いらない農地を相続放棄できる?手続きの流れや注意点

相続問題

いらない農地を相続放棄できる?手続きの流れや注意点

大阪法律事務所 所長 弁護士 長田 弘樹

監修弁護士 長田 弘樹弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長 弁護士

被相続人の死亡により、突然農地を相続することとなった場合、その管理や処分に戸惑う方も少なくありません。この記事では、農地を相続放棄する方法や相続後の農地の処理方法について専門的な観点から詳しく解説いたします。

不要な農地だけを相続放棄することはできない

相続放棄は、被相続人の一切の財産に対して相続権を放棄する制度であり、特定の財産のみを選んで放棄することはできません。したがって、不要な農地だけを放棄して、他の財産だけを相続するということは認められておらず、相続放棄をする場合は、全ての相続財産を放棄する必要があります。

相続放棄をしても農地の管理義務は残る

相続放棄をしたとしても、その放棄の時に農地を実際に占有していたときは、相続人又は相続財産清算人に対して財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもってその財産を保存しなければなりません(民法940条1項)。

したがって、相続放棄をしても農地の管理義務を完全には免れることはできません。

相続土地国庫帰属制度を利用できれば国に引き取ってもらえる

相続や遺贈により不要な農地を取得した者は、相続土地国庫帰属の申請を行うことでその土地を国庫に帰属させることができる可能性があります。

申請が認められるためには、①相続や遺贈により土地の所有権を取得した者であること、②承認申請が可能な土地であること、③手数料と負担金の納付を収めることという要件を満たす必要があります。

放置すると「耕作放棄地」となり、処分が難しくなる

以前、農地として利用されていた土地を一年以上放置すると、「耕作放棄地」とみなされる可能性があります。「耕作放棄地」とは以前耕作していた土地で、過去1年以上作物を作付け(栽培)せず、この数年の間に再び作付け(栽培)する意思のない土地をいいます。

耕作放棄地となると、処分をしようとしても買い手がつかず、維持費だけが発生し負の財産となってしまう可能性が高くなります。

借り手のいる農地を相続放棄したらどうなる?

被相続人が貸し手の場合、被相続人が死亡しても借り手との賃貸借契約は自動的には終了しません。

そのため借り手のいる農地を相続放棄した場合、賃貸借契約は、他の相続人か、他の相続人がいない場合には相続財産管理人との間で継続することになります。

農地を相続放棄する手続きの流れ

相続放棄をするためには、相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、家庭裁判所に対し申述書を提出しなければなりません(民法915条1項)。

家庭裁判所は申述書が提出されるとその内容を審理します。申述が申述人の真意に基づいてなされたものであるかを審理するため、回答書が送付されることもあります。審理が終了し、申述書が受理されると、相続放棄が成立し、相続放棄申述受理通知書が申述人に送付されます。

相続に強い弁護士があなたをフルサポートいたします

相続問題ご相談受付

0120-979-039

24時間予約受付・年中無休・通話無料

メール相談受付
相続問題の経験豊富な弁護士にお任せください

相続した農地の使い道

農家に売却する

農地法によれば、農地について権利を有する者は「農地の農業上の適正かつ効率的な利用を確保するようにしなければならない」とされており(同法2条の2)、たとえ相続により農地を取得した場合であっても、耕作放棄することなく農業を継続しなければなりません。

もっとも、他の生活を営む相続人にとって、農業を継ぐことは現実的に大きな負担となり得ます。

このため、農地を相続した場合には、農家に売却することも、一つの手段となります。

農地から宅地に転用する

前述のとおり、農地について権利を有する者には、農地として適正かつ効率的に利用する義務が課されています。このような耕作の負担を回避する手段として、農地を宅地へと転用することも一つの選択肢となります。

農地を転用できない場合もある

もっとも、農地を宅地など他の用途に転用するためには、原則として農地法第4条又は5条に基づく許可が必要です。無許可での転用は違法となり、是正措置や罰則(農地法64条1号)の対象となる可能性もあるため、事前に適切な手続きをとる必要があります。

農地の相続放棄についてお悩みの方はご相談ください

相続により思いがけず農地を引き継ぐことになった場合、どのように対応すべきか戸惑われる方も多いかと思います。特に、農地を含む相続財産について放棄を検討する場合は、原則として相続開始を知った日から3か月以内に手続きを行う必要があり、迅速な判断が求められます。農地の相続放棄を検討されている方は、早めに弁護士へご相談されることをおすすめします。

大阪法律事務所 所長 弁護士 長田 弘樹
監修:弁護士 長田 弘樹弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長
保有資格弁護士(大阪弁護士会所属・登録番号:40084)
大阪弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。