なお、行政書士を通じての請求となっている場合もありますが、行政書士は弁護士とは違い、訴訟等の法的手続において請求者の代理人になることができないので、弁護士が代理人となっている場合よりも訴訟等の法的手続に移行することについては及び腰で、可能な限り当事者間の協議、交渉で解決を図ろうとする場合が多いように思われます。

請求された慰謝料を減額するには

慰謝料を減額する方法

慰謝料を請求された場合、まずは減額ができないかを協議、交渉するようにしてみましょう。請求者とて調停や訴訟となると弁護士費用や時間がかかってしまうことは避けたいでしょうから、許容でき金額の範囲内に収まっているのであれば、一定の減額に応じる可能性は相応にあるといえるでしょう。
そして、協議、交渉がまとまらなければ、訴訟や調停といった法的手続をすることになります。

慰謝料が減額されやすいケース

慰謝料が減額されやすいケース、慰謝料が低額となりやすいケースは以下のとおりです。

①不貞行為の回数が少なく、期間も短い場合
②不貞相手との交際関係等が継続しておらず、最早連絡も取りあっていない場合
③結婚してからの期間が短い場合
④夫婦間に子がいなかった場合
⑤配偶者との夫婦生活が円満ではなく、ほとんど破綻していたと評価できる場合
⑥不貞の事実関係について認めるなど、請求について誠実に対応し、二度と不貞が生じないよう具体的措置を講じながら、十分な反省の意を示している場合

合意後、慰謝料を支払わないとどうなる?

公正証書を作成したうえでなされた合意に基づく慰謝料額や、判決等で確定した慰謝料額を支払わない場合、強制執行を受けて勤務先から受け取る給与等の財産を差し押さえられたりするので注意するようにしましょう。
以上のような場合に該当しなかったとしても、一度決められた慰謝料額を支払わないことは法的手続のリスクが生じることになるので、どうしても支払えない場合は、権利者に打診のうえ、支払いの延期や分割等の提案をして、その承諾を得るようにしましょう。

不貞慰謝料について悩んだら弁護士に相談してみましょう

不定慰謝料の金額や請求方法、請求を受けた場合の対応方法等でわからないこと、お悩みのことがあれば、お気軽に専門的な知識、経験を有する弁護士に相談するようにしてください。

大阪法律事務所 所長 弁護士 長田 弘樹
監修:弁護士 長田 弘樹弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長
保有資格弁護士(大阪弁護士会所属・登録番号:40084)
大阪弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。