相続放棄の手続き方法と注意点

相続放棄の手続き方法と注意点

従前から、親戚間で人間関係等のトラブルが発生している最中に、一方の親戚が亡くなり、相続が発生する場合がございます。これを機に、人間関係や財産関係を清算を行い、今後は親戚の関係者とは関わりを回避したい場合や、被相続人の財産が負債しかなく、相続によって負債を負うことを回避したい場合があります。そのような場合には、相続そのものを行わないという相続放棄という方法があります。

相続放棄とは

相続放棄とは、被相続人の財産に対する相続権の一切を放棄することです。

放棄の対象となるのは被相続人のすべての財産であり、預貯金や不動産などのプラスの財産だけでなく、負債などのマイナスの財産も含まれます。そのため、相続を放棄した場合、プラスの財産もマイナスの財産もいずれも相続人が承継することはありません。この相続放棄は、裁判所に必要な書類を提出することで認められます。

相続放棄の手続き方法

相続放棄を行うためには、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対し、必要書類を提出し、相続放棄を行う旨を伝える必要があります。これを相続放棄の申述と言います。

必要書類を集める

相続放棄に必要な書類とは、①相続放棄の申述書②被相続人の住民票除票または戸籍附票③申述人の戸籍謄本です。 そのほか、申述人によって以下の資料が必要となります。

<申述人が配偶者の場合>
被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本

<申述人が子または孫の場合>
被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本
被代襲者(配偶者または子)の死亡記載のある戸籍謄本

<申述人が被相続人の親または祖父母の場合>
被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本
配偶者(または子)の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本
被相続人の親(父・母)の死亡記載のある戸籍謄本

<申述人が兄弟姉妹または甥・姪の場合>
被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本
配偶者(または子)の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本
被相続人の親(父・母)の死亡記載のある戸籍謄本
兄弟姉妹の死亡の記載のある戸籍謄本(死亡している場合)
相続放棄の申述書は裁判所の窓口でもらうことができ、また、裁判所のホームページからもダウンロード可能です。
被相続人の住民票の除票または戸籍の附票は被相続人の最後の本籍地の役所で取得できます。

家庭裁判所に必要書類を提出する

必要な書類を揃えた上で、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ直接出向いて提出する方法もありますが、家庭裁判所へ郵送を行うことも可能です。

家庭裁判所から届いた書類に回答し、返送する

相続放棄の申述が裁判所に受理されると、数日〜2週間後には、裁判所から「照会書」が送付されてきます。相続放棄をする方は、この照会書に書かれている事項に回答し署名押印した上で、裁判所へ返送してください。 なお、相続放棄の申述書の内容次第では、家庭裁判所が照会を不要と判断し、照会書を送付しないこともあります。その場合は、相続放棄受理通知書が届くのを待ちましょう。

返送期限内に回答書を送れない場合

返送期限内に回答書を送れない場合には、スムーズに相続放棄手続が進まず、相続放棄ができなくなる可能性もありますので、返送期限は守るようにしてください。 なお、返送期限にどうしても間に合わない場合は、家庭裁判所に問合せを行えば、返送期限の延長など、柔軟に対応してもらえる場合があります。

相続放棄申述受理通知書が届いたら手続き完了

照会書を返送後、特に問題がなければ10日前後で「相続放棄受理通知書」が郵送されます。この通知書の受け取りをもって、相続放棄の手続きは完了です。 相続放棄受理通知書は再発行がされませんので、大切に保管してください。

相続放棄の期限は3ヶ月

相続放棄の期限は「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月」(民法915条1項)と規定されています。そのため、相続人は、被相続人が亡くなったことを知った日から3か月以内に被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ相続放棄の申述を行う必要があります。 相続放棄の意思表示は、相続人が相続放棄を行う旨の申述書に記載した上で、当該申述書を家庭裁判所に提出することが必要であり、当該申述書が家庭裁判所に到達した時点が、相続放棄の意思表示を行った時点となります。 そのため、申述書が申述期間内に家庭裁判所に到達していれば、申述期間内に他に必要な書類が揃っていない場合でも、申述期間を徒過したとは扱われません。

3ヶ月の期限を過ぎそうな場合

申述期間を過ぎそうな場合には、相続の承認または放棄の期間の伸長の申立てを行う必要があります。相続の承認または放棄の期間の伸長の申立てを行うためには、3か月の申述期間内に被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申立書を提出する必要があります。 延長の申立てを行った場合には大体1~3か月程度延長されます。

3ヶ月の期限を過ぎてしまった場合

原則として、3か月の申述期間を過ぎた後の相続放棄は認められません。

しかし、判例上においては、「相続人において相続開始の原因となる事実及びこれにより自己が法律上相続人となった事実を知った時から三か月以内に限定承認又は相続放棄をしなかったのが、相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつ、このように信ずるについて相当な理由がある場合には、民法九一五条一項所定の期間は、相続人が相続財産の全部若しくは一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうべかりし時から起算するのが相当である。」(最判昭和59年4月27日)とされており、申述期間を過ぎた後の相続放棄が認められる場合がございます。

申述期間を過ぎた後でも相続放棄が可能かどうかは事案により異なりますので、弊所へご相談ください。

相続放棄の申し立ては一度しかできない

相続放棄の申述は、一度却下されてしまうと、2度目の相続放棄の申述手続を行うことはできません。裁判所の却下の判断については即時抗告を行うことはできますが、却下の判断を覆すことは難しいことが多いです。 確実に相続放棄の申述を行うためにも、弁護士に依頼されることをお勧めします。

