監修弁護士 長田 弘樹弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長 弁護士
身近な人が亡くなった場合、いったいどのような手続をする必要があるのか、また、いつまでに行う必要があるのか、よく分からない方も多いのではないでしょうか。
今回は、相続に関する手続とその期限について、お話させて頂きます。
目次
相続手続きの期限について
期限のある手続き | ・相続放棄 ・準確定申告 ・相続税の申告・納税 ・遺留分侵害額請求 ・生命保険金請求 |
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期限のない手続き | ・土地の遺産相続登記 ・遺産分割協議 ・遺産分割のやり直し |
- 相続放棄の期限は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内です。
- 準確定申告の期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内です。
- 相続税の申告・納税の期限は、死亡したことを知った日の翌日から10か月以内です。
- 遺留分侵害額請求の期限は、遺留分権利者が、相続の開始や遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年以内、または、相続開始の時から10年以内です。
- 生命保険金請求の期限は、3年以内です。
相続放棄は3ヶ月以内に手続きが必要
亡くなった人の財産を相続したくない場合に行う手続が相続放棄です。
相続人が、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に相続放棄の手続を行った場合、亡くなった人の財産を受け継ぐことはなくなります。
もっとも、3か月以内に相続放棄の手続をしなかった場合、相続人はプラスの財産もマイナスの財産のいずれも無限に受け継ぐこととなります(これを単純承認といいます)。
そのため、相続放棄をしたい場合は、3か月以内に手続を行う必要があります。
準確定申告は4ヶ月以内
人が亡くなった場合、その相続人は亡くなった人の生前の所得について確定申告をしなければなりません。
これを準確定申告といいます。
準確定申告は相続が発生してから4か月以内に行わなければなりません。
準確定申告を期限内にしなかった場合、無申告加算税や延滞税といったペナルティを課されることとなるので注意する必要があります。
相続税の申告・納税期限は10か月以内
相続税の申告・納税期限は、相続発生時から10か月以内となっています。
遺産分割が完了する前に相続税の申告を行うこと自体は可能です。
もっとも、相続税の申告までに遺産分割が完了していた場合は、以下のような特例を適用することが可能です。
- 配偶者の税額の軽減の特例
- 小規模宅地等の特例
- 農地等の納税猶予の特例
- 非上場株式等の納税猶予の特例
- 物納
土地の遺産相続登記の期限
土地の遺産相続登記には期限はありませんが、以下の理由から相続税の申告と同時に行うのが便利です。
相続登記に必要な書類としては、遺産分割協議書の写し、被相続人の戸籍謄本、相続人の戸籍謄本等が挙げられます。
これらの書類については、相続税の申告にも必要な書類です。
そのため、土地の遺産相続登記については、相続税の申告と同時に行うことがおすすめです。
遺留分侵害額請求の期限は1年以内
遺留分侵害額請求とは、遺留分を侵害された者が、亡くなった人から贈与等を受けた者に対し、遺留分侵害を理由として金銭を支払うよう請求することをいいます。
遺留分侵害額請求権は、遺留分権利者が、相続の開始や遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年、または、相続開始の時から10年を経過した時に消滅します(民法1048条)。
生命保険金は3年以内に請求
生命保険金請求権は、保険金を請求できる時から、3年経過した場合は消滅します(保険法95条1項)。
そのため、生命保険金については、3年以内に請求をすべきです。
死亡保険金について、最高裁は、「…死亡保険金請求権は、その保険金は、受取人が自らの固有の権利として取得するものであって、保険契約者または被保険者から承継取得するものではなく、これらの者の相続財産に属するものではないというべきである」としており(最判昭和40・2・2民集19巻1号1頁)、死亡保険金は原則として遺産分割の対象とならないとの判断をしています。
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遺産分割協議は10年経過していても行うことができる
遺産分割請求権の行使には期間の制限がありません。相続人は遺産分割が禁止される場合を除き、いつでも分割を請求することができます(民907条1項)。 もっとも、遺産分割協議を行わずに放置していた場合には、以下のようなリスクが考えられます。 例えば、個々の遺産について取得時効(民法162条)が成立してしまった場合、時効取得者が当該遺産の所有権を取得するため、遺産分割の対象外となってしまいます。 また、遺産分割協議を行わないままだと、遺産の共有状態が継続することとなるので、遺産の利用処分に支障が生じます。
遺産分割のやり直し期限
判例は、相続人全員による遺産分割の合意解除、つまり相続人全員で合意して遺産分割をやり直すことを認めています(最判平2・9・27民集44・6・995参照)。
遺産分割のやり直しについて、基本的に時効はありません。
もっとも、相続人全員で合意して遺産分割をやり直す場合、原則として贈与税の課税の問題が生じる点に注意する必要があります。
遺産分割の期限について詳しくは弁護士にご相談ください
今回は、相続に関する手続とその期限についてお話させて頂きました。
期限のない手続もありますが、期限のある手続がほとんどであり、期限のない手続についても他の手続と同時に行った方が便利なものもあります。
とはいえ、相続に関する手続やその期限については、複雑な法律上の論点が問題となる場合もあり、ご自身だけでは判断できない場合もあるかと思います。
相続に関する手続やその期限についてご不明な点がある場合、まずは弁護士に相談されることをおすすめします。
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保有資格弁護士(大阪弁護士会所属・登録番号:40084)