離婚裁判の流れをわかりやすく解説

離婚問題

離婚裁判の流れをわかりやすく解説

大阪法律事務所 所長 弁護士 長田 弘樹

監修弁護士 長田 弘樹弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長 弁護士

離婚をする手段の一つとして、裁判による離婚があります。合意や調停による離婚と、裁判による離婚には、手続きや流れ等に違いがあります。裁判所からの通知や、審理の流れ、判決、判決後の流れなど、全く異なる規律が存在します。そこで、以下、簡単にご説明いたします。

離婚裁判の流れ

①訴状の提出
②第一回口頭弁論期日の通知が届く
③被告が答弁書を提出
④口頭弁論
⑤証拠調べ
⑥判決

離婚裁判を提起する前に

離婚裁判を提起する場合、調停前置主義が妥当します。調停前置主義とは、離婚裁判を提起するためには、それ以前に調停を経なければならないとする考え方です。これは、身分関係上の変更を伴う離婚について、まずは話し合いで解決を図ることが望ましいとの理念に基づくものです。
裁判で離婚が認められるためには、法定離婚事由が必要とされます。具体的には、民法770条において規定されています。もっとも、有責配偶者からの離婚請求については、厳格な要件が課されており、容易に認められるものではありません。

家庭裁判所に訴状を提出する

離婚裁判を提起するにあたっては、当事者や離婚の理由等を記載した訴状を、家庭裁判所に提出する必要があります。提出先は、夫婦どちらかの所在地を管轄する家庭裁判所又は、離婚調停を行った場所です。訴訟の提起において必要とされる書類については、以下で解説します。

訴状提出の際に必要な書類と費用

訴訟提起に当たっては、以下の書類が必要となります。
①訴状(2部)、②夫婦の戸籍謄本(原本とコピー)
訴状については、一定の様式がありますが、その書式については、裁判所のホームページから入手することができます。また、訴訟の提起にあたっては、所定の費用を収入印紙等で支払う必要があります。

第一回口頭弁論期日の通知が届く

訴状を提出した後は、夫婦のそれぞれに、裁判所から呼び出し状が届きます。
当該呼び出し状の記載された日時に、第1回口頭弁論期日が開かれることになります。
原告は、訴状を提出していますが、被告には、当該訴状の写しが届くことになります。
被告としては、訴状の記載内容を確認した上で、反論がある場合には、答弁書を提出することができます。

被告が答弁書を提出

被告は、原告の提出した訴状の内容を確認した後、反論内容を記載した答弁書を提出することになります。通常の裁判であれば、被告が答弁書を提出せず、第1回口頭弁論に出席しない場合には、擬制自白が成立することになります。しかし、離婚訴訟においては、擬制自白は働かず、原告側で主張立証を行う必要があります。

口頭弁論を行う

呼び出し状に記載された日程で、第1回口頭弁論が開かれ、その後も口頭弁論が開かれます。
口頭弁論とは、当事者の言い分に関する主張や立証、証拠の提出等を行う場です。訴状提出から第1回口頭弁論期日までは、状況により異なりますが、1か月以上程度は要することが多いです。
また、口頭弁論が開かれる間隔は、1か月から2か月程度のことが多いです。
審理の流れについては、次の項目で詳しく説明します。

審理の流れ

原告の提出する訴状、被告の提出する答弁書、その後の準備書面等を通して、争いのある点が明らかになります。各書面においては、証拠が提出されることになりますが、原則的に、当事者間に争いのない事実については、裁判所はそのままの事実を認定することになります。他方、各当事者は、争いのある点に関して、証拠を提出する必要があり、提出された証拠と、当事者の主張の全趣旨から、裁判所は事実の認定を行うことになります。
事実認定については、以下の項目で詳しく説明します。

離婚裁判における事実の認定

離婚裁判において、争点になることが多い部分としては、離婚原因の関する事実が挙げられます。
離婚原因の有無については、離婚を主張した側(原告)が主張及び立証をする必要があり、立証が十分でない場合には、請求は認められないことになります。離婚原因に関する事実の証拠としては、例えば不貞行為の証拠の場合には、探偵会社からの報告書、ホテルへの出入りの写真等が挙げられます。
その他、SNS等のやり取りも、重要な証拠となり得ます。

証拠調べ

口頭弁論において和解の可能性がない場合には、証拠調べが行われることになります。
証拠調べにおいては、当事者双方に対する尋問や、承認に対する尋問が行われることがあります。
特に、離婚訴訟においては、当事者双方への尋問は、原則的に行われることが多いです。この点について、以下詳しく説明します。

