監修弁護士 長田 弘樹弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長 弁護士
ある日、交際相手の配偶者から突然慰謝料の請求を行う旨の連絡が来た場合、どのようにすればよいのでしょうか。まずは大変なことだと驚くことでしょうが、冷静に、どのように行動していけばよいのか確認していきましょう。
目次
不倫慰謝料を請求されたら確認すること
不貞慰謝料を請求された場合にはまず、相手方がどのような金銭的請求をしてきているのか、どのような事実が指摘されているのか、その指摘された事実の当時婚姻関係が破綻していたのではないか、既に相手方の請求権が消滅時効にかかっていないかを確認する必要があります。
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慰謝料の支払いが必要ないケース
相手方が不貞慰謝料を請求してきたとしても、様々な理由に基づき、不貞慰謝料を支払う必要がないケースもあります。そのような場合について、一つずつ確認していきましょう。
不倫の事実がない
そもそも、相手方の認識が間違っており、不倫に及んだ事実自体がない場合があります。その場合には、相手方に対し不倫の事実がないことを説明していくことになります。
もっとも、相手方は不倫の事実があることを前提として請求を行ってきているわけですから事実の認識が正反対の状態ということになります。中々事実のすり合わせに難航するかもしれませんが、丁寧に説明していくことが重要です。
夫婦関係が破綻していた
交際相手と交際していたことは事実であったとしても、その当時既に相手方と交際相手の夫婦関係が破綻していることがあります。その場合には、「婚姻共同生活の平和の維持という権利ないし法的保護に値する利益」を侵害したものといえないので、不貞慰謝料請求に対して法的責任を負わないことになります。
ただし、交際相手が夫婦関係は既に終わっていると説明していた、という一点のみでは法的責任を免れることは非常に難易度が高いと考えられます。
慰謝料請求の時効を過ぎている
不貞慰謝料は不法行為に基づく損害賠償責任とされています。そして、不法行為に基づく損害賠償請求権は、「損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは」消滅時効にかかるとされています(民法724条)。そして「加害者を知った時」とは、不貞相手の氏名と住所を知った時であると考えられています。その情報が無ければ、請求したくてもできないからです。
相手方がこれらの事情を把握してから3年経過しているのであれば、消滅時効を援用することで支払いを免れることができます。
相手が既婚者だと知らなかった
不法行為に基づく損害賠償責任が認められるためには、故意または過失が必要となります。すなわち、交際相手が既婚者だと知らず、知らなかったことに不注意が無かった場合には、損害賠償責任を負わないことになります。
もっとも、実務上は既婚者と知らなかったとの主張で故意過失が認められないとされるケースは少なく、注意が必要です。
不倫慰謝料を請求された際にやってはいけないこと
請求を無視する
不貞慰謝料を請求する旨の連絡が来たときに、請求を無視することは厳禁です。無視した側にメリットが何らありません。
ただでさえ並々ならぬ怒りを覚えているであろう相手方を更に怒らせる行動であり、なおかつ不貞行為を反省していないと考えられ、被請求者の責任をより重く追及される可能性があります。そして相手方としては交渉に応じてこないのであれば、と裁判手続きに移行するきっかけを作り出すことになり、日常生活への負担を増やしてしまいます。
開き直る・逆切れする
また、請求を受けて、ちゃんと配偶者の心を掴んでいない方が悪いなどと開き直ったり、逆ギレする方がしばしばおられます。ですがこちらも無視と同様、相手方の感情を逆なでする以外の何物でもありません。
突然請求された戸惑いや、事実誤認などに対する怒りはあったとしても、そちらは表に出すことなく、淡々と対応することが肝要です。
不倫慰謝料が高くなるのはどんな時?
自分から誘った場合
交際相手が既婚者であると知りながら、不貞行為に及ぶことを積極的に誘った場合には、不貞慰謝料が高額になりやすいと考えられます。「婚姻共同生活の平和の維持という権利ないし法的保護に値する利益」を侵害した主たる責任がある立場になるためです。
反省していない場合
不貞慰謝料請求をされても交際相手と別れることなく過ごしていると、一切反省をしていないとして、より不貞慰謝料の金額が高額になりやすいです。不貞慰謝料請求がなされた場合には、きっぱりと交際を終了させるようにするべきでしょう。
それまで夫婦円満だった場合
相手方夫婦が、不貞行為の発覚までは非常に夫婦円満であった場合には、不貞行為によって「婚姻共同生活の平和の維持という権利ないし法的保護に値する利益」が大きく侵害されたといえます。そのため、このような場合には不貞慰謝料の金額が高額になる傾向にあります。
妊娠・出産した場合
交際相手との子どもを妊娠・出産した場合には、相手方がより甚大な精神的苦痛を受けると考えられるため、より高額の慰謝料となる可能性が高いです。
産まれた子どもに罪はありませんが、相手方としては、戸籍に自分の子どもではない子の名前が記載されるほか、養育費の支払いの問題も発生するため、より心理的苦痛を負うと考えられます。また、将来的に相続の問題が生じるため、長期的な問題が残ることもその理由の一つでしょう。
不倫が原因で離婚した場合
相手方夫婦の離婚原因が不貞行為に及んだことであった場合、「婚姻共同生活の平和の維持という権利ないし法的保護に値する利益」を大きく損なったといえます。そのため、不倫が原因で離婚した相手方に対して支払う慰謝料は高額になりやすいと考えられます。
請求された金額が払えない場合の対処法
相手方が請求してきた金額が高額であって、とてもではないが支払うことのできない場合は多くあるかと思います。そのような場合には、①減額交渉する、②分割払いの交渉をする、の2つが考えられます。順番に確認していきましょう。
減額交渉する
相手方が請求している金額が事実に鑑みて、適切な金額から乖離しているような場合には、減額交渉が奏功しやすいでしょう。例えば、不貞期間が短い、回数が少ない、交際相手との上下関係から断るに断ることができなかった、などの事情があり、立証資料に基づいて説明することができれば、相手方も減額に応じる可能性があります。
分割払いの交渉をする
相手方がそもそも減額に応じなかった、もしくは減額に応じたとしてもやはり一括での支払いが非常に困難であるという場合には、分割で支払う旨の合意ができないか、交渉することが考えられます。
真摯に反省しているものの、経済的にどうしても一括での支払いが難しいということを丁寧に説明し、相手方の合意を取ることができればよいです。もっとも、通常の考えであれば相手方としては一括で払ってもらい、金輪際関わりたくないというものでしょうから、分割払いの交渉が簡単であるとはいえません。
請求された不倫慰謝料の減額事例
長期にわたり多数回不貞行為を行ったとして、慰謝料300万円の請求を受けた事案をご紹介いたします。この事案では、不貞相手が既婚者であることを知りつつ不貞行為に及んだものの、相手方が主張するような頻度や期間ではないことをSNS等の証拠から説明して相手方の理解を得た上で、結果的に慰謝料を50万円にまで減らすことができました。
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不倫慰謝料を請求されたら弁護士にご相談ください
不貞慰謝料を請求された場合には、突然のことで動転してしまい、どのように対応していけばよいかわからないことも多く、不貞慰謝料請求に精通した弁護士に早期にご相談いただくことが重要です。また、不貞慰謝料請求の事件には感情面も多く交渉に関わるところですが、弁護士はその点に配慮した上での交渉を行うことができるため、無用な紛争の拡大を防止することができます。
そして何より、ご自身にとって不利益な内容での示談とならないよう、全力でサポートさせていただきます。
不貞慰謝料を請求された場合には、弁護士にご相談ください。
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保有資格弁護士(大阪弁護士会所属・登録番号:40084)