相続放棄が無効・取り消しになるケースがある

相続放棄の意思表示に瑕疵があった場合には、相続放棄の無効・取消が認められる場合がございます。具体的には、
①詐欺または脅迫による場合
②未成年者が法定代理人の同意を得ないで相続放棄申述をした場合
③後見監督人がある場合、被後見人もしくは後見人がその同意を得ないで相続放棄申述をした場合
④成年被後見人本人が相続放棄申述をした場合
⑤被補佐人が補佐人の同意を得ないで相続放棄申述した場合
が挙げられます。
その他には、錯誤無効を主張できる場合があります。

後から財産がプラスだと分かっても撤回できない

一旦された相続放棄の意思表示は、たとえ熟慮期間が残っていたとしても撤回することができません(民法919条1項)。
相続放棄を行うかどうかは、財産調査などを十分に行うなどをした上で、慎重に決定する必要がございます。

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相続放棄は一人でもできるがトラブルになる場合も…

相続放棄は一人でもできますが、後に他の相続人との間でトラブルが生じる場合がございます。

明らかに相続放棄したほうがいい場合

被相続人の財産を調査した結果、預貯金や不動産などのプラスの財産よりも借金などのマイナスの財産が多いことが判明している場合などの相続放棄を行った方がよい場合などは、ある相続人が相続放棄をしたことによって、他の相続人の負担しなければならない借金の割合が増えたり、次順位の相続人の相続が発生したりする場合がございます。
このような場合には、他の相続人と事案の共有を図りながら、相続人全員で放棄手続を行うことをお勧めします。

把握していない相続人がいる場合がある

例えば、夫婦の片方が亡くなり、相続が開始された場合に、残された配偶者の相続分を増やすために子供が相続を放棄した場合に、把握していなかった被相続人の兄弟がいた場合には、当該被相続人の兄弟に相続が発生してしまうことがあり、面識のない相続人に多額の財産を渡してしまう可能性がございます。 このような事態を防ぐためにも、相続人を十分に把握する必要があり、専門の知識をもった弁護士の下で相続放棄手続を行うことをお勧めします。

相続放棄後の相続財産について

相続放棄を行った後においても、被相続人の財産の管理が必要な場合がございます。

墓や生命保険など、相続放棄しても受け取れるものはある

墓については、相続人ではなく、祭祀承継者(民法897条1項)が承継します。なので、相続人となっている者の中で祭祀承継者となっている場合には、その人が相続放棄を行っていても、墓を承継することができます。また、相続人の中で、被相続人の生命保険の受取人が指定されていた場合には、当該相続人が受け取る生命保険金は、相続財産からは除外されますので、当該相続人が相続放棄を行った後でも生命保険金を受け取ることができます。

全員で相続放棄をしても家や土地の管理義務は残る

相続人全員が相続放棄を行っても、相続財産管理人が選任されるまでは、事故の財産に対するのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければなりません(民法940条1項)。この自己の固有財産に対するのと同一の注意による管理継続義務は、相続開始後の管理義務(民法918条1項)の延長線上で捉えられるものです。
この場合、義務の相手方は相続財産管理人となります。なお、相続の放棄をした者の財産管理については、委任の規定が準用されます。

相続放棄したのに固定資産税の請求がきたら

相続放棄後に固定資産税の請求が来ることがあります。固定資産税は固定資産課税台帳に記載されている者に納税義務があるとされています。この場合には、一旦固定資産税を支払った後、相続放棄を行っていない相続人に対し、求償請求を行うことができます。その際には、被相続人の財産から固定資産税を支払うのではなく、自身の固有財産から支払うことが重要です。なお、無用な固定資産税の納付を免れるために、事前に不動産の登記の移転手続きを行っておくことをお勧めします。

相続放棄手続きにおける債権者対応

相続放棄手続を行う前に、債権者から被相続人の債務の支払いを請求されることがよくあります。

「とりあえず対応しよう」はNG

債権者の請求に対し、少額でも支払うなどの対応はしてはいけません。少額でも被相続人の債務を弁済してしまうと「相続財産の処分」である法定単純承認事由(民法921条1号)に該当する可能性があるからです。 債権者からの請求があった場合には、相続放棄を行うか否かの検討を行っていることを伝え、こちらが対応するまで待ってもらうように伝えましょう。

「利子だけ払っておこう」はNG

債権者に対し、利子だけ払っておこうというものも上記と同様に「相続財産の処分」に該当する可能性がありますので、そのような対応は控えるべきです。

サインはしないようにしましょう

債権者から何らかのサインを求められることがありますが、当該行為も「相続財産の処分」に該当する可能性がありますので、中身を十分に確認せずにサインを行うようなことは控えましょう。

遺産に触れないようにしましょう

相続放棄を行うかどうかの申述期間の間は、不動産等の処分を行うことはやめましょう。銀行等から被相続人名義の住宅ローンの解約を進められることもありますが、法定単純承認事由に該当する場合もありますので、応じないように注意が必要です。

相続放棄に関するお悩みは弁護士にご相談下さい

相続放棄を行う際には、多くの書類をそろえる必要があったり、多数の相続人の調査が必要になるなど、手続が複雑になる場合がございます。後々のトラブルを防ぐ必要もあることから、専門的な知識をもった弁護士に是非ご相談ください。

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この記事の監修

弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長 弁護士 長田 弘樹
弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長弁護士 長田 弘樹
大阪弁護士会所属。弁護士法人ALGでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。
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