遺言書の無効を申し立てる方法

相続問題

遺言書の無効を申し立てる方法

大阪法律事務所 所長 弁護士 長田 弘樹

監修弁護士 長田 弘樹弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長 弁護士

遺言書が見つかり、その内容が自分に不利な場合、「この遺言書を無効にできるのか」「手続きはどうするのか」と疑問を持たれることがあるかと思います。

遺言書は作成方法や形式に不備があると、無効となる場合があります。
本記事では、無効となる主なケースや、必要な手続きについて、わかりやすく解説します。

遺言書を無効にしたい!どうすれば無効にできる?

遺言が無効になる主な理由は、まず「方式違反」です。
遺言には公正証書遺言自筆証書遺言があり、公正証書遺言は公証人が関与するため無効になることはほとんどありません。

一方、自筆証書遺言では、遺言者が、全文・日付・氏名を自署し押印する必要があります。

2019年1月13日以降は財産目録をパソコン等で作成できますが、この目録への署名押印や記載方法に不備があると、全体が無効となる場合があります。

さらに形式に問題がなくても、認知症などで遺言能力がない場合は無効とされます。

形式の不備など、明らかに無効な場合でも申し立ては必要?

法律上の形式を明らかに欠いている場合には、当然に無効となります。
申立てをしないかぎり有効として扱われる、という法律の仕組みにはなっていません。

ただし、相続人の誰も争っていない場合などには、実務上は有効なものとして手続きが進んでいく場合も考えられますので、注意が必要です。

遺言書の無効の申し立て方法

遺言の無効を主張したい相続人などは、まず家庭裁判所に調停を申し立てることができますが、調停が不成立となった場合には、遺言無効確認の訴訟を提起することになります。

実務上は、話し合いによる解決が難しいケースでは、最初から訴訟での解決が適していると家庭裁判所から案内されることも多いです。
事案の内容に応じて、調停か訴訟かを選択することになります。

遺言無効確認調停

遺言無効確認調停は、家庭裁判所に申し立てて行う手続きです。

申立ては、相続人や受遺者、遺言執行者など、遺言について法律上の利害関係を持つ人が行うことができます。

手続きは、裁判官または家事調停官と調停委員2名で構成される調停委員会が進めます。

当事者間で合意が成立し、その内容が調書に記載されると調停は成立し、事件は終了します。この調書は、裁判で確定した判決と同じ効力を持ちます。

遺言無効確認訴訟

調停が不成立に終わった場合、改めて訴訟を提起することができます。

法律上は訴訟の前に調停をしなければならないと定められていますが、実務の運用上は、調停をせずに、最初から訴訟提起をすることも考えられます。

原告となる人は、訴状作成の際、無効原因を具体的に主張する必要があります。

遺言無効確認訴訟について

遺言書の無効を申し立てる場合の費用

遺産分割調停では、1200円の収入印紙代と予納郵便切手代が必要となり、弁護士に依頼する場合は別途弁護士費用が発生します。

他方、遺言無効確認訴訟では、原告が得る経済的利益を基準に訴額が決まるため、費用は事案ごとに異なります。

また、遺言能力が争われる場合には医療鑑定、筆跡が問題となる場合には筆跡鑑定が必要となり、別途鑑定費用が発生することがあります。

遺言書の無効申し立てに時効はある?

遺言無効確認請求には時効はありませんが、解決まで長期間かかるうえ、必ず無効と認められるとは限りません。そのため、予備的に遺留分侵害額請求権を行使しておくことが有用なケースがあります。

遺留分侵害額請求には1年の期間制限があり、遺言無効訴訟の結果を待っていると、この期間を過ぎるおそれがあります。

そこで、遺言無効確認訴訟を提起する際には、あわせて遺留分侵害額請求権行使の意思表示をしておくことが重要です。

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遺言書が無効と認められた事例・判例

遺言書の無効事由には、さまざまなものがあります。
遺言能力がない場合や、遺言書の形式面に不備がある場合が典型的です。

他には、不倫関係の維持を目的として不倫相手に全遺産を遺贈するなど、推定相続人である正妻の経済基盤を脅かす場合も、公序良俗違反として無効になることがあります。
また、共同遺言も民法で禁止されています。

遺言書の無効が認められた後にすること

法定相続人全員で遺産分割協議を行う

遺言無効確認訴訟で認容判決が確定すると、その遺言は法律上、初めから存在しなかったものとして扱われます。その結果、相続人は改めて遺産分割協議を行う必要があります。

遺産分割協議は、相続人全員により行う必要があります。

遺産分割協議について

遺産分割協議がまとまらなければ別途調停や審判で解決する

もっとも、相続人間で遺産分割の内容について合意に至らない場合には、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立て、裁判所を介して話合いによる解決を目指すことになります。

さらに、調停でも合意が成立しない場合には、最終的に遺産分割審判へ移行し、裁判所が各相続人の取得内容を判断して結論を示すことになります。

遺言が無効にならなかった場合の対応策

遺言が無効にならなかった場合、有効として扱われるため、原則として遺言内容に従って相続が進みます。ただし対応策が全くないわけではありません。

遺留分が侵害されている場合には、相続人は遺留分侵害額請求を行い、一定の取り分を請求することができます。
また、遺言の解釈が一義的でない場合には話し合いや裁判で争う余地があります。

さらに、相続人、受遺者、遺言執行者など遺言によって利害関係を有する者の同意が得られる場合には、遺産分割協議により遺言と異なる分け方にすることもできます。

遺留分侵害額請求について

遺言書の無効申し立ては弁護士にご相談ください

遺言書が無効になるかどうかは、とくに自筆証書遺言では、判断が難しいケースが少なくありません。

明らかな形式上の不備がない限り、有効か無効かを見極めるのには慎重な判断が必要となります。また、調停や訴訟を行う場合には時間や費用の負担も大きくなるため、慎重な判断が必要です。

判断に迷われる場合は、早めに弁護士へ相談することが重要です。

大阪法律事務所 所長 弁護士 長田 弘樹
監修:弁護士 長田 弘樹弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長
保有資格弁護士(大阪弁護士会所属・登録番号:40084)
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