遺留分侵害額請求とは|請求の方法と注意点

遺留分侵害額請求とは|請求の方法と注意点

特定の相続人のみが遺言などによって遺産を独り占めにしている……そのようなことが判明したとき、まず、何をどのようにしていくべきでしょうか。 今回は、相続人に法的に保証されている“遺留分”を実際に獲得していくための、遺留分侵害額請求のお話をしたいと思います。民法の改正があり、従来までの遺留分減殺請求の制度とは大きく違ってくるので、その点にも着目してみていきましょう。

遺留分侵害額請求とは

遺留分侵害額請求とは、遺留分減殺請求と代って2018(平成30)年民法改正に伴い導入された制度で、遺留分権の行使(遺留分侵害額請求の意思表示)によって、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを目的とする債権を生じさせるものです。 遺留分侵害額請求は、かつての遺留分減殺請求の制度とは違い、具体的な不動産や物の返還を請求できる権利としてではなく、金銭を支払うよう請求する権利(金銭債権)を生じさせるものとして規定されています。

遺留分侵害額請求の方法

それでは、遺留分侵害額請求は具体的にどのように行使していくべきでしょうか。以下では、遺留分侵害額請求を行使するための方法の概要を、順を追って説明したいと思います。

相手方に遺留分侵害額請求の意思表示を行う

まずは遺留分侵害額請求の“意思表示”を、遺留分を侵害する遺贈や贈与を受けた受遺者や受贈者を相手方として行いましょう。遺留分侵害額請求の意思表示は、以下で述べるとおり、その具体的な内容や、いつ行ったのかが重要となるため、口頭や通常の郵便ではなく、内容証明郵便で行うことが重要です。

内容証明郵便について

内容証明郵便は、送付する文書を、差出人、郵便局がそれぞれ各1通を保管する謄本2通を含め3通作成し、うち1通を、差出人と受取人の住所氏名を記載した封筒にいれて受取人へと送付することで行います。

内容証明郵便によると、電話や、直接面会のうえ口頭で、あるいは、通常の郵便で意思表示を行った場合などと違い、どのような内容の文書を、いつ送付したのかが、郵便局によって証明されることになり、後日の紛争を防止することができます。

相手方と話し合う(協議)

遺留分侵害額請求の意思表示を相手方に行った後、遺留分侵害額の具体的な金額で相手方と意見が一致しないことが多いと思います。しかし、いきなり裁判所での手続を行うのではなく、弁護士を選任するなどして、相手方と話し合い(協議)を行うのがよいでしょう。裁判所での手続となると、どうしてもある程度の期間が必要になってしまいますが、話し合い(協議)であれば、裁判所のスケジュール等にかかわらず、スピードをもって紛争を解決できる場合があります。

合意できたら合意書作成し、遺留分を受け取る。

相手方との話し合い(協議)がととのい、合意ができた場合、合意内容を明らかにするための書面(合意書)を作成しましょう。 どれだけの金額を、いつまでに、どのように支払うのか(一括なのか、分割なのか、現金で支払うのか、振込みで支払うのか)、清算条項を含むものとするのか、金銭の支払以外の条項をどのように記載すべきか、万が一金額が支払われなかった場合はどうするかなど、合意内容を適正に表現し、後日の紛争を防止できる内容になっているか、最後まで注意が必要です。

合意できなかったら調停を行う。

代理人の弁護士を選任するなどして話し合い(協議)を行ったけれども、残念ながら話し合い(協議)がまとまらず、このままでは徒に時間だけが過ぎてしまい、紛争解決がどんどん遅れてしまうこともあるかと思います。 しかし、だからといって、いきなり相手方を被告とした訴訟をすることはできず、まずは家庭裁判所で、調停委員が関与して進行される調停をしなければならないとされています(調停前置主義)。

調停でも合意できなかったら訴訟する。

調停は、家庭裁判所の関与があるとはいえ、本質的には当事者間の話合いですので、当事者間で金額等についての意見が一致しなければ成立しません。 早期円満な解決のために、ある程度譲歩できる部分もあるかもしれませんが、過大な譲歩をするように相手方が主張し続ける場合は、調停を不調等にして終了させ、訴訟を提起した方が、総合的に解決のためになるでしょう。

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特別受益・生前贈与がある場合の遺留分侵害額請求の注意点

亡くなった被相続人からの遺贈や、生前の贈与を受けた相続人の受けた利益(特別受益)は、遺留分侵害額の計算においても考慮しなければなりません。

特別受益を生じさせる遺贈や贈与については、原則として相続発生前10年以内に行われたものであれば、遺留分侵害額請求の対象になります。また、相続開始前1年間にされた相続人以外の者に対する贈与の価額は、全て遺留分を算定するための財産に算入されます。

そして、それより前になされた贈与であっても、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってなされた贈与の価額は、遺留分を算定するための財産に算入されます(民法1044条)。 特別受益については、いわゆる持ち戻し免除の意思表示があったとしても、遺留分侵害額請求の対象になるので注意が必要です。

複数の人に対して遺贈や生前贈与を行っている場合

遺贈を受けた受贈者が複数いる場合や、生前贈与を受けた受贈者が複数いる場合、遺留分侵害額についての請求をすべき“相手方”は誰になるのでしょうか。

この点については民法に規定があり、遺留分侵害額を負担する(相手方となる)のは、①受遺者と受贈者があるときは、受遺者が先、②複数の遺贈や同時にされた贈与が複数あるときは、目的の価額の割合に応じて負担(但し遺言に別段の意思表示があるときを除きます。)、③受贈者が複数あるときは、後の受贈者から、順次前の受贈者が負担、とされています(民法1047条1項)。

税金がかかるケース

遺留分侵害額も相続税の計算に影響します。 相続税の申告時に遺留分侵害額請求に基づく金銭の支払額が確定しない場合には、遺留分侵害額請求がなかったものとして、一旦各相続人の相続税の課税価格を計算し、相続税の申告を行います。そして、遺留分侵害額が確定した後に、更正の請求、期限後申告又は修正申告を行うことになります。 遺留分侵害額請求が確定するまでは相続税の支払いがなかったとしても、遺留分侵害額請求が確定したら、相続税の支払義務が生じたり、金額が増えて追加の支払義務が生じるたりすることもあるので、注意が必要です。

請求には時効がある

遺留分侵害額請求権には、法律関係を早期に安定させるために、「相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時」から「1年」の時効が定められています(民法1048条前段)。 遺留分侵害額請求権を行使するときは、具体的な金額を示す必要はないとされています。遺留分侵害額請求権の行使のために必要な準備はそこまで多くないので、ご自身の遺留分が侵害されていることが判明したら、まずとりあえず、内容証明郵便を相手方に送ってみるべきでしょう。 また、相続開始のときから「10年」経過したときも、遺留分侵害額請求権は消滅するので注意が必要です(民法1048条後段)。

遺留分侵害額請求のお悩みは弁護士にご相談ください

遺言等によって不公平な遺産等の分割が行われ、ご自身の遺留分が侵害されていることが判明したら、すぐに遺留分侵害額請求の意思表示を行い、その後の協議等を開始すべきです。しかし、遺留分侵害額請求の経験がなく、具体的にどのようなことを、どのように行うかで迷われることも多いのではないでしょうか。 幣所では、遺留分侵害額請求についての経験やノウハウも多数取り入れているので、遺留分侵害額請求についてお悩みの場合は、お気軽に幣所にまでご相談ください。

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この記事の監修

弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長 弁護士 長田 弘樹
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大阪弁護士会所属。弁護士法人ALGでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。
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