寄与分の請求に時効はある?特別寄与料の期限についても解説!

相続問題

寄与分の請求に時効はある?特別寄与料の期限についても解説!

大阪法律事務所 所長 弁護士 長田 弘樹

監修弁護士 長田 弘樹弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長 弁護士

寄与分とは、相続人の中に、亡くなられた方(被相続人といいます)の財産の維持や増加に貢献した人がいる場合に、その貢献を評価するものであり、相続財産に対する特別の持分をいいます。
この記事では、寄与分の概要や時効があるのかどうか、寄与分主張に関するポイント、また、「特別寄与料」(2019年7月1日施行の改正民法により創設)には時効があるのかなどを解説いたします。

まずは知っておきたい「寄与分」の意味

先ほど寄与分の制度については簡単に説明いたしました。もう少し具体的に説明いたしますと、相続財産から寄与分を差し引いて分割する相続財産を特定した上で各相続人の取得分を算定し、寄与分の存する相続人につき、その取得分に先ほど差し引いた寄与分を足したものが寄与分を有する人の相続分となります(民法第904条の2第1項)
寄与分という制度自体は法定相続人にのみ認められるものであるため、例えば、法定相続人の妻にあたる方が、被相続人の介護等を懸命に行っていたとしても、その分を寄与分として主張することはできません。なお、法定相続人とは、配偶者や子ども、兄弟姉妹などの民法で決められた相続財産を受けとる権利のある人をいいます(民法第887条から第890条)。

寄与分が認められるための要件

寄与分が認められるための要件はいくつかあります。ここでは概要を説明いたします。

①共同相続人であること
上でお伝えしたとおり、寄与分が認められるのは法定相続人だけです。
②被相続人の財産が維持・増加したこと 法定相続人の活動により、被相続人の財産の減少を防ぐことになった、もしくは被相続人の財産が増加したといえることが必要です。被相続人が精神的に助けられた、ということでは寄与分は認められません。
③財産の維持・増加と因果関係があること
共同相続人の行動によらず、偶然に被相続人の財産が維持・増加したとしても寄与分は認められません。
④相続人としての期待を超える貢献があること
被相続人との身分関係を踏まえ、相続人として期待される以上の貢献が無ければ、寄与分は認められません。

詳細については、別の記事にて解説いたしますので、寄与分の要件について詳しく知りたい方は、以下の記事をご確認ください。

寄与分とは|請求の要件と計算方法

寄与分に時効はあるのか?

現在は、寄与分の請求に時効はありません。つまり、例えば30年前に被相続人の生活費を援助していたなど、遥か昔の寄与分を主張することに何ら問題はありません。ただし、令和3年4月21日に可決した民法改正によって、寄与分の請求については相続開始から10年の時効が設けられることとなりますので、今後注意が必要です。
また、寄与分を主張することができるのは遺産分割の合意が成立するまでの間に限られます。遺産分割の合意が成立した後になって、寄与分の主張をすることはできませんので、寄与分の主張を考えている方は、早めに準備・主張していくようにするべきでしょう。

昔の寄与分が認められにくいのは本当?

現状、遥か昔の事情に基づいて、寄与分を主張することができるのは先ほどご説明したとおりです。ですが、その事情から年月が経ちすぎてしまうと、寄与分の主張を行うことや、その寄与分を立証することは難しくなりやすいです。人間の記憶は徐々に薄れたり、真実と多少変わった記憶になってしまったりすることがあります。また、証拠となる資料が紛失するなど、証明するための手法が無くなってしまう危険があります。
そのことを踏まえると、やはり寄与分の主張については早めに行っていくべきでしょう。

「特別寄与料」には期限があるため注意!

寄与分とは異なるものとして、「特別寄与料」という制度があります。これは、共同相続人ではない人が、被相続人の介護を行ったなど、特別の貢献をした場合に請求できる金銭のことをいいます。
特別寄与料は、2019年7月1日に施行された民法に新しく創設された制度です。この制度により、相続人ではない方にも一定の金銭請求を行う権利が認められるようになりました。
特別寄与料については、消滅時効や除斥期間の制限があり、請求するにあたって注意が必要ですので、以下で解説いたします。

特別寄与料の消滅時効

そもそも消滅時効とは、一定期間行使されなかった権利についてその権利の消滅を認める制度です。債務者側が、時効を迎えていることを主張すること(この主張を行うことを「援用」といいます。)によって、本来請求できるはずであった権利が消滅してしまうのです。
特別寄与料には消滅時効があることが定められており、その期間は特別寄与者が相続の開始および相続人を知った時から6か月間とされています。知った時から6か月というと、意外と早く過ぎてしまうものです。