本人尋問や証人尋問

本人尋問の流れ
①主尋問(原告弁護士から原告に対する尋問)
②反対尋問(被告弁護士から原告に対する尋問)
③裁判官からの補充の質問

証人尋問
①主尋問(証人を呼んだ側の弁護士による質問)
②反対尋問(証人を呼んでいない側の弁護士による質問)
③裁判官からの補充の質問

あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います

離婚問題ご相談受付

0120-979-039

24時間予約受付・年中無休・通話無料

メール相談受付
離婚問題の経験豊富な弁護士にお任せください

離婚裁判の判決

口頭弁論が終結した後は、裁判所による判断のうえ、判決が出ることになります。
判決は、口頭弁論が終結してから、約1か月から2か月で出ることになります。
判決は、当事者の送達先に郵送されることになるため、別途の手続を要せずに内容を確認することができます。
離婚裁判が終了するには、取下げ、判決、和解等がありますが、以下詳しく説明します。

和解を提案されることもある

上記のとおり、離婚裁判は、和解によって終了することもあります。
和解は、当事者の一方又は双方が相手方に提示することもあり得ますが、裁判官から和解を勧められることもあります。裁判官としては、離婚裁判が感情的対立を多分に含むものであることから、和解を勧めることが多くあります。また、和解は、判決より前のタイミングであれば、いつでもすることができます。

訴えの取下げにより裁判終了

離婚裁判が終了するものとして、訴えの取下げが挙げられます。
訴えの取下げは、原告が行うものです。ただし、被告が書面を提出したり、口頭弁論を経た後であれば、被告の同意がなければ、原告は訴えを取り下げることができません。

判決に対して控訴できる

離婚訴訟において、判決が下された場合、当事者は、不服がある場合には、控訴を行うことができます。控訴は、控訴状を提出して行いますが、判決が送達された日から、2週間以内に提出する必要があり、同期間を経過した場合には、判決は確定します。

判決後の流れ

離婚訴訟において、判決が確定した後は、原告は、裁判が確定した日から10日以内に、判決の謄本を添付したうえで、その旨を届け出る必要があります。

離婚裁判にかかる期間

離婚裁判にかかる期間は、争いの程度等の状況によって異なりますが、半年から2年程度で終わることが多いです。終了までの期間は、事案によって異なるため、一概には言えません。

よくある質問

離婚届を提出した後に必要な手続きにはどのようなものがありますか?

離婚裁判の判決が確定し、10日以内に届け出をした場合には、それ以上の手続は必要ないかに思いがちですが、例えば、子供の氏については注意が必要です。
父母が離婚し、父の戸籍に入っており、父の氏を称していた子について、親権者が母になったとしても、子は、当然に、母の戸籍に入ったうえで、母の称する氏となるものではありません。そこで、離婚により母の戸籍に移り、母の氏を称したいときには、子の氏の変更の申立てをしたうえで、家庭裁判所の許可を得る必要があります。

離婚に合意しており養育費のみ争う場合はどのような流れで離婚裁判は進みますか?

上記場合について、原告と被告の間において、離婚事由等について争いがなく、離婚すること自体についての合意が成立している場合には、養育費を争点として、それに関連する主張立証が行われることになります。具体的には、双方の源泉徴収票や給与明細等の収入資料を提示した上で、双方が養育費について主張を行うことになります。これらの証拠や主張を踏まえて、裁判所が、養育費を判断することになります。

離婚裁判が不成立になってしまったら離婚は諦めるしかありませんか?

離婚裁判において、離婚が認められずに判決が確定した場合には、裁判による離婚は、原則的には認められないことになります。つまり、当該離婚裁判の口頭弁論終結時までに生じた事情については、離婚裁判において当事者が主張できた事実であり、当該事実を基礎として同様の離婚裁判が提起された場合には、離婚は認められないことになります。しかし、口頭弁論終結時より後に生じた事実については、離婚裁判において、当事者が主張できなかった事実であり、当該事実がある場合には、同事実を合わせたうえで、離婚裁判の判断が為されることになります。

離婚裁判の流れをケース別で知りたい場合は弁護士にご相談ください

以上のとおり、離婚裁判について説明してきましたが、一言で離婚裁判と言っても、夫婦関係や夫婦間の事情は様々であり、それらの事情に合わせた主張立証や解決の形があります。そのため、離婚裁判のケース別の流れや見通し等をお知りになりたい場合には、弁護士にご相談ください。

大阪法律事務所 所長 弁護士 長田 弘樹
監修:弁護士 長田 弘樹弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長
保有資格弁護士(大阪弁護士会所属・登録番号:40084)
大阪弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。