遺言書に納得いかない!遺言書を無視して遺産を分ける方法はある?

相続問題

遺言書に納得いかない!遺言書を無視して遺産を分ける方法はある?

大阪法律事務所 所長 弁護士 長田 弘樹

監修弁護士 長田 弘樹弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長 弁護士

亡くなった人が遺言書を残していたものの、遺産の分割割合に偏りがあったり、遺産の分割方法が相続人の希望に合致していない場合、相続人が遺言書の内容に納得できないことが起こり得ます。そのような場合、遺言書の内容に従わずに遺産を分割することができないのかどうか疑問に思われる方も多いと思います。

今回は遺言書の内容に納得がいかない場合にどのような対処法が考えられるのかについて、解説していきます。

遺言書は絶対?納得いかない遺言書でも従わなければいけないの?

遺言書は亡くなった人の最後の意思表示であるため、原則としてその内容が尊重されることとなります。
もっとも、後述するとおり、遺言書自体が無効な場合や相続人全員の合意がある場合には、遺言書の内容に従わずに遺産分割を行うことも可能です。

相続人全員の合意が得られれば従わなくて良い

自筆証書遺言や公正証書遺言がある場合であっても、相続人全員の合意が得られるのであれば遺言書を無視して遺産分割を行うことが可能です。もっとも、遺言書を無視して遺産分割を行う場合、相続人や受遺者のうち、取り分が増える人がいる一方で取り分が減る人も出てくると考えられます。そのため、相続人全員の合意が得られるケースはそう多くないと思われます。

合意が得られなくても、遺留分を請求できる場合がある

そもそも遺留分とは、兄弟姉妹を除く法定相続人に認められた最低限の取り分のことをいいます(民法1042条)。
遺言書の内容通りに相続を行った結果、相続人の遺留分を侵害することとなる場合、その相続人は条件を満たせば遺留分侵害額請求をすることが可能です。

なお、遺留分侵害額請求をすることが可能な場合であっても、相手方に請求することができるのは金銭の支払いに限られます。そのため、不動産の取得等を求めることができない点には注意する必要があります。

遺留分侵害額請求とは

そもそも無効の遺言書であれば従わなくてよい

遺言書については、法律上守るべき方式が定められており、この方式が守られていない場合は遺言書が無効となる場合があります。

例えば、自筆証書遺言について遺言書本体が自筆ではなく、ワープロで作成されたものである場合や公正証書遺言が作成されたものの、遺言能力(意思能力)が無かった場合等は遺言が無効になると考えられます。
遺言が無効となった場合は、原則として法定相続分通りに遺産が相続されますが、相続人間で協議して法定相続分とは異なる割合で遺産分割を行うことも可能です。

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遺言書の無効を主張したい場合は?

遺言書の無効を主張したい場合、まずは相続人全員の同意を得て、遺言書とは異なる内容で遺産分割をすることができないかどうか、他の相続人と交渉してみましょう。
もっとも、前述した通り、遺言書とは異なる内容で遺産分割をする場合は従前よりも取り分が減る人が出てくることが多いため、おそらく相続人全員の合意を得られる場合はそう多くないでしょう。
相続人全員の合意が得られない場合は、遺言無効確認調停の申立てや遺言無効確認訴訟の提起を行うことが考えられます。

なお、遺言無効確認調停・訴訟で決まるのは、あくまで遺言書が無効かどうかであるため、遺言書が無効と判断された際は、改めて遺産分割協議等を行う必要があります。

納得いかない遺言書であっても偽造や破棄は違法に

もし遺言書の内容に納得がいかないとしても、遺言書の偽造、破棄や隠匿を行ってしまうと相続人としての資格を失うこととなってしまいます。そのため、遺言書の内容に納得がいかない場合は、法的な手続に則って遺言書の有効性を争うことが重要です。

遺言書に納得いかない場合のQ&A

私は遺言書のとおりに分割したいのですが、納得いかないと言われてしまいました。話し合いが平行線なのですが、どうしたらいいでしょうか?

遺言書の内容に納得してくれない相続人がいる場合は、まずはその相続人との話し合いを行った上で遺産分割協議の成立を目指すこととなります。話し合いを何度も行ったにもかかわらず、合意に至らなかった場合はお近くの弁護士に相談した上で、遺産分割調停を申立て、調停の中で遺言書を資料として提出し、遺言書の内容通りの遺産分割の実現を目指すこととなります。

愛人一人に相続させると書かれていました。相続人全員が反対しているので、当人に知らせず遺産を分けようと思いますが問題ないですよね?

相続人以外に受遺者として愛人がいる場合に、たとえ相続人全員の合意があるとしても愛人に遺言書の内容を知らせずに遺産分割を行ってしまうと後に愛人から遺産分割の有効性を争われる可能性があります。
そのため、愛人が遺言書の存在を知っているかどうかにかかわらず、愛人に遺言書の内容を知らせないまま、遺産分割を行うことはおすすめできません。

遺言書に納得がいかないのですが、遺留分程度の金額が指定されている場合はあきらめるしかないのでしょうか。兄は多めにもらえるため、このままでいいじゃないかと言っています。

遺留分が確保されているのであれば、遺言書が有効である場合、相手方に対して請求できるものはあまり多くはありません。あり得る主張としては、相続人が亡くなった方の生前の介護等をしていた場合に寄与分の主張をすることや兄が亡くなった方から生前に贈与等を受けていた場合は特別受益の主張をすること等が考えられます。

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遺言書に関して納得いかないことがある場合、弁護士への相談で解決できる可能性があります!まずはご相談ください

今回は遺言書の内容に納得がいかない場合に採り得る手段について解説しました。
特に遺言書の無効を主張したい場合、訴訟に発展する可能性もあるため、遺言無効確認訴訟等について豊富な経験を持つ弁護士に依頼すれば手続を有利に進めていくことが期待できます。

また、ご紹介させて頂いた手段の中には遺留分侵害額請求(1年)のように期間制限があるものも存在するため、少しでも遺言書の内容で納得がいかない部分がある場合はぜひお近くの弁護士にお早めにご相談ください。

大阪法律事務所 所長 弁護士 長田 弘樹
監修:弁護士 長田 弘樹弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長
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