特別寄与料の除斥期間

特別寄与料には除斥期間も存在します。除斥期間とは、その期間が過ぎてしまうと請求する権利が消滅してしまう期間を意味します。これは消滅時効と異なり、債務者側からの援用は必要ないとされています。
特別寄与料の請求についてはこの除斥期間が定められており、相続開始のときから1年を経過してしまうと、その請求ができることを知っていたかどうかにかかわらず、特別寄与料の請求を行うことができなくなってしまうのです。

寄与分を主張するためのポイント

寄与分を獲得するためには、寄与分を請求する側が主張を行った上で、証拠資料をしっかりと出していくことが必要になります。そのため、記憶が薄れる前、証拠が無くなってしまう前に主張をしていくべきですから、できるだけ早め早めの段階で主張を行うようにしましょう。
寄与分を獲得するために法的にどのような主張を行うべきか、どのような証拠資料を集めるべきかについては、どのような内容に基づいて寄与分を主張していくかによって大きく異なることが多いため、一概に何を準備すれば問題ない、という回答は難しいものです。そこで、専門的な知識を豊富に持つ弁護士にご相談いただき、お任せいただくことでしっかりと準備していくことが重要です。

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寄与分を請求する流れ

遺産分割は協議、調停、審判で行われ、寄与分の請求もこの流れの中で主張及び立証を行っていくことになります。ここでは、概要をご説明いたします。

①遺産分割協議
これは、裁判所を介さずに共同相続人同士で話し合いをすることによって、遺産分割を完了させる手続きです。話し合いですので、共同相続人全員が合意することが必要です。
②遺産分割調停
これは、裁判所での手続の一つであり、調停委員を通して共同相続人同士で話し合いをすることによって、遺産分割を完了させる手続です。裁判所を介する手続とはいえ、話し合いである以上、共同相続人全員が合意しなければ成立しません。
③遺産分割審判
これも裁判所手の手続の一つですが、調停と異なり、話し合いでの解決を目指すものではありません。当事者の主張・提出される証拠をもとに、裁判所が判断を下すものです。

詳しくは、以下の記事をご確認ください。

寄与分を主張する方法

寄与分の時効に関するQ&A

遺産分割協議後に寄与分を主張することはできますか?

遺産分割協議が終了した後に寄与分を主張することはできません。遺産分割協議そのものをやり直しするのであれば、その際に主張はできますが、以下のケースに該当することが必要です。
① 遺産分割協議に相続人全員が参加していなかったとき
②続人全員が遺産分割協議をやり直すことに同意しているとき
③相続人の一部が財産隠しを行っていたとき
④一部の相続人に生前贈与が行われていることが遺産分割協議完了後に発覚したとき
⑤相続人の一部が、騙されたり脅迫されたりした状態で遺産分割を完了させていたとき

特別寄与料の時効を延長することは可能ですか?

特別寄与料の時効は先ほどご説明したとおり、特別寄与者が相続の開始および相続人を知った時から6か月間となっています。この期間を延長することはできますが、無条件でできるわけではありません。
相手方が特別寄与者に対して、その特別寄与料の権利が存在することを認めると、その存在を認めたときから時効が改めてスタートするのです。そのほか、調停を申し立てるなどして法的手続をとった場合にも、一旦その手続中は時効が完成しなくなり、その手続において権利があることが確定すると、その手続終了時に時効が更新されます。

夫の親(被相続人)を介護した妻にも寄与分は認められますか?

夫の親を懸命に介護した妻に、「寄与分」は認められませんが、上で解説しました「特別寄与料」の請求はできます。もともとは寄与分の制度しか無かったため、このような相続人以外の親族による介護等の貢献が一切評価されず非常に不公平な状態となっていました。
その不公平な取り扱いを是正するために設けられたのが特別寄与料です。この制度を活用することによって、親族による貢献がきちんと法的に評価されるようになりました。

寄与分はできるだけ早い段階で主張することをおすすめします。まずは弁護士にご相談下さい。

以上説明してきましたように、現状寄与分に時効はありませんが、早め早めに主張することで、適切な結果をもたらすことができるのはお分かりいただけるかと思います。
また、特別寄与料については、寄与分と異なり、時効も除斥期間もあるため、その期間を意識する必要があり、注意しましょう。
寄与分もしくは特別寄与料の請求について、どのような具体的事実を主張しなければならないか、その具体的事実を立証するためにどのような証拠資料を集めて提出すればよいかについては、非常に法的にしっかりした検討が必要になるところです。寄与分もしくは特別寄与料の請求を少しでも考えておられる場合には、一度弁護士にご相談いただき、しっかりと準備していきましょう。

大阪法律事務所 所長 弁護士 長田 弘樹
監修:弁護士 長田 弘樹弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長
保有資格弁護士(大阪弁護士会所属・登録番号:40084)
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