
監修弁護士 長田 弘樹弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長 弁護士
有責配偶者とは、離婚の原因を作った側の配偶者をいいます。典型的には、不法行為やDVを行った配偶者が有責配偶者に当たります。
有責配偶者からの離婚請求は、有責でない配偶者からの離婚請求よりもハードルが高いですが、一定の要件を満たせば離婚が認められます。
この記事では、有責配偶者からの離婚請求が認められる要件や、有責配偶者からの離婚請求を拒否したい場合の対応について、詳しく解説していきます。
目次
有責配偶者からの離婚請求は認められるのか
日本の民法は、当事者の有責行為の有無にかかわらず、婚姻関係が破綻している場合には離婚を認めるべきだという、破綻主義をとっています。
そのため、婚姻関係が破綻していれば、有責配偶者であっても離婚を請求できるのですが、その請求が信義則に反し許されないと判断される場合には、離婚請求は認められません。
判例は、有責配偶者から離婚請求がなされた場合において、以下の3つの要件を検討することが必要であるとしています。
有責配偶者からの離婚請求が認められる3つの要件
長期間別居していること
有責配偶者からの離婚請求が認められるためには、有責でない者による離婚請求の場合よりも長期間別居していることが必要となります。
有責でない者による離婚請求の場合でも、婚姻関係が破綻したと認められるためには3年ほどの別居期間が必要となるのですが、有責配偶者からの離婚請求であれば、より長い期間の別居が求められます。
実務では、有責配偶者の場合でも10年を超えていれば長期間の別居と判断されており、5年から7年ほどでは判断が分かれているところです。
未成熟子がいないこと
夫婦の間に未成熟の子が存在しないことも、有責配偶者からの離婚請求が認められるための要件となります。
未成熟子とは、いまだ経済的・社会的に自立して生活ができない状態にある子をいいます。
令和4年4月1日に成年年齢が18歳に引き下げられましたが、それ以降も、従前どおり、原則として満20歳に達するまでは未成熟子と認められると考えられます。また、大学生等については、義務者(婚姻費用や養育費を支払う義務のある者)が大学等への進学を承諾していた場合には、一般的に大学を卒業する時である満22歳に達した以降最初の3月までは、未成熟子と認めた裁判例があります。
離婚しても過酷な状況に陥らないこと
上記2つの要件に加えて、相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて過酷な状態におかれるなど離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情が認められないことが必要となります。
裁判例では、主に経済的側面を中心に検討して、過酷な状態におかれるかどうかの判断をしています。
有責配偶者の離婚請求を拒否したい場合の対応
離婚を求める者の行動としては、まずは交渉(協議)もしくは調停において離婚を請求することとなります。なお、調停が不成立になると訴訟を提起するという流れになります。
交渉と調停では、当事者が合意しなければ離婚が成立することはありません。そのため、交渉や調停において離婚請求を拒否するには、離婚しないとの意思を明確にすれば足ります。
訴訟を提起されてしまった場合は、上記の要件を満たしていないこと(別居期間が短いこと、夫婦間に未成熟子がいること、離婚すると過酷な状態に陥ること)を主張し、離婚請求が信義則に反すると主張していくことになります。
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有責配偶者からの離婚請求を認めなかった裁判例
有責配偶者からの離婚請求を認めなかった裁判例として、福岡高裁平成16年8月26日判決をご紹介します。
このケースは、XとYが昭和48年に婚姻して二子をもうけたが、Zと不貞行為をした有責配偶者であるXが平成12年に離婚訴訟を提起し、その離婚請求が信義則に違反するとして棄却されたのち、子が成人したことなどを契機として、再度XがYに対して離婚訴訟を提起したというものです。
裁判所は、当事者間の婚姻関係は破綻していると判示した上で、以下のように述べて離婚請求を棄却しました。
- 別居期間は約9年余であるのに対し、同居期間が約21年間に及ぶことや双方の年齢等も考慮すると、別居期間が相当の長期間に及ぶとまで評価することは困難である。
- XとZとの間に子がいないことに加え、XとZとの交際の実態等に照らすと、Zとの間の新たな婚姻関係を形成させなければならないような緊急の要請もない。
- Yが離婚によってたちまち経済的に困窮する事態に追い込まれることは、容易に予測されるところである。
有責配偶者から離婚請求されたら弁護士にご相談ください
この記事では、有責配偶者からの離婚請求が認められる要件等について説明してきましたが、離婚請求が認められるかどうかはケースバイケースであり、様々な事情を総合的に考慮して判断する必要があります。
弁護士にご相談いただければ、有責配偶者からの離婚請求に対してどのように立ち向かっていけば良いか、ご依頼者様の事情に応じて具体的にアドバイスさせていただきます。
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保有資格弁護士(大阪弁護士会所属・登録番号:40084)